終わってみれば完敗だった。 乾貴士にとって新天地でのホーム開幕戦、ベニト・ビジャマリンで行なわれたベティス対レバンテは0-3でレバンテが勝利を収めた。昨シーズン、バルセロナの連勝をストップした勢いをそのままに、アウェーチームの堅守速攻…
終わってみれば完敗だった。
乾貴士にとって新天地でのホーム開幕戦、ベニト・ビジャマリンで行なわれたベティス対レバンテは0-3でレバンテが勝利を収めた。昨シーズン、バルセロナの連勝をストップした勢いをそのままに、アウェーチームの堅守速攻が光った試合だった。
試合はベティスのペースで進んでいたはずだった。3-5-2と中盤を厚くしたシステムがはまり、敵陣でプレーをし続けて主導権を握っていた。だが、サッカーはゴールを決めたチームが勝つスポーツ。ボールを保持しながらもエリア内に入ることができずにいたベティスよりも、数少ないチャンスをしっかりとものにしたレバンテが、気づいたときには勝利の女神の笑みを勝ち得ていた。
レバンテ戦の後半66分からピッチに立った乾貴士(ベティス)
乾がピッチに立ったのは後半66分。ウィリアム・カルバーリョと代わり、4枚を横に並べた中盤の真ん中左でプレーをした。プレシーズンマッチでもプレーしたことのないポジションだったが、試合後のミックスゾーンで、自らそのポジションでプレーしたいとスタッフに直訴したことを明らかにした。
「前でもいいんですけど、(相手DFを)背負ったりしないといけないので、それは俺にはできないかな、と。そうなると厳しくなってくる。そういうところ以外にも、interior(インテリオール=中央の攻撃的MF)のポジションを勉強していきたいというのがある。30歳にもなりましたし、そういうところでのほうが、自分のこれから先を考えるといいんじゃないか、と。それも話をしたし、自分が一番生きるポジションじゃないかなと思う」
この日、ベティスの背番号8番が掴んだ一番のチャンスは89分だった。ジュニオール・フィルポがつないだボールに、エリア内でシュートを放った。W杯セネガル戦のゴールを再現するかのようなチャンスではあったが、レバンテのGKが必死のセービングを見せてゴールになることを許さず、乾のベティス第1号ゴールはお預けとなった。
だが、乾のプレーはベティスサポーターの心を少しずつ掴み始めているようだ。ボールキープ力、正確なパス、積極的なチャレンジを見せると、スタンドからは何度も感嘆のどよめきがこぼれてきた。それは「日本人にしては、アジア人にしてはうまいな」というような偏見からきた第一印象である可能性もある。だが、何の力もない選手には興味を示すようなアクションを見せることはないはずだ。
「いや、(歓声は)あんまりわからなかった。ただ、得点に結びつければもっと喜んでもらえる。それを早くやりたいなと思っている」
第3節にはセビージャとのセビージャダービーを控えているベティス。勢いに乗ってぶつかるためにも、次節のアラベス戦では勝利がほしいところだ。
「連敗だけは何としてもしたくないので、みんなで頑張ってやっていくしかないと思う。自分自身も、今日はスタメンでは出られなかったけど、出られるように練習からアピールしていきたい」
思い描いたようなスタートを見せることができなかった乾とベティス。だが、結論を出すまでには十分すぎるほど時間が残っている。まずはアウェーのアラベス戦だ、乾がエイバルに所属していた昨シーズン、アウェー遠征のたびに訪れた空港があるバスク州のクラブでの試合で、レバンテ戦の敗戦を払拭するような勝利を手にしたい。