鎌ヶ谷巧業PRESENTS「千葉ジェッツ V.S. アルバルク東京」のハーフタイムショーに出演『メイさん!Bリーグで飛びます!』そうYBP PROJECTの事務局から連絡が来たのは、1月あと数日でYBP PROJECTが運営するアクティブキ…

鎌ヶ谷巧業PRESENTS「千葉ジェッツ V.S. アルバルク東京」のハーフタイムショーに出演

『メイさん!Bリーグで飛びます!』
そうYBP PROJECTの事務局から連絡が来たのは、1月あと数日でYBP PROJECTが運営するアクティブキッズフェスタが開催される頃だった。私には一瞬、何のことか分からなかった。飛ぶって、何が?まさかBMXが?
 確かにYBP PROJECTとJumpersStoreはタッグを組んで、日本中のあちこちにBMX「AIR TRICK SHOW」をお届けしてきたけれど。
今回のお届け先は、バスケットボールの試合のハーフタイムショー?しかも千葉ジェッツって、昨年の天皇杯の覇者!!


photo:May Nagoya

まぁ見て下さいよ、この気の良さそうな彼らを。
彼らは2020年東京オリンピック競技に決定しているBMXパークへの出場が期待されているトップライダーである。
この東京有明はBMXパークの開催予定地、彼らの主戦場でもある。なのに何故か漂う「おのぼりさん」感。こちらもつい「ほんならビックサイト後ろに入れて撮ろうなぁ」と言ってしまうではないか。
こんな彼らが、5000人を超える観客の前で飛ぶですって?!


Rider:Toshio Takagi、photo:May Nagoya

何とか事態を理解し、千葉ジェッツのイケメン選手もチェックし、私は思った。
BMXだけではなく、スノー系を除くアクションスポーツにとって、冬はほぼオフシーズンだ。雪が降れば飛べない。風が強くても飛べない。野外でのイベントにはお客さんが来なくなる。
しかしバスケットボールは屋内で行われる。しかもお客さんがいっぱいいる。
その上、アクションスポーツがハーフタイムショーに出演するのは、私の知る限り日本初のことだ。
これは凄いことになるんじゃないの?!

『8分しかないんです』


photo:May Nagoya

数日後、アクティブキッズフェスタでのAIR TRICK SHOWが終わり、「今度ごっついのおやりんなるて聞いてますぇー」と能天気に話しだした私に、JumpersStoreのマネージャーである林正典は嬉しいのか嬉しくないのか良く分からない表情で言った。メイクするとフレディ・ナス・マーキュリーそっくりの顔は、真剣そのものだ。

『設営から撤収まで入れて、持ち時間8分なんです』

私は間違いなくフリーズしていたと思う。フレディもフリーズしていたと思う。8分以内でジャンプ台と着地台を設置してショーまで終わらせるなんて。通常、どんなに早くても設営だけで2時間はかかる。
2時間を8分に。いや、ショーの時間を考えると、設営にかけられるのは3分だ。
『やらなきゃいけないし、それよりも、「やりたい」ですから。やりますよ。』


photo:May Nagoya

そして2018年2月18日、日曜日。
鎌ヶ谷巧業PRESENTS千葉ジェッツ V.S. アルバルク東京の会場である船橋アリーナに早めに着いた私は、それよりも早くから並んでいる観客の数に驚愕する。開始15時でしょう?まだ10時ですよみなさん!
 千葉ジェッツが前日の試合で負けてしまったからだろうか。どんどん延びていく行列からは、今日こそ勝ってほしい、いや勝たせる!という意気込みが感じられる。
こんなにやる気に溢れたお客様の前で、ハーフタイムショーをするのか。

