東京五輪まであと2年。これから先、代表権獲得に向けた戦いは本格化していくことが予想されます。そこで本企画「サキドリ!ROAD TO 2020」では、今後の活躍が期待される注目アスリートにインタビュー。競技の魅力はもちろん、実際に各競技を楽…

 東京五輪まであと2年。これから先、代表権獲得に向けた戦いは本格化していくことが予想されます。そこで本企画「サキドリ!ROAD TO 2020」では、今後の活躍が期待される注目アスリートにインタビュー。競技の魅力はもちろん、実際に各競技を楽しんでいる人へのヒントになる上達のコツやヒントに迫ります。

 第4回に登場するのは、東京五輪で新種目となった空手・形の清水希容選手。日本選手権5連覇中、世界選手権2連覇中、世界最高峰のワールドゲームズ2017でも優勝を飾るなど、金メダルに近い存在のひとりとして輝きを放っています。

後編では、そんな清水選手の現在について話を伺いました。どのようなことを考えて空手と向き合っているのでしょうか。

▼前編はこちら

空手家・清水希容「大きな敗北があったから、勝利にこだわれるようになった」(前編)│サキドリ!ROAD TO 2020 #4 | トレーニング×スポーツ『MELOS』

常に課題があって、それをどうクリアするかを考えている

——全日本選手権5連覇、世界選手権2連覇、ワールドゲームズ2017でも優勝と、はたから見たら敵なしのようにも感じられます。

そんなことないですよ。本当に大会毎に課題があって、それにどうやって取り組むかを考えながら続けているうちに年数が経っていただけという感覚です。それに勝利数を積み重ねるよりも、自分がどれだけ進化しているかを大切にしたいなと思っていて。そもそも、試合で自分の理想通りにできることってほとんどないんですね。だからこそ、次はここを改善していこうという気持ちになるし、少しでも自分の理想に近づけるために練習に取り組んでいます。

——現在はどのような課題に取り組んでいるんですか?

2016年の世界選手権が終わってからは自分の形をあらためて作り直していて。これから先、もっとよくなる自信はあるので、どうやって磨いていくかを試行錯誤している状態です。

——一度完成していた形を崩しているということですか?

そうですね。自分の特徴をあえて殺してるってところです(笑)。でも、苦手なところは克服できたので、次は自分の良さを出す段階かなと思っています。

——日々の練習で形の練習以外に取り組んでいることはありますか?

主に取り組んでいるのはメンタルトレーニングです。特に大会の期間になると試合が立て続けにあるので、いかに気持ちを持続させながら臨むかは大切にしています。あと、フィギュアだったり体操だったり、フォームが美しい他競技を見て参考にするようにしています。

——どのようなところを参考にしているのですか?

基本は魅せ方ですね。あとは選手のインタビューとかもすごく勉強になります。たとえば、体操の内村選手はいろんなものを抱えて戦っていらっしゃるし、表現に関してもすごくいろんなことを考えてやっている気がしていて。そういう選手から得るものがすごく多いなと思います。

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——表現するという部分では共通していますもんね。

少し前に能楽師の野村萬斎さんとご一緒する機会があったんですけど、別格だなって思ったんです。話す内容が素晴らしいのはもちろんなんですけど、空気感だったり、演技に言葉で語る以上のものがあって。そういうところでも勉強になることがありますね。

——“人に魅せる”という意識は年々高まっていたりするんですか?

東京五輪で空手の形が競技に選ばれたことで空手を始める人口も増えていて、私の試合を見にきてくださる方々も増えていて。だからこそ、自分も形を見て欲しいという思いは強くなっています。ただ、注目度が増している分、期待度も想像以上に上がっているので、それに応えないといけないなと思いながら日々の練習に取り組んでいます。

——それはものすごいプレッシャーになりそうですね。

今はそういったプレッシャーがありつつも、新しいことにチャレンジしているので、楽しく空手ができている時期なのかなって思っています。2020年までこの気持ちをキープしていきたいという想いがありますね。

世界選手権3連覇、そして東京五輪へ

——これからの数年は長いようで短そうです。

競技者にとってはすごく過酷な数年になると思います。出場する選手は世界ランキングのポイントで決まるので、2020年までずっと大会に出場を続けないといけないので。

——それはなかなか過酷ですね。

特にコンディションを維持するのがとても大変だなって。特に試合が連戦になるときもあるので、体力勝負になる気がします。大体2週間に1度のペースで試合に出場しているので。だから、調子が悪いときでも勝てるくらいの実力をつけなきゃいけないなって思っています。

——当面の目標はどこに定めているんですか?

まずは今年の世界選手権に向けて新しい自分に出会えるようにしたいですね。そこで3連覇ができれば、自ずと東京五輪への道が拓けてくるのかなって。あと、私の形を見たいと思ってくれる人を1人でも多く増やしていきたいので、より魅せる試合というものも追求していきたいなと思っています。

[プロフィール]
清水希容(しみず・きよう)
1993年12月7日生まれ、大阪府出身。ミキハウス所属。小学3年生で空手を始め、高校3年生のインターハイで優勝したのを皮切りに、日本選手権5連覇、世界選手権2連覇、ワールドゲームズ2017優勝などの戦績を上げる。

<Text:村上広大/Photo:奥村元洋>