【玉田圭司インタビュー 前編】 風間八宏新監督のもと、1年でJ1復帰を果たした名古屋グランパス。昨オフに古巣へ復帰し…

【玉田圭司インタビュー 前編】

 風間八宏新監督のもと、1年でJ1復帰を果たした名古屋グランパス。昨オフに古巣へ復帰したストライカーの玉田圭司も、昇格に大きく貢献した選手のひとりだ。

 年が明けて2018年1月、玉田は自身がプロデュースする千葉県のフットサルコートでサッカースクールを開き、少年たちと一緒にボールを蹴っていた。ここ数年で恒例となっている”初蹴り”を終えた38歳のレフティに、自身の移籍や、プレーオフを経て昇格を達成した1年を振り返ってもらった。



昨季、名古屋のJ1復帰に貢献した玉田圭司(中央)photo by getty Images

――昨季は、名古屋がクラブ史上初の2部リーグを戦っていましたが、そこでチームに帰還したのが玉田選手でした。そして見事に1年での昇格を果たしたわけですが、振り返ってみてどんなシーズンでしたか?

「名古屋を去って何年か経ち、戻ってきたチームには一緒にプレーしていた選手がほとんどいなかったんです。帰ってきたことは事実だけど、また別のチームに来たような感覚でした。僕以外にも新戦力は多かったし、監督も代わって、イチからのスタート。でもそこから、徐々にチームとして成り立っていき、結果的に昇格できて本当によかったです」

――特に印象に残っている試合といえば?

「終盤のホームでの湘南戦(10月15日・第37節)ですかね。群を抜いて首位を走っていたチームを相手に、内容の伴う逆転勝利を収められた」

──その試合は玉田選手の逆転ゴールで勝ちました。

「チーム全員の力でつかんだ勝利ですね。アウェーで負けていたから、誰もが『次は絶対に勝ちたい』と強い気持ちを持って臨んだ結果です」

――昨季の名古屋の成績は、42試合23勝6分13敗の勝ち点75、得点は85、失点は65。エンターテインメント性の高いサッカーで昇格を勝ち取った昨季の名古屋は、内容と結果の両方を手にしたと言えます。ただ、6月から7月にかけては勝てない時期もありました。その時のチームの雰囲気はいかがでしたか?

「特に変わらなかったですよ。迷いもなかったし。そのとき、僕はケガをしていて外から見ていたんですけど、やはりブレずに自分たちのサッカーをやり通したことが昇格につながったのかなと思います」

――玉田選手はキャプテンを務めることもあり、自分のプレーだけでなく、全体を見る必要もあったと思います。チームの成長をどう感じていましたか?

「選手一人ひとりはすごく成長したと思います」

――それはやはり、風間監督の影響が大きいのでしょうか? 昨オフには玉田選手も「風間さんのもとでプレーできることがすごく楽しみ」と言っていましたが。

「そうですね。やっぱり風間さんは特殊というか、あそこまでプロの選手に対して細かく技術的な指導をする監督は、これまでの自分のキャリアでは会ったことがなかった。それはすごく新鮮で、あらためて基本技術が大事だと気づかされましたね」

――監督の言葉で特に印象に残ったものといえば?

「よく言われていることだと思いますが、『止める、蹴る』ですね。それを確実にやろうと。サッカーではそこが大事だと自分でもわかっていたんだけど、あらためて言葉にして行動に移すと、その重要性がよくわかりました」

――具体的に言うと?

「特に言われたのは、ボールを止める位置ですね。どこにボールを置くべきかは状況によって変わりますが、『最も次のプレーに移りやすい位置に完璧にトラップできるように』と。当たり前のことだけど、すごく大事なことですよね。あとはパスを出すときに、『味方を見るのではなく、相手を見ろ。相手の動きがわかれば、どこに出すべきかがわかる』とも言われました」

――かつて玉田選手が指導を受けた、ドラガン・ストイコビッチ監督も技術を大切にするようなイメージがありますが、また違いますか?

