10-61。
 今季最多失点で敗れた3月24日のサンウルブズ。SOダミアン・マッケンジーをはじめとした、能力の高い個々のプレーヤーに崩され、チーフスに9トライを許した。
 秩父宮ラグビー場に足を運んだ1万3464人のファンの沸くシーンが少ない試合だった。

 そんな80分の中で、光明が見えた数少ないシーンのひとつが後半18分過ぎのスクラムだ。
 自陣深くの左中間。相手ボール。チーフスBKに好球を与えると危険なエリアだった。
 そこでビッグプッシュを見せたのが後半8分からピッチに立った具智元(ぐ・じうぉん)だ。相手はスクラム内にボールをとどめ、時間をかけて押そうとしてきた。そこで逆に押し切ってみせた。チーフスの反則を誘い、ピンチを脱した。

 長谷川慎スクラムコーチを師と仰ぐ。アドバイスを実践にうつした。
「ライオンズ戦やレベルズ戦もそうでしたが、(自分たちの)足の位置がうしろすぎる、と慎さんに言われました。それで膝が伸び切った状態になっている、と。外国人(の相手)は(こちらとの)ギャップを取りたがるから、ますますそうなる」
 だから足の位置を前に出した。結果、膝に余裕がある状態で組めた。
 エンゲージ後の力の掛け合いから、さらにグイッと前に出られたのはそのせいだった。

 過去2シーズンと比べ、プレー時間を大きく延ばしている。スクラムの安定に加え、フィールドプレーが格段に向上した。もともとパワーあるタックルには定評があった。加えてボールタッチも増え、パス技術も高まった。
 過去を振り返り、「(以前は試合中も)緊張しっぱなしで、どうしよう、どうしようという感じでした」と話す。
「そんな状態とは違い、今シーズンはいい経験を積めていると思います」
 チームの戦術を理解し、自分に何が求められているかを理解して動いている。

 チーフス戦で途中出場した後のスクラム直前。LOのヘル ウヴェと話す光景が見られた。自分たちのやるべきルーティーンの確認だった。
「(早く自分たちの形を作る)アーリーセットを心掛けています。だから、コミュニケーションをとるのが大事」
 ウヴェは自身が拓大1年生のときの4年生だ。先輩は当時、バックローでプレーしていた。だから、その押しを直接受けるのはウヴェがFLの時だけだったが、頼りにしていた。
「すごく押しが強いので、やりやすいんです」
 今回はLOとして左のお尻を押してくれた。大学時代に押していた右のお尻とは逆側も、「(慣れているので)しっくりきました」と言う。
 まだ手にできぬ今季初勝利をつかむには、個々の進化も欠かせない。スクラムを押して、チームを勝利に近づける。