みちぎんドリームスタジアム(青森市)で行なわれた第11回 全農 日本ミックスダブルス カーリング選手権大会(3月14日~18日)は、平昌五輪で活躍した強化委員会推薦ペア、藤澤五月(ロコ・ソラーレ北見)と山口剛史(SC軽井沢クラブ)の『…

 みちぎんドリームスタジアム(青森市)で行なわれた第11回 全農 日本ミックスダブルス カーリング選手権大会(3月14日~18日)は、平昌五輪で活躍した強化委員会推薦ペア、藤澤五月(ロコ・ソラーレ北見)と山口剛史(SC軽井沢クラブ)の『藤澤 山口』が、予選リーグから8戦負けなしの全勝優勝を飾って幕を閉じた。



ミックスダブルス選手権を制した藤澤五月と山口剛史のペア

 大会序盤こそ、藤澤が「アイスチェンジが必ずあった」という変化に富んだ氷と、ミックスダブルス特有の、ハウス中心の石を出し入れする戦い方にアジャストするのに時間を要した。それでも、「スイープで調整してくれるので投げやすかった」(藤澤)という、男子カーリングのエーススイーパーである山口を信頼し、恐れずに”攻めるショット”を投げ続けた。

 その結果、ミスがありながらも、相手にプレッシャーをかけることに成功する。8試合のうち複数得点を奪われたエンドはわずか3エンドで、そのうち3点以上のビッグエンドは1エンドのみ。いずれも、参加21ペアで最少の数字だった。

 大会が進むにつれて、「サッチャン(藤澤)は、細かいズレを感覚的な部分で修正してしまう天才肌なので、しっかり話をして理解するようにした」という山口の努力が実る。カマー(※ガードの後ろに回り込むショット)をはじめ、フリーズ(※ハウス内のストーンにぴたりとつけるショット)、レイズ(※他のストーンに当てて石を動かすショット)など、ミックスダブルスに必須なデリケートなショットを、藤澤が適切なウエイトで投げ、山口が必死のスイープで運んで、次々とキーショットが決まっていった。

 オリンピアンペア同士の対戦となった準決勝、『吉田・清水』(LS北見・吉田知那美/SC軽井沢・清水徹郎)戦の頃には、トリプルなどのテイク(※相手ストーンを弾き出す)系のショットも当たりが続出し、対戦相手の吉田が「(藤澤は)無双だった」と白旗を上げるほど、完璧に仕上がっていた。

 強化委員会追加推薦ペア、『チーム平田』(中部電力・北澤育恵/SC軽井沢・平田洸介)との決勝戦でも、藤澤は第1エンドで見せた距離の長いレイズをはじめ、緻密なウエイトのラストロックなど、難易度の高いショットを次々に決めてメダリストの技術を見せつける。そして、相手に付け入る隙を与えず、9-2と快勝した。

「スキップとしてのショット、特にドロー(※ハウス内に石を止めるショット)が本当にうまい」と、ペアを組む山口も脱帽するショットを連発した藤澤。五輪で成長した世界屈指のスキップの活躍で、凱旋試合を大いに盛り上げた。

 今大会の結果を受けて、藤澤&山口ペアは4月21日からスウェーデン・エステルスンドで開幕するミックスダブルス世界選手権に日本代表として派遣される。

「(世界大会について)まだイメージできないけれど、ゲームごとに合わせていきたい」(藤澤)

「サッチャンに、僕の投げる石をしっかりと見て、知ってもらって、さらに上を目指したい」(山口)

 世界大会に向けて、ふたりはそう抱負を語った。

 とはいえ、藤澤と山口はこのペアのまま、4年後の北京五輪出場を目指してやっていくわけではない。現状では、それぞれの所属チームでの活動をメインにして、4人制を優先していく構えだ。

 北京五輪の出場権に関わる世界選手権は、2020年、2021年の2大会。そこで、ベスト8に入る結果を残せば、日本チームのこの種目での五輪出場も見えてくる。

 まずは、世界レベルに最も近いであろう、この藤澤&山口ペアを世界大会に送り出すことによって、彼らが残す結果や世界で体感したことをきちんと集約・分析し、それをベースにして協会と選手が一体となった強化を始めることが重要になる。

 まだ2年ある――では世界からあっという間に取り残されてしまうだろう。その意味でも、藤澤&山口ペアが世界の舞台でどんな戦いを見せるのか、注視したい。