「eBASEBALLパワプロ・プロリーグ」開幕戦、メディアが押し寄せ球界OBや球団マスコットが集う華やかなステージのなか、ほろ苦い初陣でプロ生活をスタートさせた1人のeアスリートに注目したい。 千葉ロッテマリーンズ代表、イッキー選手だ。千葉…

「eBASEBALLパワプロ・プロリーグ」開幕戦、メディアが押し寄せ球界OBや球団マスコットが集う華やかなステージのなか、ほろ苦い初陣でプロ生活をスタートさせた1人のeアスリートに注目したい。

 

千葉ロッテマリーンズ代表、イッキー選手だ。

千葉ロッテの野球を愛し、パワプロにおいてもとことんマリーンズ打線にこだわる男。バレンタイン監督が指揮を執った時代の千葉ロッテに感化され、虜になった。福島の実家で観戦した野球放送が、イッキー選手の原点だ。

大好きなパワプロでも千葉ロッテでプレーすることは当たり前だった。しかし、応援する選手や特定の好きな選手名を公表せず、千葉ロッテマリーンズという1球団を愛することで満足している、そう話すeアスリート。

野球を知り尽くす人であれば当たり前のことかもしれないが、千葉ロッテの応援はセパ12球団の中でもすざましい。飛んだり跳ねたり、大声を出したり、スタジアムで応援の声は鳴り続ける。

マリーンズファンは、本拠地を離れても全国どこへでも遠征し、応援団を結成する。この応援こそがまさに、千葉ロッテスピリットの1つだ。好きだから全力で応援する、ファンの答えはシンプル。

 

イッキー選手も、そんな千葉ロッテスピリットの持ち主であるという。

 

「里崎さんと誕生日が一緒なんですよね」

「タオルは、涌井選手のものを持ち込んでいます」

千葉ロッテを語り出すと、ポンポンと球団愛が飛び出していく。その表情は、マリーンズファンの1人としての顔でもある。千葉ロッテ=イッキー、このキーワードはeBASEBALシーンを語る上で覚えておきたい。

普段のにこやかな風貌からは想像も付かないほど、理論派で勝負にこだわる一面を持ち、静かに戦いを挑み続ける姿。彼こそまさに、e千葉ロッテの申し子なのだ。

マリーンズの記念すべきeBASEBALの幕開けは、イッキー選手に託された。

 

「平常心で臨みたい」

 

開幕戦直前の練習会に参加したイッキー選手は、スポーツブルの質問に対して、丁寧に一つ一つ噛みしめるように回答していた様子も印象深い。

 

「あんまり取材とかされないんで(笑)」

 

照れ臭そうに笑顔を魅せるeアスリート。にこやかな笑顔と裏腹に、パワプロに関しては譲れないものが多い。オリックス打線には、警戒を強めて臨んだ千葉ロッテのeBASEBAL開幕第1試合。

昨年の成績から見ても、順当なラインナップで挑んだはずの千葉ロッテ。6回裏、土壇場で勝負に出たのはイッキー選手自身だった。しかし、イッキー選手の放った甘めの打球は、オリックス・イチロー選手の一発を浴び、サヨナラ本塁打で試合終了。

 

「甘さが出たかなと。途中までいけそうな気がしたんですよね。帰宅したら今日の試合をアーカイブで確認します」

 

勝負の世界、一瞬たりとも油断は禁物だ。プロの厳しさを存分に味わった瞬間かもしれない。野球の神がいるならば、パワプロの神は、イッキー選手に試練を与えた。

試合後、泣きながらサヨナラ勝利を分かち合うオリックスの選手達の隣で、イッキー選手は、静かにペットボトルの水を飲み干していた。本人曰く「試合後の光景が全く記憶に無い」という、それほどに試合に集中していたようだ。

 

あまりにも苦いデビュー戦を迎えたeアスリートは、試合後のミックスゾーン(取材エリア)で、晴れやかな表情を見せていた。その光景は、意外だった。

 

「(千葉ロッテ主将)スンスケさんから切り替えて行こうぜ、って言葉を掛けられて。今日の反省点だけ生かして、次に望みたいなと」

 

実は、スンスケ選手こそ、同じ球団でありながらライバル的存在のeアスリート。お互いリスペクトの想いも強いが、負けず嫌いな一面も共通項。

パフォーマンスや戦術が派手に見えがちなスンスケ選手が「動」なら、イッキー選手はストイックにコントローラーを握り続ける「静」だろう。マリーンズの静と動、お互い高め合い意識する間柄であることは観ている側からも予測できる。

(写真左)スンスケ選手(写真右)イッキー選手 開幕戦のステージ上にて撮影

2018年11月10日、eBASEBALL パ・リーグ開幕戦。千葉ロッテの第2試合は、イッキー選手の悔しさを晴らすかのようにスンスケ選手がマリーンズ打線を固め、1点を守りきり勝利を収めた。

隣で試合を見守っていたイッキー選手にも、ほっとした笑顔がこぼれた。

スンスケ選手の勢いそのままに迎えた千葉ロッテ、マツ選手に託された第3試合は、0−9と惨敗。開幕オリックス戦は、eBASEBALLの歴史において教訓となるゲームだったかもしれない。

初陣をほろ苦い成績で終えた千葉ロッテだが、eアスリート達に下を向く暇などない。イッキー選手がその理由を話してくれた。

 

「マリーンズは、応援が凄いんで僕らが頑張らないと。応援の声、凄く力になります!!」

 

eBASEBALL 開幕戦は、マリーンズファンの大応援団達が渋谷に押し寄せ彼らを後押しし、彼らとともに戦っていた。eプロ野球選手として千葉ロッテマリーンズの称号を背負った3人は、その後押しを受け、次の試合に向けて休まず歩き出していた。

 

2018年11月18日、eBASEBALL パ・リーグ第2節、千葉ロッテは全員野球でeペナントレース初勝利をもぎ取った。

ほろ苦い初陣からeプロ生活をスタートさせた、イッキー選手。全ての経験が血や肉となり、eベースボーラーとしての彼を成長させていく。シーズン終了後の変化が最も楽しみなeアスリートとして、注目しよう。

 

取材・文/スポーツブル編集部