開場時間になり、AIR TRICK SHOWの楽屋をこっそり覗きに行く。
数日前には、SNS上で手伝いを募っていた。様々な試行錯誤の結果、人手が足りないという判断になったようだ。何とか人出は確保できたらしいが、さぞかし緊張感が漂い張り詰めた空気だろう・・・と思いきや、聞こえてきたのは


photo:May Nagoya

『今日こそ千葉ジェッツに勝ってほしいね!!』
すみませんブースター(千葉ジェッツのファン)さんの控室でしたか間違えました。ではなかった。
自分達を呼んでくれた千葉ジェッツに勝ってもらいたい、だけでもない。
彼らはしっかり分かっているのだ。自分達が最高のパフォーマンスをしたとしても、千葉ジェッツが勝ってくれなければお客さんが喜ばないことを。
ショーが上手くいくように、BMXの魅力を沢山の人に伝えることが出来るように、という自分達の想いよりも、彼らは何より、今日来たお客さんに喜んでもらいたいのだ。


photo:May Nagoya

時間が迫り会場の隅で出番を待っている間も、ライダー達は千葉ジェッツが得点する度に歓声を上げている。


photo:May Nagoya

やがて前半終了を告げるブザーが鳴り、場内の照明が落とされた。
さあ、ショータイムだ。


photo:May Nagoya

聞き慣れないMCワダポリスのシャウトと、ただならぬ勢いで運び込まれるランプ。
いつものハーフタイムショーとは違う雰囲気に、席を立とうとしていた観客の目線はコートに戻されたのだと思う。
そこに蝶のようにひらりと現れ観客の目線を釘付けにしたのが、BMXフラットランドの佐々木元(ささき・もと)だ。


photo:May Nagoya

今までに見たことがないハーフタイムショーが始まるらしい。ブースター達の表情が疑問から驚きに変わっていく。


佐々木選手の妙技の後で、スタッフ達は物凄い速さで設営を進めていく。
 スタッフの中で、フロアに敷く滑り止めを抱えて先陣を切って飛び出したのは、YBP PROJECTの栗瀬裕太とJumpersStoreの林だった。共に自転車で遊んできた幼馴染の二人がフロアに走り出てから、きっかり3分後。
JumpersStore代表の永井秀夫は、船橋アリーナの大空を飛んだ。


Rider:Hideo Nagai、photo:May Nagoya

この瞬間の事を、永井はこう語ってくれた。

永井:一発目飛んだ時、うわあ!!っていう物凄い歓声が、飛んでいる自分に届きました。何やるんだろう、と思って見ていたBMXのことを全く知らないお客さんが、自分が飛んだ瞬間にガラッと変わった。この感触は、今まで飛んだ中で一番気持ち良かったです。


Rider:Hideo Nagai、photo:May Nagoya

永井:今回出演したメンバーは、2014年にJumpersStoreを結成して初めてのショーに出演したメンバーなんです。100人くらいのお客さんの前で飛ぶところからスタートして4年後に、同じメンバーでこんなに沢山のお客さんの前で飛べたっていうのは、感慨深いものがありました。


左から高木聖雄(たかぎ・としお)、中村輪夢(なかむら・りむ)、西昂世(にし・たかせ)、そして永井秀夫(ながい・ひでお)。いずれも国内トップレベルのライダーだ。photo:May Nagoya

JumpersStoreは、BMXライダーがBMXライダーとして生活する為につくられたチームだ。
 沢山の人に本物を見てもらい、ファンを増やす為に、クラウドファンディングで資金を募り「移動できるジャンプ台」を作った。見に来てもらう為ではない。見せに行く為だ。
移動式のジャンプ台を手に入れた彼らは2016年、ショッピングモールの広場でショーを行い、3000人という動員数を打ち立てる。面白いことをしていても、見に来てくれる人がいないと嘆くプレーヤーは多い。見てくれる人がいなければ、それで生活していくことも出来ない。
 JumpersStoreは、そこから抜け出そうとしている。
YBP PROJECTと協力し「AIR TRICK SHOW」というショーケースを作り上げ、はっきりと金額を提示し、仕事として飛ぶと言い切る。プロライダーとして生きていく為に。


