全体練習が終わった後、ハンドダミーを抱えたスコット・ハンセン コーチ相手に、肩でのヒットをくり返していた。
 今週月曜日の東京・辰巳。サンウルブズのFL布巻峻介は、黙々とタックルの動きをチェックした。

「ジャパンAや久しぶりにサンウルブズでプレーしたとき(5月下旬から6月上旬にかけてのレベルズ戦、ブランビーズ戦)から、ちょっと気になるところがあったので。最近、自分の本来イメージしているものとズレがあるように感じていました。タックルやブレイクダウンで、パワーをしっかり相手に伝えられていないようだった。そこを直そうと思って」
 芯を射貫く、重いタックルが持ち味の男は、哲学者のように話した。

 日本代表としては、先の3試合のテストマッチシリーズで、最終戦のジョージア戦の前半40分だけ出場時間が与えられた。
「最後のチャンスというぐらいの気持ちでプレーしました」
 しかし、雨の中での試合ということもあり、両チームともキックを多用する攻防に。バックローとしては見せ場に絡める機会は満足ではなかった。

 だから、できることに集中した。
「ボールがこぼれることが多かったので、そこへの集中力を上げることにフォーカスしました。そういう場面から離れた場所にいるときは、その次のパスへの対応を考えた」
 深くラグビーを知る。
 ともにプレーする仲間こそよく知る、プレーヤーズ・プレーヤーだ。

 本人が「ラストチャンス」と口にするように、現在はサンウルブズでも、日本代表でも、レギュラー組を追うグループにいる。
 なかなか巡ってこない出場機会に、フラストレーションがたまってもおかしくない。
 しかし布巻は、チームマンに徹して準備を重ねた。
「ジャッカルやタックルに必要な筋肉を鍛えたりしていました。試合に出ないときにどう行動するか。ノンメンバーとしてやるべきことをやって、常に準備だけはしておかないといけない」

 自分と似たタイプの西川征克(サントリー)の存在も気にならないことはないだろう。
 しかし、穏やかに話す。
「西川さんはジャッカルがうまいですねえ。タックルもいいし、スキルもある。争う立場ではあるけど、その人柄に、応援したくなるところがある」
 落ち着いた態度から強い意志が伝わる。

 テストマッチ期間を、「チームとしては(ジョージアを)完封といういい形で終われた。コンディションが悪い中でも良い結果が残せた。個人的には、良くも悪くもない感じですね。ジョージア戦(の前半は)コンタクトの場面が少なく、キックチェイスが多かった。ただ、そういう展開になるのは分かっていたことなので仕方ない」とレビューした。
 巡ってきたチャンスに精一杯を尽くす。その気持ちがぶれることはない。

 サンウルブズの試合も、今季は残すところ3試合になった。
 アピールできるチャンスの場を迎えるにあたり、「スーパーラグビーとテストマッチは違う。スーパーラグビーの方がアタックバリエーションは増えるから、頭を切り替える」と言った。
「体を張る。抜かれたり、ミスするリスクを背負っても前に出ようと思う。それくらいの気持ちでプレーして、(スーパーラグビーは)ちょうどいい」
 6月27日に発表された、 ブルズ戦へ向けてのシンガポール遠征メンバーに名を連ねた。布巻峻介はチームのために戦うことで、自分を輝かせる。