昨年は清宮幸太郎(早稲田実→日本ハム)という春の時点でドラフト1位確実の超目玉選手がいたが、今回のセンバツでは「そこまでの大物はいない」というのがスカウトたちの見解だった。 そんな中、高い評価を集めたのが大阪桐蔭の藤原恭大(きょうた)…

 昨年は清宮幸太郎(早稲田実→日本ハム)という春の時点でドラフト1位確実の超目玉選手がいたが、今回のセンバツでは「そこまでの大物はいない」というのがスカウトたちの見解だった。

 そんな中、高い評価を集めたのが大阪桐蔭の藤原恭大(きょうた)と根尾昂(あきら)のふたり。昨年、2年生ながらU-18日本代表で活躍した藤原は、今大会は右ヒザのケガで本来の1番ではなく4番での出場だったが、実力の片鱗を見せた。



「1位指名される選手」とスカウトから高い評価を受けた大阪桐蔭の藤原恭太

 初戦の伊万里(佐賀)戦で二塁打を放ったときの二塁到達タイムが7秒96。故障を感じさせないスピードを披露した。

「スピード、パワー、コンタクト能力……すべて備わっている。向かっていく姿勢や表情もいいし、間違いなくプロで使える選手。おそらく1位で消えるでしょう」(パ・リーグ球団スカウトA氏)

「思い切りよくスイングできるし、変なクセがない。タイミングを取るのもうまい。高校生ではトップの評価。プロでもレギュラーを獲るのは間違いない選手」(セ・リーグ球団スカウトB氏)

 次々と賞賛の言葉が並ぶが、こんな声もある。

「外野手で左打ちというのがねぇ……。どこの球団も左打ちの外野手は飽和状態。補強ポイントとしての優先順位は高くないから、評価と指名順位が一致しないかもしれない」(パ・リーグ球団スカウトC氏)

 藤原と同じ大阪桐蔭の根尾は、バッティングだけでなく3回戦の明秀日立(茨城)戦では投手としても先発完投して最速147キロをマークし、11奪三振の快投を見せた。ただ、スカウトたちは内野手として高く評価しているようだ。

「昨年よりショートらしくなってきたというか、成長のあとが見えた。ただ、まだ原石。洗練されていく可能性にかけるという感じですかね。守りに関しては、もっと足を使ってほしい。肩が強いだけに、そこまで足を使わなくてもできてしまうんですよね」(A氏)

「身体能力が高い。プロで鍛えれば、広島の菊池涼介のような守備ができるようになる。バッティングも以前はただ振り回していたけど、丁寧に打つようになった。ちょっとスケール感が小さくなった気がするけど、話題性もあるし、1位で獲る球団はあるかもしれない」(セ・リーグ球団スカウトD氏)

 大阪桐蔭には、このほかにも柿木蓮、横川凱(かい)、小泉航平、中川卓也、山田健太とドラフト候補が並ぶが「藤原と根尾以外は伸び悩み」という声が多く、現時点で指名確定の評価は得られていない。

とはいえ、「柿木はボールが強いし、角度がいい。真っすぐはしっかりしていた」(C氏)、「横川は長身左腕で手が長いのは魅力。中川と山田はバッティングに光るものがある」(B氏)、「小泉は肩の強さなら今大会ナンバーワン捕手」(D氏)とマークされており、これからの成長や球団の事情によっては指名圏内に入ってくる可能性もあるだろう。

 藤原、根尾に次いで高い評価を受けたのが、智弁和歌山のスラッガー・林晃汰。準々決勝の創成館(長崎)戦では逆方向となるレフトスタンドに飛び込むホームランを放つなど、パワーを見せつけた。

「スイングスピードがすごい。スイングの速さは、今大会の出場選手のなかでは抜けている。右ヒジを手術したわりにはボールもしっかり投げられているし、守備も悪くない」(A氏)

「あれだけのスイングができる高校生はなかなかいない。ただ、なんでもかんでも打ちにいくのがねぇ……バッティングは見極めが大事」(セ・リーグスカウトD氏)

 野手でもうひとり、指名確実の評価を受けたのが明秀日立(茨城)の増田陸。金沢成奉(せいほう)監督の光星学院時代の教え子である坂本勇人(巨人)には及ばないが、高校生野手の評価としては高い。

「格好がいいよね。センスを感じる。タイミングの取り方もうまいし、1球目から振れるというのも魅力。正直、スペシャルなものはこれといってないけど、やるべきことをしっかりやってくれる選手」(C氏)

「バッティングに柔らかさがあって、うまくボールを運ぶ感じがある。守備は決してショートの動きじゃないけど、鍛えればうまくなるでしょう」(B氏)

 大会屈指の強打者と前評判の高かった東海大相模(神奈川)の森下翔太についてはこうだ。

「甲子園では物足りなさがあったけど、まともに当たったときの火の出るような打球は本当にすごい」(A氏)

 また、186センチ97キロの巨漢外野手、日本航空石川の上田優弥もプロ注目の打者だ。

「バッティングは柔らかく、ミートのうまい選手。ただ、足と守備に不安があるから、評価は分かれるかもね」(B氏)

 投手でナンバーワンの評価を受けたのが、明徳義塾(高知)の市川悠太。サイドスローで最速146キロをマークする稀有(けう)な存在であることに加え、昨年秋は公式戦全10試合をひとりで投げ抜いた鉄腕だ。

「体の大きい(184センチ)サイドスローは使いようがある。左右にきっちり投げられるコントロールもあるし、スタミナもある。あとは変化球かな。もうひとつあれば、さらによくなるはず」(A氏)

 今大会最速の148キロをマークした松山聖陵(愛媛)の土居豪人(ひでと)は、188センチの長身から投げ下ろすストレートと将来性を高く評価された。

「サイズと強い球は才能。プロに入ったからといって身につくものではない。素材として面白いから、育成選手として育ててみたい」(C氏)
「背が高くて腕が振れる。プロがなんとかしなきゃいけないという素材」(D氏)

 創成館の184センチ左腕・川原陸も素材型の選手として評価を受けた。

「フォームに柔らかさがあるし、球持ちがいい。だから、ベースの上でボールが加速する感じがある」(パ・リーグ球団スカウトC氏)

 一方で、”二刀流”として話題になった中央学院(千葉)の大谷拓海はスカウトによって評価が分かれた。

「スタイル、バランスを見て、野手で鍛えた方がいいように感じた」(A氏)
「打者として魅力。野球選手としてやっていくなら野手じゃないかな」(D氏)
「ゆったり投げるから、打者はタイミングを外される。もっと体ができてくれば、ピッチャーとしてよくなる」(B氏)
「高校時代の飯塚(悟史/DeNA)に見えた。プレーのコツを知っている選手。今は体力もないし、出力が低いけど、体ができてくれば面白い存在になる」(C氏)

 あるスカウトは「超目玉はいないけど、昨年よりドラフト候補の数はいる」と言っていた。現時点で1位、もしくは上位指名確定の選手は多くないが、今後の成長次第では十分にその可能性もあるという。春から夏にかけての成長が楽しみだ。