やはり、桜のジャージーの12番は「ハル」が似合う――。そう思ったファンも多かったはずだ。

 6月23日、世界ランキング11位のラグビー日本代表は、フィジカルに長けた「スクラム強国」ジョージア代表(同12位)を愛知・トヨタスタジアムに迎えた。

 6月の代表月間に入り、日本代表はイタリア代表と2度対戦して1勝1敗。来年のラグビーワールドカップを想定し、ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)と選手たちは6月シリーズを勝ち越すべく、「最終決戦」としてジョージア代表戦に臨んだ。




迫力のあるプレーでチームに新しい風を送り込んだ立川理道

 対戦成績は4勝1敗とリード。ただ、過去にジョージア代表とは何度も接戦を演じてきた。しかしながら今回、6度目の対戦では初めて失点を許さず、28-0と完勝。2016年の秋にジョセフHCが就任して以来、アジア勢以外との対戦では初めてとなる零封を飾った。

 そしてこの試合、満を持して登場した男がいる。それは、2015年W杯で中軸として存在感を示した「ハル」こと立川理道(たてかわ・はるみち)だ。

 現在28歳の立川はすでに54キャップを誇るも、ここ数年は小さなケガを繰り返し、今年4月には右ひざ半月板を手術。その影響もあって、イタリア代表との2連戦ではベンチ外だった。だが今回のジョージア代表戦では、昨年11月のフランス代表戦以来となる「12番」のインサイドCTB(センター)で先発の座を射止めた。

 2016年の秋は共同キャプテンも務めた立川に対し、ジョセフHCは「複数のポジションができ、リーダーでもある」と信頼も厚い。惜敗した先週のイタリア戦から先発メンバーを7人替えた指揮官は、「ゲームにインパクトを与えて、国際舞台で通用することをアピールしてほしい」と、立川らフレッシュな選手に期待を寄せた。

 立川も半年ぶりの代表戦ということで、試合前から気合いが入っていた。

「状態はすごいいい。うれしい気持ちもありますし、あとはプレーで見せるだけ。責任あるプレーを80分したい」

 また、ポジション争いという点でも、これが大事な試合になることは自覚していた。ラファエレ ティモシーや中村亮土(りょうと)が前の試合でいいパフォーマンスをしていたことも承知しており、「自分にプレッシャーをかけながらプレーしたい」と、経験豊富な選手らしく静かに闘志を燃やしていた。

 雨の降るなか、日本代表はゲームプラン通りにSO(スタンドオフ)やSH(スクラムハーフ)がキックで展開。合計24回も敵陣に蹴り込み、たとえ相手にボールを渡しても前に出るディフェンスでプレッシャーをかけ続けた。さらに、相手の土俵であるスクラムでも押し込む場面が多々あり、モールでもジョージア代表の攻撃を何度も阻止。終始、試合をコントロールできたことが勝利の要因となった。

 そのようなフィジカルバトルとなった試合で、立川は生き生きと躍動した。2015年のW杯で南アフリカ代表を撃破したときを彷彿させるプレーを見せたのだ。ボールキャリア17回はチーム最多、タックルもトップタイの12回。身体を張ったプレーでチームの勝利に大きく貢献した。

 この6月のテストマッチ3連戦、日本代表は「アタックの戦術=ポジショニング」を少し替えて臨んでいた。FWとBKが一体となった4つのユニット(シェイプ)を、グラウンドの70メートルの幅いっぱいに配置させた「ポッド・アタック」を採用。従来、CTBは左右の端に配置するが、インサイドCTBは大外から数えて3つ目――つまりフィールドの真ん中のユニットに入り、FWと一緒にシェイプを形成するようになっていた。

 その結果、SHから見て浅めの場所に立つインサイドCTBは、自らのラン、横に並んだFWへのパス、そして裏のSOへのパスを状況によって選択できるようなる。また、CTBがFWの替わりとしてプレーすることにより、大外に立つFWの数を従来のひとりからふたりに増やせ、相手とのミスマッチを狙う効果もあった。このジョージア代表戦ではFL(フランカー)リーチ マイケル、No.8(ナンバーエイト)アマナキ・レレィ・マフィ、そしてWTB(ウイング)の3人が外に並び、相手の脅威になっていた。

 重要な役割を担った立川は、その効果をこのように語る。

「(12番が)FWとBKの間に入ることで、ボールキャリーの回数も多くなってくるし、スキルも求められるので、自分の強みが活かせると思っていました。相手ディフェンスにギャップも少しあったので、そこを狙っていきました」

 雨でボールが濡れていたため、立川は堅実なプレーを選択すべくランの回数を増やした。それがアタックに効果的なリズムを生み、トライを奪うことにも成功している。ジョージア代表戦3つ目のトライは、まさに縦を突いた立川のランがキッカケとなった。

 また、ジョセフHCが「(ジョージア代表戦の)勝因をひとつ上げるならディフェンス」と振り返ったように、立川もチームのディフェンス力向上を実感したという。

「ゼロで抑えることができたことでもわかるように、システムを信じてやってきたことがディフェンスの成長につながっている。この2~3年、失点すると勝ち切れない試合が多かったが、勝利したイタリア代表戦、そしてジョージア代表戦と、最後に勝ち切れる力がついた」

 昨秋から日本代表は世界的強豪チームのハリケーンズ(ニュージーランド)のジョン・プラムツリー・ディフェンスコーチを招聘し、積極的に前に出る組織的ディフェンスを採用してきた。イタリア代表戦の2試合ではタックルの成功率が80%前後だったことを踏まえ、ジョージア代表戦はチーム目標を85%に設定。すると3試合目では、90%という高い数値を記録した。

 この成果は、今年からジョセフHCがサンウルブズの指揮官を兼任したことも大きいだろう。サンウルブズでもほぼ同じシステムを採用し、この6月のテストマッチに向けて準備してきたことが功を奏した。

「自分たちが優位なときは、ディフェンスラインのスピードを上げることが大前提。1対1が多くなるなか、タックルで倒していくことが大事。周りとのコミュニケーションもよくなって、個々の役割もわかってきたので、チームとしてもいい動きになってきた」(立川)

 6月の代表シリーズは2勝1敗という結果で幕を下ろした。立川は3試合をこう総括する。

「自分たちの形が見えてきた。メンタルが大事なラグビーで、1戦目に勝ち切って、2戦目で惜敗して、3戦目で修正できたことは自信を持っていい」

 ワールドカップ本番まで、450日あまり――。日本代表はチームとして、そして立川自身も確実な進歩を遂げた6月の3連戦となった。