格上を倒すには、好機は逃したくない。ところが参戦3季目のサンウルブズは、過去2回優勝のチーフスを前にプレーの起点でミスを重ねる。 特に苦しんだのは、タッチライン際の空中で競り合うラインアウトの際だ。身長2メートル台が2人というチーフスに何…

 格上を倒すには、好機は逃したくない。ところが参戦3季目のサンウルブズは、過去2回優勝のチーフスを前にプレーの起点でミスを重ねる。

 特に苦しんだのは、タッチライン際の空中で競り合うラインアウトの際だ。身長2メートル台が2人というチーフスに何度も競られた。

 0-7で迎えた前半6分、球が風に流れてまっすぐ投げ入れない反則を取られる。

 投入役にあたるHOの堀江翔太はしかし、この場面を「それは僕の問題なので、修正できる」。真に問題視したのは、それ以外の失敗だった。

 この日の最高長身が193センチと高さに劣るサンウルブズは跳躍などの技や速さ、相手の隊列の裏をかく知恵に活路を見出したいところ。

 もっともこの日は堀江いわく、「いいところへ放っても人(相手)がいて…」。捕球役が前後に動くなどして網目をかいくぐろうにも、ボールは相手に与えてしまう。14点差を追う14分頃、28点差を追う26分頃と敵陣でのエラーを犯す。

 ラインアウトは、日本代表のボスも兼ねるジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチの担当領域。戦前に成功率アップへの鍵を問われた堀江は、「コーチの出す戦術を信じて放る」と信頼関係を強調した。試合後の取材エリアでも、その見解は変わらない。

「僕はコーチじゃないので」

 その一言に、矜持がにじんだ。

「コーチにはコーチの方針がある。それを信じてやるしかない。(捕球役の)テンポ、タイミング…。全員が能力を向上させた方がいい」

 さかのぼって2015年、ワールドカップで歴史的3勝を挙げた日本代表も2メートル台はゼロだった。それでも当時は、スティーブ・ボーズウィックFWコーチの指導でラインアウトは安定していた。業務過多気味な指揮官にすべてを委ねるいまとは、明らかに状況が違う。

 堀江は、その2015年よりも前から代表戦士。成功体験を肌で知る身とあって、見解が注目される。それでも当の本人は、いまの環境に言い訳を求めないのだった。

「ないものねだりをしても仕方がないんでね。頑張ります」

 サンウルブズが足踏みする一方、この日のチーフスは用意周到なプレーで主導権をつかんだ。

 序盤は両端奥のスペースへ効果的なキックを放ち、推進力があるサンウルブズのWTB勢を何度も後退させた。コリン・クーパー ヘッドコーチは「大型で走れるWTBをシャットアウトすることを念頭に置いた」。

 後半は、その両端の隙間を別な方法で破る。敵陣中盤に入った5分、サンウルブズのWTBに入るホセア・サウマキがタッチラインを背にするや、その背後へパスを通す。

 ここでスコアは10-33。折しも、サウマキにトライされた直後のことだ。流れの上でも重要な得点が入った。

 結局、サンウルブズは開幕5連敗を喫した。結果だけを見れば力の差を見せつけられたようでもあるが、そもそも力の差を覆すのがサンウルブズの存在価値でもある。

 またこの日の根本的な敗因は、ラインアウトと大外のスペース管理など数点に絞られる。堀江が言った「ないもの」を臨時指導者の招へいなどで「あるもの」にしてしまうなど、蘇生の手段はいくつかありそうだ。

 これから約1週間の休止期間中、どんなテコ入れがなされるだろうか。(文:向 風見也)