【写真提供=共同通信社】U18アジア選手権第3日  韓国戦の1回、先制3ランを浴びた吉田=サンマリン宮崎 宿敵・韓国との大一番。日本は吉田輝星に先発を託した。結果的には初回が全てだった。先攻韓国の2番に四球、3番はショートゴロエラー、そして…

【写真提供=共同通信社】U18アジア選手権第3日  韓国戦の1回、先制3ランを浴びた吉田=サンマリン宮崎

 

宿敵・韓国との大一番。日本は吉田輝星に先発を託した。結果的には初回が全てだった。
先攻韓国の2番に四球、3番はショートゴロエラー、そして4番にスリーランホームラン。打者3人の絵に描いたような韓国の先制パンチを吉田は食らった。
「あの3点がなかったら1対0で勝っていた(結果は3対1、韓国勝利)」
と吉田は言う。そう、4番らしくゲームを決める一発だった。
いや元へ。実は誤算はその二人前ではなかったか。ゲームを決めたのはこの日は2番バッターにあった、と言っていい。

 

「初回から全力でいこうと思いました」
 と吉田は先頭バッターから全開の148キロストレートから入る。2球目でサードゴロに打ち取って、よし、という感触を得たのではないか。しかし、そうはいかないのが国際試合だ。しかも相手は韓国。
2番の左バッターにファールで粘られる。ストレートはファールにする、と決めていたようにカットされた。10球を要して、四球で歩かせることになった。いきなり、動揺したはずだ。
「2番バッターには予想以上に粘られたんで、そこは・・・」
 キャッチャーの小泉航平が面食らったように振り返る。
 対戦した後の韓国打線の印象をゲーム後に問われての吉田。
「思ったより丁寧で粘られた。追い込まれても簡単に三振しなかった」
 吉田は前日の会見で「自分の高めのストレートは韓国のパワーですくい上げるボールには有効だと思う。空振りを取りたい」と言っていた。また、負けた後の会見でのコメントだが、こうも言っている。
「昨夜、韓国の分析をして、特にクリーンアップ、右バッターは大きい選手ばかりで、そこをどう抑えるかという点を研究しました」
 対策を右の大砲にかなりフォーカスしていた節がある。

 実は前日、もう一人の先発候補だった柿木蓮はこんなことを言っていたのだ。
「(去年のワールドカップで対戦している)藤原(恭大)に聞いたら、韓国はパワーもあるけど、意外に日本に近い野球をしてくる、と言っていました。細かい野球もしてくるので、そこも気をつけたい」
 もちろん、情報は共有していたはずだが、クリーンアップだけではなく、前後のバッターの対処を吉田はどうだったのか。
 力と厭らしさ。長打とスモールベースボール。韓国の高校生も吉田をある程度は研究していただろう。高めのホップするボールは空振りさせられることが多い。上手くファールで逃げて甘いボールを狙え。吉田が前日まで思い描いていた韓国打線とは、ちょっと計算が外れた。
 永田裕治監督の一言が全てを物語る。
「2番バッターに粘られて、球数もかせがれて、こっちがじれて四球になってしまった。うちがしないといけない野球を韓国にされてしまった」

「国際試合は一つのプレーで雰囲気が変わった」と吉田が振り返ったように、追い打ちをかけたのは、小園海斗のエラーだ。よし、併殺だ、と小園にはよぎったかもしれない。
もらったチャンスは逃さない。勝負の鉄則だ。韓国にとって思いもよらない好機が転がり込んだ。
1死一、二塁で4番のキム・デハン。キムは185センチ、83キロ。最速150キロを超えるボールを投げる二刀流。そしてドラフト1位で韓国のプロ球団に入ることが決まっているという選手なのだそうだ。
 やはり前日、柿木が言っている。
「ボーイズの日本代表として世界大会で韓国とやったときにメンバーだった選手が今回も来てます。背番号17の選手です」
 まさしくそれが、キムだった。
キムは吉田の初球のスライダーを最後は片手ですくい上げて、レフトスタンドまで届かせた。

 小泉が悔やむ。
「ホームランが悔しいです。あの一球が・・・。ボールから入ったり、違う球種から入っていたら。スライダーを選んだのは丁寧に入るというか、振らそうと思ってたんですけど。バッターが思う以上に対応力があったというか。悪いボールじゃなかったんです。少し高かったとは思うんですが」
 吉田も悔やむ。
「悪い流れで初球、簡単に入ってしまった。失投ではないです。ストレートを生かすためのスライダーだった。でも、軽率だった。大会前からコーチにも言われていました、立ち上がりが悪い、と」
 永田監督も1球の怖さを悔やむ。
「今日のゲーム? 結果的には四球、エラー、そして失投が一球あったと。吉田の出来は・・・あの1球だけですね。国際試合は怖いですねぇ」

 吉田が許したのはこのホームランと、最後のイニングとなった6回のバントヒットだけだった(95球、5奪三振、2四死球)。
 初回以降はこの大会用に新たに習得した速くて小さい曲がりのツーシームやフォークなどの変化球を多く使って、韓国打線を封じた。
「フォークで空振りを取れました。今日は調子が悪くてカーブを使ってなかったんですが、ストレートとの緩急があれば、ストレートも振り遅れる。右バッターにツーシーム、フォークを見せ球にできたし、後半はいいピッチングができた、通用したと思います。国際試合のイニング間のテンポもわかった。切り替えて修正したい。韓国とはまた、決勝で当たる可能性があるので、そこでは勝ちたい」

 小園も珍しく3つのエラーをした。
「小園がエラーをして、ごめんと謝ってきたんですけど、そこに打たせた自分、ホームランを打たれた自分が悪いんで、切り替えよう、と」
 吉田は小園に言ったそうだ。
 吉田にも小園にも、自分の綻びを次に取り返す機会は巡ってくる。

(文・清水岳志)