ニュージーランド(NZ)やオーストラリア、南アフリカといった南半球と日本を舞台に15のプロチームが参戦し、今年2月末に開幕したスーパーラグビー。2019年ラグビーワールドカップを見据え、今年はジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)が日本代表と兼務する形で指揮官に就任した。日本を本拠地とするサンウルブズは過去2年間で計3勝しか挙げられていないが、今年は「5位以上」という高い目標を掲げて臨んでいる。



サンウルブズでひときわ輝きを放っている23歳の姫野和樹

 しかし、序盤2試合では強豪相手に善戦したものの、3月24日に秩父宮ラグビー場で行なわれたNZのチーフス戦では過去優勝2回を誇る相手に10-61の大敗を喫し、これで開幕5連敗となってしまった。

 そうした、前向きな話題を探すのが難しいサンウルブズにおいて、「ひと筋の光明」と言えるのがFL(フランカー)/LO(ロック)姫野和樹の存在だ。今、日本ラグビー界でもっとも勢いのある23歳は5試合中4試合でスターターに名を連ね、先発した試合は80分間フル出場。合計タイムは共同キャプテンのNo.8(ナンバーエイト)ヴィリー・ブリッツに次ぐ320分間と気を吐いている。

 春日丘(はるひがおか/現・中部大春日丘)では高校1年時から「花園」を経験し、進学した帝京大学では大学選手権8連覇に貢献。そして昨シーズンにトヨタ自動車へ入部すると、ルーキーながらいきなり名門チームのキャプテンに指名され、トップリーグの新人賞も受賞した。

「FLもLOもできて、80分間プレーできる」

 ジョセフHCに高く評価された姫野は、昨年11月のオーストラリア戦で代表デビュー。世界の強豪相手にトライも挙げて、華々しく初キャップを飾った。ただ、今年はサンフルブズのメンバーに初選出されるも、そのポジション(FLやLO)には日本代表クラスや外国人選手が多くひしめき合っているため、姫野の出場はなかなか難しいのではないかと思われていた。

 しかも昨シーズン後半、姫野はコンディションを崩していた。「毎週が(帝京大時代にトップリーグと戦った)日本選手権のよう」と言うように、トップレベルで戦い続けた身体的疲労やキャプテンを務めた精神的疲労の影響により、体調を崩していたのである。

 そんななかで招集された、1月末からのサンウルブズ合宿。姫野は10日間のオフを挟んで臨んだ。内容は1日3〜4部練習に加え、自衛隊で2泊3日のキャンプも敢行。短い準備期間でチームビルディングと戦術の落とし込みを同時に行なったため、そのスケジュールは非常に過酷なものだった。

 ただ、合宿中の姫野は終始、明るかった。「毎日が精一杯です。でも、自分にフォーカスを当てることができています。まずはチーム内競争に勝たないといけないのですが、切磋琢磨できて楽しい!」と、笑顔で取り組んでいた姿が印象的だった。

 そして迫ってきた、サンウルブズ3年目となる今シーズン開幕戦。姫野はそれまでベンチ外だったが、日々の練習に全力で取り組んでいたことが功を奏したか、試合の週になると先発メンバーを示す青のビブスを着用するようになる。そして開幕日、姫野はコンディションの上がらない日本代表キャプテンのFLリーチ マイケルらを抑え、先発の「6番」の座を見事に勝ち取った。

「強みであるランでゲインしたい。FLなのでタックルでも身体を張りたい。ルーキーらしく、がむしゃらにいきたい」

 その言葉どおり、開幕戦で姫野はFLとして、そして試合途中からはケガ人の状況もありLOとして、80分間戦い続けた。オーストラリアの強豪ブランビーズ相手に25-32と敗戦したものの、タックルの回数はチーム内で3番目に多い16回、ボールキャリアの回数はFWで2番目に多い9回と、スーパーラグビーの舞台でも通用することを証明した。

 続く2戦目は負傷により欠場したが、初の南アフリカ遠征となった3試合目、4試合目はLOとしてフル出場。特に38-40と惜敗だったライオンズ戦では、2年連続準優勝チーム相手にパスをインターセプトし、スーパーラグビー初トライも挙げた。

 そして迎えた3月24日、初めてNZ勢と対戦した姫野はチーフス戦をこう振り返る。

「準備期間が足らなかった。ちょっとしたところでミスが出たりして、チームの成熟度はまだまだかもしれない。NZのチームはボールの動かし方がうまかった。ただ、(自分たちが)劣っているとは思わない。自分たちのプレーができれば通用する」

 社会人になる前、姫野は「トヨタ自動車での日本一と、トップリーグ新人賞、そして日本代表とサンウルブズに選出されること」という目標を掲げた。個人目標はすべて達成している。

「この1年ですべてが変わった」という姫野。その視線の先には、もちろん2019年のラグビーワールドカップ出場がある。

「チャンスを掴めたことが自信になった。これからもチャンスを逃がさなければ、自分のラグビーがもっと豊かなものになる。2019年まではラグビーが恋人です!」

 ただ先を見るだけではなく、毎日の積み重ねが大事ということを意識しながら、姫野は楕円球に向き合う覚悟を決めている。