東京六大学野球秋季リーグ戦対慶大3回戦 2018年10月3日(水) 神宮球場 悔しい敗戦となった。序盤に先制され点差を広げられるも、向山基生(営4)の満塁弾や中山翔太(人4)のソロ本塁打で同点に追いつく。途中、8回裏にハプニングもあった…

東京六大学野球秋季リーグ戦対慶大3回戦

2018年10月3日(水)
神宮球場

悔しい敗戦となった。序盤に先制され点差を広げられるも、向山基生(営4)の満塁弾や中山翔太(人4)のソロ本塁打で同点に追いつく。途中、8回裏にハプニングもあったが、気持ちを切らさずピンチを0で抑えると、延長に入った11回表に川口凌(人4)が2点本塁打を放ち、勝ち越し。しかし、その裏に慶大打線に2死から土段場で同点に追いつかれると、12回裏にサヨナラ負け。最後まで全力で戦い抜いた選手たちは思わず涙を流した。

 

戦評

悲願の優勝に向け、絶対に負けられない慶大との第3戦が幕を開けた。法大の先発は三浦銀二(キャ1)。初回、守備が噛み合わず先制点を許すと、2回には2点本塁打で差を広げられる。しかし3回表、9番代打・佐藤勇基(法2)が左前安打を打つと、法大打線に火がつく。無死満塁へとチャンスを広げ、ここで主将・向山基生(営4)が意地の一発を放つ。

一時逆転の満塁弾を放った向山

高めに入った直球を、ライナー性の強い当たりで左翼席へと運ぶ満塁本塁打。その後も暴投で1点を追加し、5-3と逆転に成功する。

逆転後の3回裏から高田孝一(法2)、5回裏から石川達也(キャ2)が後を任されるが、リードを守り切ることができずに逆転を許す。しかし4番中山翔太(人4)の本塁打で同点とすると、その裏、菅野秀哉(キャ4)も安定感のある投球で三者凡退に抑え、勝負は8回以降に託された。

ここで予想外の事態が起きる。8回裏、1死一、三塁のピンチを背負った法大。内野は前進守備で1点を守りにいく体制に。緊迫した雰囲気の中、9番髙橋亮吾の打球は一塁へ。中山が捕球し本塁へ送球。三走の河合大樹が三本間で挟まれ、中村浩が追いかける。タッチできずに三塁に戻ったと思われたが、三審の判定はアウト。これを見た法大選手は二塁へ送球せずにプレーを終了した。しかし、アウトの判定に納得のいかなかった慶大選手と監督が抗議をし、審判の協議の結果、三走はセーフで『1死満塁から再開』との判定に。この判定に法大が納得いくはずはない。青木久典監督と共に法大ナインも必死に抗議。川口凌(人4)が涙目になりながら訴える姿も見られた。

目に涙をためながら最後まで訴え続けた川口凌

スタンドからも様々な野次が飛び交う中、15分間の長い協議が行われるも結果は変わらなかった。

「こんなことで負けるチームではない(向山)」。絶対絶命のピンチを前に青木監督とナインで円陣を組み、気持ちを入れ直す。ベンチもスタンドも一体となった瞬間だった。

中断後も菅野は落ち着いた投球を見せ、中村健人を三振に、渡部遼人を中飛に打ち取る。これまでもずっとマウンドに立ち続けてきた男が、執念で1死満塁の窮地を守り抜くと、神宮はこの日1番の歓声と拍手に包まれた。

その後の9回は両者無得点に終わり延長戦に突入。試合が動いたのは11回表。1死二塁から6番川口凌が放った打球は右翼席へ。2点本塁打となったこの一打は、川口の熱い思いがこもったものであった。しかし、最後に意地を見せたのは慶大だった。単打が重なり2死満塁で打者は大平亮。フルカウントで迎えた6球目、打球は菅野の足元を抜け中前適時打となる。同点とされ、連盟規定により最後のイニングとなった12回、法大は三者凡退に終わり、引き分けに持ち込むべく守りに入る。野手はほとんどが4年生に。心強い野手が後ろを守る中、登板した朝山広憲(法3)であったが、1死三塁のピンチを作り降板。