「そうですね。(風間監督のほうが)より具体的、というか。もちろん、何が正解ということはないので、選手が監督の言うことを自分の頭で整理することが大事だと思います」

――風間監督の指導や戦術を理解するうえで、難しかった点はありますか?

「最初だけ、ちょっと戸惑いのようなものはありましたけど、本当に最初だけでした。監督は、言うこととやることが一貫しているので」

――戸惑った部分はどんなところにあったのでしょうか。

「とにかく”質”を追求する監督なので、ミスが続いたりするとキツいことを言われることもありました。でも、いいプレーは褒める。アメとムチの使い方が絶妙でしたね」

――風間監督の練習メニューで独特なものがあれば、教えてください。

「必ずボールを使います。技術もフィジカルも、ボールを使いながら強化するという考え方ですね。実際に、ボールを使った練習をずっとやっているほうがキツいんです」

――昇格を決めた直後のテレビのインタビューでは、「これが最高の状態ではないと監督も言っていたし、自分でもそう思っている」と言っていましたが。

「今のままでは全然ダメだと僕は感じています。J2をギリギリで昇格しただけのチームだし、それでJ1でやっていけるのかと。僕自身は、J1とJ2の差はそれほどあるとは思っていません。もちろん選手やチームの質はJ2より上がるけど、だからといって昇格したチームが上位を狙えないかといえば、そうではない。でもそのためには、すべての面がレベルアップしていかなければならないと思います」

――最も改善すべき課題といえば……やはり失点数でしょうか?

「そこもありますが、それだけじゃないですよね。攻守すべての質を高めていけば、失点も減るでしょう」


自身がプロデュースするフットサルコートでインタビューに答えた玉田

 photo by Murakami Shogo

――玉田選手の昨季の成績はプレーオフを含めて30試合6得点。30代後半の選手の数字としては決して悪いものではないと思いますが、ご自身はどう評価されますか?

「いや、僕自身は全然満足していないです。得点数がどうだからっていうわけではないですけど、もっともっと自分のプレー全般の質を高めていきたいと思います」

――新シーズンに向けて、チームも着々と補強を進めています。なかでも、元ブラジル代表FWジョーには期待しているファンも多いと思います。

「テレビで何回か見たぐらいで、どんな選手なのかはまだ知りません。なので、まずは間近で見たいと思っています」

――同じ左利きのストライカーで、前線でコンビを組む可能性もありそうですね。

「僕が学ぶこともあるだろうし、逆に、彼が日本について知るべきこともあるはずなので、助けられるところは助けたいです」

――昨季は川崎FがついにJ1を制しました。あのチームには、風間前監督の攻撃的なサッカーが今も息づいていると思います。現在、風間監督が率いる名古屋もポテンシャルは高いと思いますが、新シーズンはチームとして何を目標にしますか?

 
「チームとしてはチャレンジャーなので、『当たって砕けろ』と。自分たちのやってきたものがどれくらい通用するのかを試す機会ですから。もちろん、優勝を目指すのはどのチームにとっても当たり前のことだと思うけど、選手一人ひとりがシーズンを通して成長していくことが大事だと思います」

――個人的な目標はいかがでしょうか。具体的な数字などあれば……。

「いや、僕はこれまで一度も数字について言ったことはないので(笑)。とにかく、毎日楽しみながら、悔いなくやりたいです。当然、そのためには努力しなければならないし、久々のJ1は景色も違うでしょうけど、ケガなく楽しみたいですね」

――楽しみにしている対戦相手は? 

「やっぱり同世代で頑張っている選手とは、お互いに刺激を与え合っていきたいです。古巣の柏とセレッソとの対戦も楽しみですね。セレッソとは去年の天皇杯で対戦して負けて、やっぱりJ1のチームだなと感じさせられました。厳しい戦いが続くと思いますが、それでも、やるからには上位を目指したいです」

(後編に続く)