首都圏から近く、豊かな自然や温泉のあるエリアとして、多くの観光客が訪れる伊豆半島。「伊豆半島ジオパーク」が世界ジオパークに認定されたほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは自転車競技の会場に指定されるなど、注目が集まっています。

 そんな伊豆半島が「サイクリストの聖地」を目指し、E-BIKE(電動アシスト自転車)を用いて新たなプロジェクトをスタートしました。5月25日のプレス向けイベントでその全容が発表されましたので、詳しくご紹介します。イベント後半ではE-BIKEの試乗も行ってきましたので、その模様と合わせてご覧ください。

伊豆半島をE-BIKEのメッカに! その魅力と戦略とは

 E-BIKEとは、高性能の電動アシストが付いたスポーツバイク(自転車)のこと。道の駅「伊豆ゲートウェイ函南」(静岡県田方郡函南町塚本887-1)を拠点にE-BIKEのレンタルを行い、伊豆半島全域でサイクリングが楽しめる体制を整備していくそうです。イベント冒頭ではプロジェクトの推進を担う加和太建設株式会社の代表・河田亮一氏がその目的を語りました。

「私たちは、世界の注目する街づくりを目指し取り組んできました。その一環として、道の駅『伊豆ゲートウェイ函南』を中心に、伊豆半島へスポーツバイクの文化を広めていきます。東京オリンピックでは伊豆で自転車競技が開催されますが、これを一過性のものとせず、文化として定着させていきたいという考えです。伊豆半島は土地の起伏が激しく、整備されていない地域が多くあります。では、その中でどんなことができるのか。そう考えたとき、私はE-BIKE普及とそれを活用した魅力の発信を行ってみたいと思いました。サイクリングを用いた街づくりとしては後発ですが、だからこそE-BIKEという他とは異なる視点で、伊豆半島をE-BIKEのメッカにしていきたいと考えています」

 発表では「伊豆E-BIKE充電ネットワーク 実証実験コンソーシアム」を銘打ち、具体的なプロジェクトの内容について、資料をもとに同社・事業企画室の解説が行われました。登り坂に強く、また最大140kmという長距離走行ができるE-BIKEは、起伏の激しい伊豆半島でのサイクリングに適するとのこと。しかしそれでも、1番の課題はE-BIKEの走行距離にあります。

 たとえば三島から土肥峠を通って西伊豆の恋人岬まで行き、再び戻ってくれば総距離は約120km。さらに峠のように起伏の激しい場所では電力も多く消費するため、1度の充電では不安があるでしょう。そこで本プロジェクトでは、伊豆の各地に充電ネットワークを構築。まずは西伊豆を中心に10か所の充電拠点を設けます。以下の流れで無料充電サービスを使用すれば、長距離のサイクリングも問題なく楽しめるというわけです。

<充電の流れ>
1.各施設で飲食・買い物などの利用
2.利用申し込み手続き(免責事項等の承諾書、利用アンケートの回答)
3.無料充電サービスの利用

 なお、発表時点で各拠点に配備されているのは、シマノ製アシストユニットSTEPS用の充電器のみ。他社製ユニットは充電器の持ち込みにより利用できます。充電器自体はさほど重くないので、バックパックに入れるなどすれば問題ないでしょう。以後はこの拠点が中伊豆や東伊豆にも広げられ、伊豆半島全域をE-BIKEで回れるようになる見込みです。

 道の駅「伊豆ゲートウェイ函南」を拠点とし、伊豆をサイクリストの聖地へ。E-BIKEを軸として交流人口を増やすことで、定住人口の増加、また伊豆地域全体の活性化に繋げていきたいという狙いがあるようです。たしかに「E-BIKEといえば伊豆」というブランドが確立されれば、観光客などでも新たな層からの誘致が期待できるでしょう。そしてサイクリングを通じ、伊豆半島の持つ自然資源の価値がさらに高まるような気がします。

