3月24日に行なわれた世界フィギュアスケート選手権ミラノ大会男子フリーは、前日の女子フリーと同じように荒れた展開となった。

 波乱の幕開けは、最終組2番滑走の宇野昌磨の演技だった。



SP5位から盛り返し、銀メダルを獲得した宇野昌磨

「(4回転の)ループとフリップは練習でもあまり決まっていない。フリップは跳べるかなと思っていましたけど、跳んだ瞬間に変な方向に曲がってしまった。耐えたつもりでしたけど、ディダクション(減点)がつくジャンプになったと思います」と本人が言うように、宇野は最初の4回転ループで転倒。また、6分間練習で一度きれいに決めていた4回転フリップは、両手を後ろについて何とかこらえるジャンプになってしまった。

 その後3回転ループを決め、スピンとステップも丁寧な滑りで立て直したかに見えた。だが後半に入るとスピードが落ちてしまい、トリプルアクセルはステップアウト。さらに次の4回転トーループでも転倒してしまい、合計3回の転倒で4点減点される演技となった。

 宇野の後の選手も転倒が続いた。SP4位のボーヤン・ジン(中国)は、最初の4回転ルッツで転倒するなどミスを連発。後半には4回転トーループで2回、3回転ルッツ+2回転トーループと3回転フリップでも転倒して、合計5回の転倒で9点減点となり、フリー23位という信じられない結果に。

 続くSP2位のミハイル・コリヤダ(ロシア)は、転倒を4回転ルッツと後半に入ってからの4回転トーループの2回に抑え、悪い流れはやや収まったかに思われた。

 しかし、最終組5人目のSP3位ビンセント・ジョウ(アメリカ)は、最初の4回転ルッツで転倒すると、その後の4回転サルコウはこらえたものの、後半の4回転サルコウとトリプルアクセルで転倒。結局、最終組6人のうち、1番滑走のキーガン・ミッシング(カナダ)も含めて転倒が相次いだ。

 右足甲に痛みがあった宇野は、SP後は痛み止め注射を打たなくてもいい状態まで回復した。「僕は注射とか針がものすごく嫌いなので、『打ちたくない』と強く思っていたら治りました」と笑うが、調子自体は元々悪く、不安があったという。

 それでも、フリーでは演技構成のレベルを落とさず、今シーズンこれまでと同じ構成でいくと決めた。その理由をこう話す。

「今年は構成を変えてよかったためしがなかったので……。そういうことを踏まえて、できなくても最後までやろうと思いました。周りに何と言われてもやりたいという気持ちがありました。パンクせず、体の軸を締めることができてよかったです」

 構成の難度を下げてミスをしてしまい、「普通にやればよかったかな」と疑問を感じたSPがあったからこそのフリーの結果だった。先述した演技内容にも、宇野のそんな攻めの気持ちと執念が込められていた。

「ミスが続いていたので、終盤のコンビネーションジャンプはやりたくないというか、少しでも成功率を上げたいという気持ちもあったんです。でも、最後は練習してきたことを信じて……。後半の最初の4回転トーループを失敗した時も、悪いジャンプではないと思ったので、最後まであきらめずに頑張ることができました」

 宇野は、後半の4回転トーループに2回転トーループをつけて連続ジャンプにすると、トリプルアクセルからの3連続ジャンプと3回転サルコウ+3回転トーループも成功。GOE(出来ばえ点)でそれぞれ加点をもらうジャンプになった。

 あきらめることなく滑りきった宇野は、演技構成点では88.86点を獲得して合計を273.77点にし、最終滑走のネイサン・チェン(アメリカ)を残す時点までトップをキープした。

「2年前の世界選手権の時のような悔しい気持ちと悲しい気持ちがあった」という宇野は、演技終了直後には表情をゆがめて涙したようにも見えたが、「あれが汗なのか涙なのかは、見て判断してください」と笑みを浮かべた。

 最終滑走のチェンは、後半2本のジャンプの着氷がわずかに乱れただけで、4種類6本の4回転ジャンプを降りる見事な滑り。羽生結弦が昨年の世界選手権で出したフリーの歴代世界最高得点にあと3.74点まで迫る219.46点を出し、合計321.40点で完勝した。

 注目された、日本男子の来年の世界選手権出場「3枠」は、補欠からの繰り上がり出場となった友野一希の驚異的な活躍によってもたらされた。



初めての世界選手権で5位と大健闘の友野

「ショートは『フリーに進めるのかな』とか、『実力が足りないのかな』というような不安がいろいろあってガチガチに緊張したけど、80点台を出せたので、フリーは本当に思い切ってやるだけだった」という友野は、枠取りも意識することなくのびのびと滑った。

 大きなミスはなく、GOEの減点は最初の4回転サルコウ+2回転トーループの1.20点だけ。得点もSPに続いて自己最高を大幅に更新する173.50点を出し、最終的にはフリー3位になってチェンや宇野とともにスモールメダルをもらえる結果となる。最終組の転倒ラッシュがあったとはいえ、合計256.11点の5位という上々の成績で初の世界選手権を終えた。

 その友野について宇野は、「友野くんがもし11位とか10位だったら、『(4回転)ループとフリップを跳ばなければヤバい』という気持ちだったけど、あれだけの演技をして、あれだけの順位に上がってきてくれたので……。3枠に関しては僕ではなく、友野くんのおかげです」と笑顔で感謝する。

 日本男子の世界選手権3枠は、まさに友野の神がかり的な演技と宇野の執念がもぎ取ったものと言っていいだろう。