いま、ひとりのHOとしてピッチに立っている。
 でも、いち選手以上の影響力がある。
 キャプテンでもなく、リーダーグループにも名前がない堀江翔太が、テストシリーズ開幕を前に充実している。

 6月9日に大分でイタリア代表とのテストマッチを戦うジャパン。堀江は先発で2番を背負う。
 32歳。55キャップを持つ。平常心で大事な第1テストの展望を口にした。
「試合自体、FWがカギを握っていると思っています。スクラム、ラインアウトで安定した球を出し、セットプレーでプレッシャーをかけられるか。そこで勝敗が分かれる」
 6月2日、ヤマハ発動機がイタリア選抜と戦った試合を見た。
「ヤマハもプレッシャーをかけられるところはかけていましたが、(途中から)向こうのテンポやリズムに合わせてしまった。同じことをしないようにします」
 80分、自分たちのやってきたことにフォーカスし続けるつもりだ。

 ただ、相手があることだから駆け引きの重要さも分かっている。
「自分たちが積み上げてきたものを出せば、うまいことやれる自信はあります。ただ、相手が僕らに見せていないものを出してきたときに、修正し、反応しないといけない」
 欧州の各国代表チームは、スクラムにとことんこだわってくる。
「力尽くでも押してくる。それくらいのプライドを持っている相手なので、そこでやられないようにしないと」
 理屈でない部分の勝負でも、一歩も引くつもりはない。

 キャプテンやリーダーの肩書きが取れ、リラックスできている。
 そして、その精神状態が高い集中力を呼ぶ。
「自分のことにフォーカスしつつ、チームにもコミットしている感じです。いちプレーヤーになったとは言っても、ふらふらしてるわけでなく、(経験値の高い選手として)やれることはやっているつもり」
 そのバランスかとてもいい。メンタルの充実が、パフォーマンスの上昇も呼んでいる。

 その状態の良さは、サンウルブズでのプレーにもあらわれていた。
 如実なのが、タックルなど、コンタクト時のパワーアップだ。
「そこは常に上げていきたいところです」
 自身でも意識している部分だ。
 充実を支えてくれている人がいる。パーソナルトレーナーの佐藤義人さんだ。
 2015年のワールドカップへ向かう道の途中、チームスタッフに加わってくれたその人は、いつも自分を高みに導いてくれる。

「コンタクトの場面での体の使い方を教わり、もっとよくなれると思っています。(2015年の)ワールドカップぐらいから、背中の(力の)入れ具合や、タックルが低くなりすぎないようにしているんです」
 ソフトタックルをしてしまったとき、背中をうまく使えていない自分がいる。
「タックルは、踏み込み足も大事ですが、背中の使い方で、インパクトの強さがまったく違うんです。そして、低く入ろうとし過ぎると力が前に伝わらない」
 自分の強い姿勢で大きなパワーを生むことを意識する。

 佐藤トレーナーと出会う前の20代より、現在の方がフィジカルが強くなっている。
 堀江が意識しているのは、背中のインナーマッスルだ。そこを鍛え、使うことで、大きなインパクトを生めるようになった。
「海外の選手や(ジャパンやサンウルブズの)外国人選手たちは、それをナチュラルに使っていたりするのですが、そこを意識して鍛えたら、柔軟性も高まるし、スクラムも助けてくれるんです。胸を張るというか、その部分を縮めるのが大きなパワーを生むコツ」
 長く、試行錯誤を重ねて見つけた。まずはイタリア、ジョージアをやっつけて、2019年、そしてその先も進化し続けたい。

 イタリア戦のラインアウトについては、こう展望した。
「テンポも高さも大事。(日本の方がイタリアより)低い分、どこかがブレるとやられる」
 FWの出来がカギ。そう分かっていても気負うことのない男の存在は、チームにとって宝だ。
 背中で周囲を引っ張る男は、背中で魅せるプレーでもチームを勝利に導く。
 いい年齢の重ね方をしている。