Rider:Rim Nakamura、photo:May Nagoya

AIR TRICK SHOWの集大成でもあり、大いなる一歩でもある千葉ジェッツハーフタイムショーは、お客さんからトイレに行く時間を奪い、選手達から休憩時間を奪ってしまった。
選手たちが飛び上がって歓声を送っている様子は、ブースターによってSNSにあげられているので、是非チェックして欲しい。

本当に8分だったのだろうか。
もっと長かったような気がする。
でも一瞬だったような気もする。


Rider:Toshio Takagi ラストを締めくくった圧巻のフロントフリップ。photo:May Nagoya

それにしても、よくこんなにもジャンプ台を軽量化することが出来たものだ、と思う。聞けば今回のジャンプ台は、今回の為に全て新しく作ったものだという。
『今回、本当にしんどかった』


Rider:Takase Nishi、photo:May Nagoya

BMXライダー西昂世(にし・たかせ)を知るものは、この台詞を西がロにしたと知ったら驚くだろう。とても失礼な話だが、私も「西さんがしんどいって言った!!」と口に出すところだった。
彼はいつも超クールなのだ。
彼はいつも同じテンションのまま、物凄いトリックをさらっと決めてしまう。
世界大会でもさらっと入賞してしまうトップライダーは、国内有数のジャンプ台製作者でもあるのだ。西は、今回のジャンプ台の全てを一人で作った。
すごい。しか言いようがない。

西:でも反省点が多くて。耐久性が足りないと自分では思ってるんです。でも今回、みんな大きいジャンプをしても全く問題なかったので、ホッとしました。持ち運びできる軽さをクリアしなければいけなかったので、ギリギリまで軽くしてあります。

分割されると、パーツ1つは30kg程度になるという。小学3年生ぐらいの重さだ。それなら私にも持てる。

西:今回、このお話が決まってから当日まで1か月無くて、かなりしんどかったです。頑張りました。

このコンパクトさなら、広い庭のあるご家庭で置けそうである。個人での注文も受け付けてくれるとのこと。プロライダーの西なら、注文者のレベルにあわせたジャンプ台を作ってくれるだろう。興味のある方はお問い合わせください。
そして、千葉ジェッツは無事勝利。よかった!

『サイン会が終わらない!!!』


photo:May Nagoya

千葉ジェッツが勝った!お客さんは笑顔である。AIR TRICK SHOWの面々も笑顔である。笑顔の中始まったサイン会が・・・終わらない!なんと1時間半もの間、列は途切れることがなかった。
「初めて見たよ!」「凄かったです!」「また来て!!」
 何人ものお客さんが声をかけてくれる。千葉ジェッツの勝利で、ハーフタイムショーのことなど忘れてしまった人が多いのではないかと余計な心配をしたのだが、本当に余計な心配だった。


最後の一人までお見送りをしてくれた千葉ジェッツフライトクルーのお姉さんたちと。photo:May Nagoya

最後に、永井と林に今後について聞いてみた。

林:今回問題なくやることが出来ましたし、お客さんにも喜んでもらうことが出来たので、室内競技のハーフタイムショーに出て経験を積んで行きたい。今回はかなりコンパクトにして、ジャンプの高さも低かったのですが、もっと大きく高くお見せすることも出来ます。設営の問題をクリアして、大きなスタジアムでやりたい。

永井:ショッピングモールの「外の広場」ではなくて、「中」でやってみたい。今回こうやってコンパクトに出来たので、問題なく出来るという自信がつきました。

林・永井:でも、何よりも、また千葉ジェッツのハーフタイムショーに出たい!!

千葉ジェッツについて


Bリーグ中最多の観客動員数を誇るバスケットボールチーム。ブースター(千葉ジェッツファン)が誇れるチームになることをチーム理念に掲げている。天皇杯2連覇。今シーズンこそ悲願のBリーグ制覇となるか、注目が集まっている。