急坂も座って走れる! E-BIKEの乗り心地を体験

 当日、会場である道の駅「伊豆ゲートウェイ函南」には、各社のE-BIKEがずらりと並びました。そのそうそうたる顔ぶれに、自転車好きな記者の目は釘づけ。かくいう私も、1台1台じっくり拝見しました。

 今回、発表会後にE -BIKEの試乗ができるということで、こちらも参加してきました。選んだのは6月11日発売予定のYAMAHA「YPJ-ER」。乗り心地を比較するため、普段から乗っているのと同じロードバイク型にしました。

 とはいえ、実は私もE-BIKEに乗るのは初めて。川沿いから熱函街道を通り、充電拠点の1つである「酪農王国オラッチェ」へ。そして、再び戻ってくるという全長20kmの実走体験です。

 天候に恵まれたこともあり、サイクリングをしながら素晴らしい自然を満喫できました。周囲を山に囲まれ、緑あふれる中を自転車で進むのは最高です。今回は訪れませんでしたが、海好きな方は駿河湾などへ行ってみるのもよいでしょう。E-BIKEの取材であることを忘れてしまうほど、雄大な景色に見とれてしまいました。

 E-BIKEが本領を発揮するのは、なんといっても登り坂。むしろE-BIKEに乗る楽しみといってもよいかもしれません。上り勾配が急なほど電動アシストがフル稼働し、まるで背中を押されているかのように感じます。実際、通常のロードバイクならダンシングするような坂道も、座ったまま快適に走れました。坂道の途中で1度アシストを切ってみたのですが、その違いにただ驚くばかりです。

 ちなみに電動アシストの走行モードは、強度に応じて「+ECO」「ECO」「STANDARD」「HIGH」の4段階。これはメーカーにより異なりますが、通常のギアを合わせ最適なモードを選択すれば、より快適性が増します。なお、充電残量や走行距離、カロリー、速度なども、ハンドルに取り付けられたモニターで確認できました。

 折返しの目的地である「酪農王国オラッチェ」に到着。バイクラックが屋外にあり、店内では買い物や食事ができます。今回のコースでは坂道を含めた約10km。休憩を入れるにはほどよい距離でした。

 施設利用と承諾書、アンケート回答を行えば、受付でバッテリーを充電してもらえます。これなら、充電方法が分からない初心者でも安心。ちなみにここまでの走行を終え、みなさんバッテリー残量は15%ほど減っていたようです。

 なお、アンケートは個人情報を含まず、2回目からは簡易的なものになるとのこと。QRコードをスマホで読み取って行うもので、各充電拠点で配布されています。

 試乗に参加された方も、自転車の経験値はさまざま。しかし誰もが、周囲の自然、そしてE-BIKEの快適さを楽しみながら、笑顔でサイクリングしていました。気温が高く約20kmも走れば汗だくでしたが、疲労度はそれほど高くありません。年齢・性別を問わずサイクリングを楽しめる。これこそ、E-BIKEが持つ最大の魅力なのでしょう。

 年齢を重ねて筋力・体力が衰えてきても、これまでと同じようにサイクリングが楽しめる。あるいはサイクリストが、自分はロードバイク、自転車の経験がない家族や友人、恋人にはE-BIKEに乗ってもらい、一緒にサイクリングを満喫する。実際にE-BIKEへ試乗する中で、そんなイメージが浮かんできました。

 伊豆半島は、首都圏からのアクセスや周囲の自然環境など、まさにサイクリングに最適かつ贅沢なロケーションです。拠点となっている道の駅「伊豆ゲートウェイ函南」には飲食店や土産店などもありますので、観光がてら、ぜひE-BIKEとサイクリングを楽しみに訪れてみてください。

[筆者プロフィール]
三河賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。またトレーニングサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室、ランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。3児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表。
【HP】http://www.run-writer.com

<Text & Photo:三河賢文>