リーガ・エスパニョーラで4年目のシーズンを迎える乾貴士。プレシーズンマッチ、フロジノーネ(イタリア)戦に出場した乾貴士 ロシアW杯での活躍により、日本でもその名をサッカーファン以外にも知られようになった日本代表MFにかかる期待は、新天…

 リーガ・エスパニョーラで4年目のシーズンを迎える乾貴士。



プレシーズンマッチ、フロジノーネ(イタリア)戦に出場した乾貴士

 ロシアW杯での活躍により、日本でもその名をサッカーファン以外にも知られようになった日本代表MFにかかる期待は、新天地ベティスでも大きい。それを証明するように、本拠地ベニト・ビジャマリンで行なわれた2度目の入団会見には、約4000人のサポーターが集まった。

 昨シーズンまでプレーしたエイバルのスタジアムの収容人数は7083人。そのおよそ半分ものサポーターが駆けつけたのだから、乾にとってもサプライズだったはずだ。それはピッチに姿を現したとき、ちょっと驚いたような表情を見せたことでもわかった。サポーターは、乾がリフティングでボールに触れるたびにリズムを取るようにコールをかけ、トリックプレーを見せると大きな歓声をあげた。

 乾の獲得が決まると、地元紙はセビージャに住む日本人とスペイン人のカップルを一面で紹介。「最初はアンダルシアの生活には驚きがあって大変だろうけど、その後には幸せが待っている」と、セビージャ在住の”先輩”の体験談を伝えるなど、暖かく迎えていた。

 スペインでも1、2を争う熱狂的なサポーターで知られるベティス。その熱さにより、時には一部のサポーターが、サッカーではあってはならない暴力沙汰などの問題を起こすこともあるほどだ。

 ただし、多くのサポーターは純粋にクラブに忠誠を誓っている。だからこそ、選手に対する要求は他のクラブよりも高く、乾が感じるプレッシャーは、エイバルのときには感じられなかったほど大きなものになるはずだ。

 攻撃的な選手に対する要求は、もちろん、ゴールに関与するプレーだ。乾は助っ人外国人なのだから、他のクラブでも同じようにゴールを要求されるが、ベティスではエイバルのときのように”優しく見守られる”ということはない。悠長に待ってくれることもない。早くゴールを決められるかどうかが、新天地での成功の鍵となるだろう。

 そのためにも必要なのはチームへの順応だ。SNSを見る限り、ロッカールームへの適応は問題なく進んでいるようだ。

 食事の際にチームメートから「日本語の歌を歌って」と要求されて、ドラえもんを歌って笑いをとったり、練習中にホアキン・サンチェスに絡まれて冗談を返したり。キケ・セティエン監督の「いつも笑顔のいい人物だ」という乾評を見ても、スペインサッカーで大事な「ロッカールームへの適応」をうまくやっていることが感じられる。

 FWのロレン・モロンも、「嘘だと思うだろうけど、たくさん話しをしているよ。実際もっと言語が問題になるかと思ったけど、乾にはみんな驚かされている。本当に面白い選手だよ。こんなに話すなんて思いもしなかった」と語っている。

 ただ、もうひとつの大事な要素であるセティエン監督の戦術の理解に関しては、少し時間がかかりそうだ。

 プレシーズンマッチで、乾はエイバルでプレーしていた左サイドではなく、2トップの一角としてトップ下ともいえるセカンドストライカーの位置でプレーした。慣れ親しんだポジションではなく、新しいポジションで新しい役割を与えられたわけで、これにすぐ順応するのは容易なことではないだろう。

 また、ベティスはエイバル以上の厚い選手層を誇る。定位置争いはこれまで以上に激しいものになるだろうし、ライバルと差をつけるためにも、数字として残るパフォーマンスを早いうちに見せたいところだ。

 W杯で活躍したことにより、「期待度が上がってしまった」と話す乾。だが、情熱と太陽に満ち溢れたセビージャでも、日本が誇るサッカー小僧がやることは変わらない。それはW杯で日本に喜びをもたらしたようなそのプレーで、セビージャサポーターを歓喜で包むことだ。

 これまでにない大きな期待とプレッシャーがかかるリーガ・エスパニョーラ4年目の戦いが、今日、始まる。