戦いの終わりを告げる笛が鳴り響いた瞬間、両校の選手たちは力尽きたかのようにピッチに倒れ込んだ。18000人近くの大観衆を集めた第69回早慶定期戦(早慶戦)。後半に入り先制点を許すも、セットプレーからFW武田太一(スポ3=ガンバ大阪ユース)…

 戦いの終わりを告げる笛が鳴り響いた瞬間、両校の選手たちは力尽きたかのようにピッチに倒れ込んだ。18000人近くの大観衆を集めた第69回早慶定期戦(早慶戦)。後半に入り先制点を許すも、セットプレーからFW武田太一(スポ3=ガンバ大阪ユース)が2得点を挙げ見事逆転勝利。90分間の激闘を制し7連覇を達成した。

 早大は普段通り4-1-4-1の布陣で試合開始を迎え、サイドからの攻撃を軸に得点を狙う。しかし慶大が中央に固いブロックを形成し、思うようにボックス内にボールを供給できない。さらに慶大FWピーダーセン世穏(3年)を中心とした鋭いカウンターに苦しみ、主導権を握れない立ち上がりとなる。11分、MF相馬勇紀(スポ4=三菱養和SCユース)のクロスのクリアボールに反応した武田がダイレクトで強烈なシュートを放つが、枠の左へ。それ以降も武田が随所でDFの間に入りポストプレーをこなすも、決定機には至らない。すると25分、ワセダが最大のピンチを迎える。MF山田盛央(3年)が斜めの動きでDFラインの裏に抜け出すが、GK小島亨介(スポ4=名古屋グランパスU18)がこの1対1を制しゴールを割らせず。その後は両者とも締まった試合を展開し、スコアレスで前半を終えた。


初の早慶戦で後半途中までキャプテンマークを巻いた小島。何度も好セーブでチームを救った

 後半開始早々からDFの間にパスの中継点を見出し、中央から崩していくシーンが増加。カウンターに対する出足も早まり、立ち上がりを良いかたちで戦うことに成功した。しかし、先手を打ったのは宿敵・慶大。52分、GKからのロングボールを頭でつながれ、MF多嶋田雅司(3年)の落としからMF増田皓夫(4年)にミドルシュートを沈められてしまう。失点直後、外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)は切り札のFW岡田優希主将(スポ4=川崎フロンターレU18)を投入。ダブルボランチの布陣に変更し、より中央からの攻撃を意識づけさせる。54分、岡田のプレスから相手のミスを誘い、ボールを受けたMF藤沢和也(商3=東京・早実)が武田とのワンツーを経てシュートを放つ。DFにブロックされるが、これで得た右サイドのCK。相馬が放った山なりのボールに、武田が頭で合わせて同点弾をたたき込んだ。互いに好機を生み出しながら決め手を欠く中、迎えた75分。再び相馬のCKから武田が強烈な一発をお見舞いし逆転。これが決勝点となり、早慶戦7連覇を手中に収めた。


2得点で逆転の立役者となった武田(中央)はMVPに選ばれた

 関東大学リーグ1部で首位を独走する早大と、2部で9位に沈む慶大。両校の立場は対照的であったが、身を置くカテゴリーの差を全く感じさせない90分だった。慶大は入念なスカウティングにより、早大のアンカーの横に生まれるスペースを有効活用。自陣に引きこもることなく果敢な攻撃で何度も早大ゴールを脅かした。「ワセダもケイオーも自分たちのブランド、ビジョンを持ったサッカーをした」と岡田が振り返るように、まさに私学の両雄の誇りをかけた『クラシコ』の名にふさわしい名勝負となった。接戦を制し、見事7連覇を達成した外池ワセダ。14日に控えるアミノバイタルカップで日本一への挑戦権をつかむべく、『泥臭く謙虚に最後まで』覇者への道を突き進め。


7連覇達成に笑顔を見せる選手たち

★大学スポーツ繁栄への萌芽となれ


試合後に胴上げされる秋葉主務

 試合内容もさることながら、試合前から行われた入念なプロモーション活動の甲斐あって、今年の早慶戦には前年を4000人近く上回る観客が足を運んだ。スカパーによる生中継で解説を担当した元日本代表・岩政大樹氏が感嘆の声をあげるほどの大入りを達成。試合当日も、スタジアムに併設されたクラシコパークや、女子と男子の試合の間に開催されたeスポーツでの早慶レジェンドマッチなど、随所に新しい試みを見ることができた。他にも様々な創意工夫が凝らされた今大会。そこには、ピッチに立つ選手だけでなく裏方に徹する両校の部員たちの、早慶戦をさらに大きなイベントにしようという共通のゴールを目指す強い意志がある。「歴史に残る早慶戦になった」(外池監督)、「ピッチ外に表れるア式蹴球部の価値を新たに提示できた」(岡田主将)、「試合の日にいろいろな立場で全力を尽くしている姿があった」(MF高岡大翼副将、社4=広島皆実)。この日まで獅子奮迅の働きで早慶戦の運営の中心を担ったMF秋葉遼太主務(文4=東京・駒場)の胴上げは、裏方の努力が報われた象徴的なシーンであった。まさに早慶両校の全員でつくりあげた、新しいかたちの伝統の一戦。この早慶戦が今後、大学スポーツ界が繁栄するきっかけになる可能性は十分にある。


(記事 森迫雄介、写真 石黒歌奈恵、新開滉倫、石井尚紀、河合智史)


第69回早慶サッカー定期戦『早慶クラシコ』
早大0-0
2-1
慶大
【得点】
(早大)55’、75’武田 太一
(慶大)52’増田 皓夫
※通算対戦成績=37勝18分14敗
早大メンバー
ポジション背番号名前学部学年前所属
GK◎1小島 亨介スポ4名古屋グランパスU18
DF小笠原 学社4青森山田
→53分10岡田 優希スポ4川崎フロンターレU18
DF12工藤 泰平スポ2神奈川・日大藤沢
DF大桃 海斗スポ3新潟・帝京長岡
DF20牧野 潤スポ3JFAアカデミー福島
→55分14冨田 康平スポ4埼玉・市浦和
MF鍬先 祐弥スポ2東福岡
MF19杉田 将宏スポ1名古屋グランパスU18
→28分11藤沢 和也商3東京・早実
MF金田 拓海社3ヴィッセル神戸U18
→90分13高岡 大翼社4広島皆実
MF栗島 健太社3千葉・流通経大柏
MF相馬 勇紀スポ4三菱養和SCユース
FW武田 太一スポ3ガンバ大阪ユース
→81分15直江 健太郎商4東京・早実
◎=ゲームキャプテン
監督:外池大亮(平9社卒=東京・早実)
※監督、出場選手のコメントは別記事にて掲載致します