「クライミングを日本中に広めるために、もっと有名になりたい」 TEAM au 楢﨑智亜というアスリートは、「クライミング」という「競技のために24時間を過ごす」かのように見えてしまう瞬間がある。大会や試合前に話を聞くとストイックな回答が連発…

「クライミングを日本中に広めるために、もっと有名になりたい」

 

TEAM au 楢﨑智亜というアスリートは、「クライミング」という「競技のために24時間を過ごす」かのように見えてしまう瞬間がある。大会や試合前に話を聞くとストイックな回答が連発したかと思えば、笑顔で私生活を堂々と語り出す、そんな気さくな一面も見せる。

例えば、スポーツブルの動画撮影で私生活に1日密着させてもらっても、話題はクライミングのことばかりになってしまう。常に「クライミング」を意識しているかのように、自身の表現者である姿は、アスリートとしても人間としても特筆すべき個性だ。

世界王者として戦い続ける22歳の進化と覚悟、そして、アスリートの素顔に迫るTEAM au密着企画。第2弾となる今回は「TEAM au 楢﨑智亜選手に密着2〜世界王者のお気に入り〜」と題し、都内某所でスポブル限定インタビューが敢行された。

秋めく木々を背に、都内某所にフラリと現れた楢﨑選手。カフェのリラックスした空間のなか、幾つかのキーワードを投げかけてみた。

まずは、クライミングの話題から尋ねてみた。TEAM au 楢﨑智亜として、日本代表として、今シーズンを振り返ってもらうことに。

 

「悔しいシーズンでしたね。特に世界選手権(オーストリア・インスブルック開催/複合男女決勝)のミスは反省点かなと」

楢﨑智亜選手インタビューの様子

彼が開口一番に話してくれた世界選手権は、多くの日本選手たちが苦戦した大会だった。日本勢は男女ともに複合でメダルを逃し、金メダル候補だった楢﨑智亜はスピードでフライングした影響が響き、ボルダリングでも挽回できずに5位に終わった。

鬼門のスピードで苦しんだ。スタートを切った瞬間に、フライングを告げるブザーが鳴り、最下位スタート。決勝6人中、1位を目指せる6秒697の自己ベストを持ちながら、フライングのため悔しい思いを経験した。その後も得意のボルダリングで3位、リードでも4位と振るわず、3種目の順位をかけ算したポイントの少ない選手が上位となるレギュレーションに苦しみ、巻き返せなかった。

 

「ミスは悔しい」

 

常にストイックな彼は、インタビューの空間で「ミス」という厳しい言葉を連発していた。己に厳しいアスリートにとっては当然のことなのかもしれないが、あまりにストイックな姿勢には尊敬の念を抱いてしまう。

シーズン終了後、カフェのようなリラックスした空間でもクライミングを話し出すと戦士の表情に変わる。彼がプロクライマーである以上、全ての出来事がクライミングへ繋がっているように思えてしまう理由はそこにあった。

TEAM au 楢﨑智亜の唯一のプライベートが覗けるツールといえば、Instagramだ。公式Instagramを開くと、少しだけ人間・楢﨑智亜の素顔が垣間見れるような気がする。このInstagramの活用法について本人に訪ねてみると、意外な回答が返ってきた。

 

「実はあんまりやらないんですよね、SNS。女子的なものって、こう結構というか苦手な分野なんです(笑)」

 

笑いながらInstagramについて話し出すと「SNSはクライミングを広めるため」であり、競技人生において「自身が海外と繋がっていくためのツール」として用いているのだという。そんな彼にも、インスタを活用しているうちに近年、小さな変化が訪れていた。

 

「でも、だんだんインスタも面白いなって思ってきました、最近」

 

早速、Instagramから楢﨑智亜の素顔を紐解くべき、複数の質問を投げかけてみた。まずは、競技の様子をアップした動画記事について。

インスタに投稿された動画は、昨年12月30日に岡山県「ロックス」で開催された「play hard」にゲスト参加し、見事優勝を遂げたシーン。2018年1月1日のInstagramには競技動画がアップされていた。

お正月という空間で、あえて競技動画をアップしているあたりがアスリートらしい気もするが、投稿のきっかけは我々メディアの想像とはかけ離れていた。Instagramに競技動画をアップした意図について、本人がさらりと解説してくれた。

 

「あ、これもなんとなくアップしよっかなって」

 

続けて「1年間、休みという時間はほとんどないですね」と話す、TEAM au 楢﨑智亜。

「お正月とか、そんなに休みとか考えないでクライミングしてますから普通にアップしました(笑)あ、おばあちゃんの家に行きましたね。お正月は」

 

