「”愛媛らしさ”を大切にしていきたい」記事冒頭の動画は、先日行われた「2018 J.LEAGUE キックオフカンファレンス」において、愛媛FC・間瀬秀一(ませ・しゅういち)監督が発した言葉だ。この”愛媛らしさ”から、新シーズンのJ.LEAG…
「”愛媛らしさ”を大切にしていきたい」
記事冒頭の動画は、先日行われた「2018 J.LEAGUE キックオフカンファレンス」において、愛媛FC・間瀬秀一(ませ・しゅういち)監督が発した言葉だ。この”愛媛らしさ”から、新シーズンのJ.LEAGUEを展望したい。
間瀬監督率いる「愛媛FC」は四国のJクラブの1つで、カテゴリーは、J2。ホームを「ニンジニアスタジアム」とし、サポーターに大人気の「一平(いっぺい)くん」を筆頭にクラブマスコットの面々も強者揃い。マスコット達は、客席でサポーターと一緒に応援したり、サッカー番組の生出演ジャック、バンド演奏に参加するなど、他クラブでは考えられないようなパフォーマンスを繰り返し、愛媛のサッカー文化を発信している。
「愛媛FC」のホームの”応援”と”サポート”は常に”地元パワー”で溢れており、強力だ。特筆すべきは愛媛県内に住んでいる人達の日常にJ.LEAGUEが当たり前のように溶け込んでいることだ。昨シーズンは(翌日の仕事のため最終便に乗るアウェイサポーターへ)空港までの最短タクシーを独自で手配・誘導するといった神対応も話題となった愛媛だが、今季は全国初となるホームゲーム全試合放送を地上波で実現させた。
とにもかくにも、やることなすことが全てにおいて斬新で勇敢なJクラブ、それが「愛媛FC」なのだ。
「愛媛FC」の原動力といえば、間瀬監督も心に刻む ”愛媛らしさ”。この”らしさ”ってなんだろう? 誰もが最初は疑問を抱くはずだ。
選手層は、決して厚いとは言えない愛媛。昨シーズンの登録選手や帯同選手のデータから見ても、他クラブに比べ少数布陣で臨む試合が多々あった。間瀬監督によれば、数日後に控える開幕戦に向けても選手の余裕など全くない状況らしい。一般的にクラブが公表したがらない選手個人の機密情報を、しかも公の場でカメラに堂々と向かって話す指揮官の姿をクラブスタッフが咎める様子もない。愛媛の風通しの良さを超えて、もはや清々しい光景だった。
クラブハウスの運営やクラブ経営も必死だ。決して恵まれた環境とは言い難い「愛媛FC」だが ”愛媛サッカー” はピッチ内外で ”常に勝ちたい” 気持ちが最優先で構成されている。
キックオフカンファレスで間瀬監督と同席していた丹羽詩温(にわ・しおん)選手は、開幕前の厳しい状況でも真っ直ぐな笑顔をみせる。
「やるしかないんで。」
彼は、愛媛が守備的なプレーを続け「シュウさん(間瀬監督)から雷を落とされた」人物の一人だ。愛媛のピッチでは、後ろ向きなサッカーが決して許されないことも充分理解している。
愛媛県内では、「愛媛FC」の”戦術”や”フォーメーション”といった”サッカー哲学”を語る人を殆んどみかけない。
試合後のゴール裏は、勝てば共に喜び合い、負ければ応援が足りなかったと作戦会議を始めてしまう。地元メディアも愛媛情報中心で提供され、地域の主観で勝負を振り返る。たとえ負け試合が続いても、愛媛サポーターは下を向くそぶりはみせず、次の相手を分析したりと慌ただしい。
もしかすると「愛媛FC」に関わる全ての人達が、負けたことを議論せず、次を見据えて動く癖が染み付いているのだろう。クラブ全体で地域を巻き込み選手がピッチを駆け回りスタジアム全体も一つになって、目の前の勝利だけを掴んでいく。
開幕戦は、ホームで金沢を迎え撃つ「愛媛FC」。勝つことだけに執着したオレンジの炎は、すでに燃え上がっている。
熱血取材/文:編集部スージー
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2018年5月15日に愛媛FCから新体制のプレスリリースが到着しました。2017年シーズンよりトップチームの指揮を執っていた間瀬秀一監督の契約解除、眞中幹夫ヘッドコーチの契約解除という衝撃の内容でした。クラブを通じて間瀬秀一氏から以下のようなコメントも伝えられています。
【間瀬秀一氏コメント(原文ママ)】
「私の力が及ばず、クラブが現在の順位であることを大変申し訳なく思っています。苦しい状況の中でも、日々の練習・試合において全力で戦ってくれた選手とスタッフに心から感謝しています。また、いついかなる時も熱い声援でチームに力を与えてくださった、ファン・サポーターの皆さま、本当にありがとうございました。私はここでクラブを去りますが、最後まで絶対に諦めない愛媛FCらしいサッカーで、クラブを愛する全ての人々が喜び合えることを心から願っています。」
このリリースを目にした瞬間、筆者スージーも頭が混乱し言葉すら思いつかなかったのですが、今は「間瀬さん、愛媛サッカーを沢山見せてくれてありがとう。そしてこれからもよろしくお願いします」という穏やかな気持ちに変化していきました。スポブル編集部スージーとして、1人のJサポとして「間瀬流フットボール」をもう一度観たいと願っています。間瀬さんにはピッチでの笑顔が似合いますし、青々とした芝生が似合います。サッカーの神がいるならば「この分厚い壁を乗り越えてみなさい」とメッセージを送っているのかもしれません。戦い続けた間瀬さんですから、今は少し頭と体を休めて最高のリスタートを切れるよう、PCの前で心から祈っています。追伸:オフの間に今度こそ呑みましょう!間瀬さんの分は私が奢ります!ボーリング対決でもいいので!
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【編集部スージーの熱血取材「Jの部屋」】とは?
J.LEAGUE全国各地のスタジアムに一人でも多くの人を誘いたいスポブル新人編集部員スージーが、J.LEAGUEに関わるヒト、コト、モノを取材し記事化するスポブル限定コンテンツ。阿部勇樹選手のフリーキックを市原臨海競技場で観た翌日から、J.LEAGUEサポーターになったスージー。雨の日も風の日もJ.LEAGUEという最高の空間で泣き笑い怒り、サッカー取材に携わり十数年。過去取材では、名将イビチャ・オシム氏から突然オシム語録を継承され、大勢のメディアが集う国立競技場で大恥をかいた苦い経験も併せ持つ。個人的な夢は、インターネットとJ.LEAGUEと地域のさらなる共存。千葉県出身で、J2/ジェフユナイテッド市原千葉に興味が高い。今季の期待は、高橋壱晟(たかはし・いっせい)選手(J2/レノファ山口FC)の突破力。
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※試合速報スタッツは【2018 J.LEAGUE開幕時に最新情報に更新】されます。