春から「紫紺のジャージー」の勢いが止まらない――。昨年度は大学選手権で帝京大に惜しくも20-21と敗れ、準優勝に終わった明治大学ラグビー部。今年は5年間指揮を執っていた丹羽政彦監督(現チームアドバイザー)が退任し、昨年からヘッドコーチを務めていた元日本代表&サントリー、そして明治大時代にキャプテン経験もあるOBの田中澄憲(きよのり)が監督へと昇格した。



明治大の新キャプテンに指名された福田健太

 新体制で臨んだ4月30日の春季大会の初戦。明治大は選手権9連覇中の王者・帝京大と対戦し、終了間際のトライで17-14と逆転勝利を収める。明治大が帝京大に公式戦で勝利したのは、実に8年ぶりのことだ。田中新監督は「8年前の帝京に勝つのと、今の帝京に勝つのでは価値が全然違います。今の帝京にはまぐれではなく、しっかりプレーしないと勝てない。チームとしてスタンダードが上がっている」と語り、幸先のいいスタートを切った。

 さらに明治大は、5月6日に行なわれた東海大戦も62-33と勝利。前半だけで8トライを挙げて4年ぶりに勝ち星を収めた。続いて5月13日には流通経済大に61-14で快勝し、強豪相手に3連勝を達成した。

「紫紺の軍団」の充実ぶりをライバルたちに見せつけた今年の明治大を引っ張っているのは、キャプテンのSH(スクラムハーフ)福田健太(4年)である。茨城の名門・茗渓(めいけい)学園中高出身で、スキルの高い攻撃的なプレーが彼の持ち味だ。帝京大戦ではディフェンスの強い相手に対して冷静にゲームをコントロールし、東海大戦では素早い飛ばしパスでトライを演出。エネルギー溢れるプレーでチームを牽引していた。

 常勝軍団の帝京大に勝てたことについて、福田は喜びながらも冷静に振り返る。

「(大学ラグビーの)本番は秋ですが、帝京大学に勝てたことは、やってきたこと、積み上げてきたことが間違いではないと証明できました。でも、帝京大学も秋には仕上げてくる。慢心したらやられると思うので、勝ったことはひとつの自信にして、気を引き締めてやりたい」

 新チームとなった今季、田中監督はコーチ陣と話し合って福田をキャプテンに指名した。その理由を田中監督に尋ねると、「80分間、試合に出られるから(選びました)。クレバーだし、メンタル面も強気だし、嫌なこともしっかりと言える。いいリーダーだと思います。チーム引っ張ってほしい」と期待を込める。

 それに対して福田も、現役時代に同じポジションだった田中監督に全幅の信頼を寄せている。

「キヨさん(田中監督)は朝の5時半くらいに来て、夜遅くまで分析などをしている。そういった姿を見ていますし、キヨさんの言っていることは筋が通っている。信じてついていけば、日本一が取れると思います」

 福田には3年時の秋、今でも忘れられない出来事があった。

 田中がヘッドコーチに就任した年に、それまで控え中心だった福田はレギュラーの座を射止めた。さらに学年リーダーやアタックリーダーも任され、春から全試合に先発する。ところが9月、同志社大との定期戦で先発からベンチメンバーに落とされてしまったのだ。

「(3年の)春からずっと試合に出ていたのですが、後に(慢心が)態度に出てしまった。それをキヨさんに察せられ、コーチ部屋に呼ばれてラグビーに対する根本的な姿勢などを指摘されて……。自分のなかで、グサッと刺さりました」

 そこから、福田は変わった。それまで周りの目を気にしていた部分もあったが、気にせずに全力でフィットネストレーニングと向き合い、試合前も相手の分析をしっかりと行なうようになったという。福田は「(キヨさんに)そのままずっとやり続けろと言われましたね。分岐点となりました」と振り返る。

 田中監督は大きく変わった福田キャプテンを支えるため、今年から「リーダーズグループ」を構築した。昨年まで学年別にリーダーを決めていたが、今年からは福田キャプテンだけでなく、4年のFW4人・BK4人をリーダーに指名し、その下に学年やポジションに関係なく選手を配置。練習だけでなく掃除など日々の行動を各リーダーにチェックさせて、より深いコミュニケーションの活性化を図っている。

「キャプテンのプライドや責任はありますが、(その立場を)考え過ぎて自分のプレーが出せないと、キヨさんが僕をキャプテンに指名した意味がなくなる。周りに支えてくれる人がいますし、リーダーたちが(他の部員の)面倒を見てくれているので、彼らを頼りながら自分のプレーをぶれずにやっていきたい」

 新チーム最初のミーティングで、明治大は今年度のターゲットを「2019年1月6日の大学選手権決勝で勝利すること」に定めた。そして、スローガンは選手たちだけで3週間ほど話し合い、「イクシード(EXCEED/超える)」に決めたという。

「シーズンを通して、よくないときにどう乗り超えるか――。昨年度は準優勝だったので(それを超えて大学)日本一という目標にも合っているし、日々の練習にも通じます。すべての面で『イクシード』したい」

 大学ラグビーシーズンは始まったばかりだが、10連覇を狙う帝京大を破った強さは本物だ。今年度、優勝候補の一校であることは間違いない。

「キヨさんが大学生のとき以来、明治大は優勝していないですし、ポジションも同じで性格も(お互いに)勝ち気ですし、なんか縁を感じますね(苦笑)」

 田中監督と福田キャプテンという新旧SHコンビで、今年こそ紫紺のジャージーが22年ぶりの大学王者に返り咲くことができるか――。