VAMOLA編集長ちゃまくんが標語として掲げている「君もサカゲーでごはんを食べてみないか?」は、いま様々なカタチとなって実現へ向けた動きを見せている。eスポーツ業界の急速な発展とともに、多様な仕事(キャリア)が生まれて来ている。今回、そのう…
VAMOLA編集長ちゃまくんが標語として掲げている「君もサカゲーでごはんを食べてみないか?」は、いま様々なカタチとなって実現へ向けた動きを見せている。eスポーツ業界の急速な発展とともに、多様な仕事(キャリア)が生まれて来ている。今回、そのうちの一つを紹介する。
『FIFAインタラクティブ・ワールドカップ(現FIFA eWorld Cup)』においてFIFA12日本代表の経歴を持ち、現在は日本唯一のeスポーツ業界の統括団体「一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)」の職員として、eスポーツ選手の様々な活動を縁の下から支える羽染貴秀氏にお話を伺った。
――現在のお仕事を教えてください
羽染氏:現在、eスポーツ業界が右肩上がりの状況ですので、やらなければならないことが本当に多くあります。その中で自分がやるべきことは、まずは「選手のサポート」です。
例えば、昨夏の第18回アジア競技大会ジャカルタ(以下、アジア大会)では、大会運営組織と連絡を取りながら、選手の移動から宿泊先の手配、大会の選手パスの手配、ルールミーティングの出席から通訳まで、多くの作業を一人で行いました。ただ、集中していたことは「選手がどうやったらメダルに近づけるか」というサポートです。
――良いサポートができたと感じたことは
羽染氏:アジア大会の試合中に起こった話だと、自分はウイニングイレブンではコーチのような形で日本選手のすぐ近くの位置にいたのですが、そこから試合の合間に様子を見て壇上に上がったりしながら臨機応変に選手たちに声をかけて励ましていました。選手が緊張していたら「大丈夫だから」と声をかけて不安感を取り除いてあげる。横に誰かがいるというのは凄く安心するというのは自分の経験上わかっていたので。
僕ら(日本チーム)の動きを見て、他国も合わせていました。ウイニングイレブンで金メダルを取れた背景には、上手にサポートができたということも若干あるのではないかと感じています。
――いま、どのようなサポートを求められていますか
羽染氏:大きな大会になるほど、フィジカルとメンタルの両面におけるトレーナーのような存在が大事になってきます。アジア大会では選手が利用できるマッサージルームがあったのですが、選手のコンディション調整には良かったです。これもスタッフが「選手がマッサージルームに行けるタイミング」を計って、選手を誘導することも大会でのサポートの一つでした。
そこにいたマッサージ師は(既存の)中国のチームトレーナーとして活躍しており、選手のどこが凝るのかどんなケアが必要なのかを理解していました。勝つためにはゲームのトレーニングだけではなく、心身のケアを含めて大事に考えられていて、そのあたりが「eスポーツはスポーツ」である所以と言えるかも知れません。
この点は、日本の認識が遅れているところであり、自分が伝えていかなければならない部分だと思います。
――心身のサポートの重要性を認識してもらうには
羽染氏:トレーナーの重要性を認識してもらうには、2つのフェーズがあると思います。昨年9月の東京ゲームショーでは、鍼灸師の方がブースを出していました。そうした「トレーナーをつけたeスポーツ選手たちが世界で活躍する」という実績を元に、その認識の大切さを知ってもらうことが1つ。
もう1つは、彼らトレーナーに関係する方々がeスポーツ選手に求められている身体能力や身体の研究をする。例えばアカデミックな場において「研究発表をして認められる」、あるいは権威のある媒体に「論文を出して認められる」というのが次のフェーズだと思います。
そうした研究活動によって、真に「eスポーツはスポーツ」と言われることに繋げることができれば良いことです。JeSUは、医学的、科学的な側面からフィジカルやメンタルを研究するのであれば、その研究ために選手を派遣することを検討します。そうした研究を通じて、業界全体にポジティブなフィードバックとして還元されれば良いと思います。
またこれは、アンチドーピングの件にも繋がりますが、医療的な知識はJeSU事務局として、必ず持っておかなければならないと思います。
――さらなるサポートに必要な行動とは
羽染氏:eスポーツは3日あれば状況が変わると言われています。「いま、選手が何を考え、どのようなサポートを求めているのか」、そのすべてを汲み上げるのは難しいことですが、大きな枠を捉えないといけません。
「なんでゲームをそんなに本気でやってるのか?」という根底のところから、しっかりと掴んでいかなければならないですし、そのための選手とのコミュニケーションをもっと取ろうと思います。
自分は元々eスポーツ選手で、すでに多くの選手や関係者とも繋がりがあり、選手と同じ目線でフランクに話ができるので、そういった部分を活かしていくのがJeSUにおいての役割です。
現在、選手の移り変わりの早いことが課題として感じています。選手にファンをつけるためには継続性が必要です。しかし、選手の移り変わりが早ければ、特定の個人やチームを応援するという流れが作りにくいのです。JeSUとして、「選手活動の継続性をどうしたらサポートできるか」を考えていきたいです。
(写真:インタビューを行った東京・有楽町にて。羽染氏はJeSUの職員であると同時に、サッカーゲームを中心としたeスポーツ大会の実況、解説としても活躍している)
(インタビュー●VAMOLA eFootball News編集部)