この場面でマウンドを託されたのは森田駿哉(営4)だ。「ここで力のある球を投げられるのは森田。彼に懸けた」と青木監督が言うように、森田は140㌔中盤の力強い直球を投げ込む。しかし、四球と申告敬遠で走者満塁され、最後は長谷川晴哉の遊ゴロの間に三走が生還。サヨナラ負けを喫した。

喜ぶ慶大選手の前でうなだれる中村浩

4時間45分の激動の試合。その場に崩れ落ち、涙を見せる選手もいた。

悔しさの残る敗戦となってしまったが、まだ優勝の可能性が消えたわけではない。今季のチームはひと味違う。残りの2カードもさらなる『結束』力で勝ち点を取りに行く。次に流す涙は、悔し涙ではなく、うれし涙であるように。(吉田あゆみ)

 

クローズアップ:向山 基生

 1勝1敗で迎えた慶大との第3戦。意地と意地のぶつかり合いとなった首位争いは、まさに大熱戦と呼ぶにふさわしい激闘を繰り広げた。

 

慶大に3点リードを許して、迎えた3回表。慶大先発・高橋佑から安打を量産し、無死満塁のチャンスの場面で、向山基生(営4)は打席に立った。カウントノースリーからの4球目。高めに入った直球を捉えると、打球は弧を描き左越え満塁本塁打に。主将の一振りで息を吹き返した法大は、この回一挙5得点を挙げ逆転に成功。大熱戦の幕開けとなった。

試合は度重なる攻防が続いたが、延長12回に及ぶ激闘の末、あと一歩のところでサヨナラ負け。悔しさから涙があふれる選手も見られる中、向山が涙を見せず観客席に深々と頭を下げると、健闘を讃える拍手が送られた。敗戦したものの、印象的だったのは4年生を中心とした『勝利への執念』。劣勢の場面でも食らいついていく力強さは、向山が中心となって選手たちの日々の私生活から見直した結果だろう。

 試合後、悔しさにじませつつも「ここで落ち込んでいても仕方ない」と次戦を見据えた向山。選手たちが戦い続ける限り、声援は止まない。(大平佳奈)

青木久典監督インタビュー

-今カードを総括して
勝ち点を取られて本当に悔しいですね。

-2カード勝ち点連取後、勝ち点を落とす結果となりました
目の前まで、勝ち点を取る寸前までいっていたんですけど。あまり言葉が出てこないのですが、慶応と法政の意地の張り合いで、最後の最後まで持っていかれたという感じで。力の差というのは両チーム全然ないですし、本当に残念です。

-今日は8回裏に、審判の方々と協議する場面も見られました
この場面に関しては、自分が納得するまで抗議したいなと思っていました。しっかり説明してもらいたいなということで、時間を取らせていただきました。

-川口凌選手をはじめとして、選手も訴えていましたが
あそこまで、彼らが必死になって、川口なんかは涙も溜めながら訴えている姿を見たら、本当に命をかけるくらいの気持ちでやっている姿ということが真実を物語っているんだなと思いましたし、私から見ても、あそこは(野手が)ああいうプレーになってしまうなというのはあったので、本当に彼らのためにも僕は責任を持ってしっかり抗議したいなと思いました。

-向山選手の満塁弾や中山選手の同点弾等もあり、選手も気持ちの入ったプレーを見せてくれましたが、敗因は
まだまだ勝負どころでミスが出てしまうんですよね。例えば、走塁のミスもあったと思いますし、もう1つはここという時に、シフトを絡めたプレーで、セカンドが一塁にベースカバーしていなかったりとかもしました。そういったことが、ここっていう時にできないというのが、ゲームを勝ちきれないところでもあるんじゃないかと思いますね。そういうところがちゃんとできていれば、負けないチームになると思います。

-中2日で立大戦となります
選手に、確かに気落ちするところはあるかもしれないが、この負けには収穫もたくさんあったと思うし、やはり悔しさだったりを1つバネにして、決して下を向くことなく、立教戦にぶつけようよという話はしたので、中2日で身体はキツいかも分からないですけど、ここは気力の勝負です。しっかり勝ちきった方が、天皇杯優勝が見えてくると思うから、(立大戦に向けて)しっかり気持ちとコンディションを高めていこうなという話もしました。