祖母の話を嬉しそうに話してくれた楢﨑智亜、どうやら楢﨑家のおばあちゃんは楢﨑兄弟の大ファンでクライミングの応援も熱心だという。

少年のような笑顔でお正月の楢﨑家の様子を話してくれた。地元で過ごすほのぼのとした風景の中に楢﨑智亜がひょっこりと現れる姿は、なんとなく想像しずらいが「普通っすよ!」そう笑いながら、お正月の過ごし方も教えてくれた。

楢﨑家といえば、愛犬の存在も欠かせない。お正月明けに公開されたInstagramには、可愛いミニチュアダックスフントのイヴと戯れる姿がアップされていた。

クライミングの競技動画をアップした数週間後、実家で動物に癒される、いかにもインスタ映えする画像を自然と公開しているギャップも、魅力の一つ。

(弟・明智選手とともに)兄弟揃って動物好きのイメージがある楢﨑家だが「楢﨑家は、犬派か?猫派か?」普通すぎる質問を投げかけてみた。

 

「犬派ですね。インスタに載せた犬の名前は、イヴと言います。実家の母親に誕生日プレゼントした子犬だったんですけど、もう可愛すぎて。今も大好きで、やっぱり子犬の頃から実家にいるんで」

 

愛犬の投稿に続き、楢﨑家の様子も垣間見れるInstagram。とある日の投稿には、弟・明智選手へのバースデーパーティらしき光景も公開されていた。真っ赤な苺が乗った誕生日ケーキを兄弟一緒に囲む姿は、なかなかレアな光景だ。

「あ、これですね。このケーキも僕が買って行って。店?たまたま通りがかった店でふらっと買いました。あぁ、今日明智の誕生日だなって思って。女子的なケーキ?そうですか(笑)全然普通に買いました!」

1つ1つ発せられるコメントが、なんとも言えない個性が光る。アスリートとしても人間としても、TEAM au 楢﨑智亜はミステリアスで奥深い。

これまた普通の質問と思いつつ、こんな機会だからこそ尋ねてみた。甘い物やデザートを好んで食べることは、年に何回程度あるのだろうか?

そして、確かTEAM au 楢﨑智亜は野菜が苦手だという意外な一面も持ち合わせていたはずだ。アスリートにとって重要な食生活や栄養バランスのこだわりについても聴いてみた。

 

「食べますよ甘いもの、普通に。野菜は全部苦手、というわけななくて、加熱したものだったり野菜全般は食べます普通に。生野菜サラダが苦手なんですよね、食べなきゃいけないんですけど。すっごい周りから言われますよ、僕の野菜選びについては。」

どんな質問にもまっすぐに楽しそうに応じていく、プロクライマー楢﨑智亜。Instagram内のストーリーズには、時折リラックスした様子を公開することもあるが、やはり「意識していない」のだろうか。

 

「はい!普通にあげてます、写真とか」

 

島で自然と戯れる様子や旅先での貴重なショットさえも、楢﨑智亜本人にとっては日常の切り取りだ。

それもひとえに、クライミングを広めるため、競技と世界で繋がっていくため。最新のInstagramには、公式HPのインフォメーションを自ら記載。セルフプロデュースをアスリート本人が担うのは大変な苦労もあるだろう。本人はどのようにSNSを捉えているのだろうか、最後にズバリ聞いてみた。

「競技や練習のように生活の一部ですね、最近は面白くなってきたし(笑)」

その人間性から見ても、クライミングという競技への愛の表現者としても、彼を賞賛せずにはいられない。TEAM au 最強クライマー楢崎智亜から目が離せない。

取材・文/ スポーツブル編集部

■TEAM au
TEAM au は、日本におけるスポーツクライミングを、子どもから大人まで多くの人が楽しめるメジャーなスポーツとして発展・普及させるべく結成されました。チームメンバーは、すでに国内外の大会で輝かしい実績を残し、世界の頂点をねらう実力派クライマーで構成されています。2016年8月、TEAM auは、文字通り“壁を越える”為の最初の一歩を踏み出しました。今後は、クライミングを愛する全ての人とともに、様々な活動を通じて日本のスポーツクライミングシーンを牽引し、盛り上げていきます。

詳しくはこちら(https://climbing-au.jp/

大会ハイライト動画はこちら(https://sportsbull.jp/climbingtv/

 

■楢﨑智亜(ならさき・ともあ)

1996年6月22日生 栃木県出身 TEAM au 所属

第1回コンバインドジャパンカップ 優勝

IFSC クライミング・ワールドカップ 2018(ボルダリング) マイリンゲン大会 2位/モスクワ大会 優勝/八王子大会 2位/ベイル大会 3位