-田中誠也選手や川端健斗選手など好投手もそろっています
やはり、そんなに簡単なゲームではないと思うので、僅差のゲームになってくるのかなとは思いますね。ただ、試合数をこなしてきているなかで、良いピッチャーも打ち崩してはきていると思うので、(立教でも)田中くんとか川端くんとか良い左ピッチャーも打ち崩せるように2日間準備したいなと思いますね。

-次戦への意気込みをお願いします
立教大からはしっかり1戦目を取って、勝ち点を絶対取ります。

 

選手インタビュー

向山 基生 主将

ー激戦を振り返って
自分たちのできることは出し切れたと思うので、そういう面では慶大の方が一枚上手だったのかなと思います。

ー最後は4年生を中心に、総力戦となったが
頼もしい4年生が多いので、もう一回切り替えてまた4年生を中心に頑張っていきたいと思います。

ー3回の一時逆転満塁本塁打について
1打席目に犠打を失敗して、その後に点を取られて流れが悪くなったので、流れを変えられるようなバッティングができるように打席に入りました。(放った球は)真ん中高めのストレートで、ライナー気味だったので「入れ」という(祈る)気持ちでした。

ーミーティングではどのようなお話を
本当に悔しい負け方をしたのですが、ここで落ち込んでも仕方ないので、ここから絶対に4連勝しようと。4連勝すれば(優勝への)希望も出てくると思うので、まず次の立大戦に向けて頑張ろうと話しました。

ー判定を巡って協議する場面があったが
菅野(秀哉=キャ4)が結果的に抑えてくれたので良かったですが、1つのアウトが命取りになるのであそこは譲れないところでした。(試合が再開される前は)監督にも言われていたのですが、「こんなことで自分たちは負けるようなチームではない」という話をしました。

ー今季は特に勝気というものを感じるが
自分は特別なことは何もしていないのですが、周りの4年生が副将を中心に声を掛け合ってくれているので、この雰囲気のまま頑張っていきたいと思います。

ー守備では連携ミスもあったが
確認不足や緩みがあると思うので、もう一回しっかり確認したいと思います。取れるアウトを取れなかったりと、まだ勝ち切れない部分あるので、そういったところをこの2日間で詰めていって立大戦に臨みたいと思います。

ー立大戦への意気込み
しっかり2連勝できるように頑張ります。

 

川口 凌 内野手

-試合後のミーティングでどのような話があったか
負けてはいけない試合だったのですが、まだ優勝が無くなったわけではないので、しっかり切り替えて次の立教戦で勝てるように、という話がありました。

-11回には一時逆転の本塁打を放ちました
試合前から、今日の試合が野球人生の中でももの凄く大事な試合になると思って入っていたので、後悔しないようにっていうのだけ思って打席に入りました。

-8回には審判との長い協議がありました
本当に絶体絶命のピンチになって。もう気持ちしかないから、みんなで気持ちで乗り切ろうとやった結果、あの場面を乗り切ることができたのだと思うので、良い部分もあったと思います。

-最後は4年生の総力戦となりました
大事な場面とか、決めるのはやっぱり僕たち4年生だと思うので。今後の立教、東大と2カードありますけど、しっかり4年生がチームを勝ちに結びつけられるように頑張りたいと思います。

-最後に打球が飛んできました
なんとかアウトにしたかったのですが、アウトにできなくて凄い悔しかったです。

-接戦となり、緊迫した場面が多い中での試合でした
今日の試合はこれからの野球人生の中でも、絶対思い出に残る試合だと思います。唯一心残りは、勝てなかったということだけで。試合自体は、一球一球は覚えていないですけど、絶対に忘れないと思います。

-残りの試合に向けて
さっきも言ったように優勝の可能性はまだ全然あるので、立教、東大でしっかりどちらも2連勝できるように頑張りたいと思います。

 

フォトギャラリー

この日猛打賞の活躍を見せた小林
意地の一時同点弾を放った中山
中山は打球の行方を追いながらガッツポーズを見せる
中断もあり流れの悪い中で抑えた菅野
試合再開前には監督を中心に円陣を組んだ
延長で2点本塁打を放った川口凌
川口凌の本塁打に沸くベンチ
涙を見せていた伊藤寛学生コーチにベンチで出迎えられた川口凌
最後にマウンドを託された森田
挨拶後は涙が止まらなかった川口凌