4チームすべてが立派だった。 12月9日、関東大学リーグ戦の1部-2部の入替戦が熊谷ラグビー場Bでおこなわれた。第1試合の拓大(1部7位)×立正大(2部2位)は40-40の引き分けも、規定により上位の拓大が1部残留。第2試合の関東学大(1…

 4チームすべてが立派だった。
 12月9日、関東大学リーグ戦の1部-2部の入替戦が熊谷ラグビー場Bでおこなわれた。第1試合の拓大(1部7位)×立正大(2部2位)は40-40の引き分けも、規定により上位の拓大が1部残留。第2試合の関東学大(1部8位)×専大(2部1位)は43-38で専大が勝ち、2018年度シーズンは3年ぶりに1部で戦うことが決まった。
 2試合ともラストプレーまで勝利の行方が分からぬ大熱戦。笑ったのは2チームだけも、全チームに大きな拍手がおくられた。

 地元での試合に仲間の声援も大きかった立正大は、第1試合で素晴らしい立ち上がりを見せた。
 先制点は前半2分。WTBアライアサ・ローランド・ファアウィラのラインブレイクからWTB永野将也がインゴールに駆け込んだ。その3分後にはターンオーバーからCTB齋研次郞が飛び込む。CTB木村直登のビッグタックルもあり、グリーンのジャージーは勢いづいた。僅かな時間のうちに12-0とリードした。
 しかしハーフタイムを迎えたときは19-19。拓大は先手をとられても慌てず、FWの優位性を生かして3トライを奪う。立正大もモールから加点し、互いに持ち味を出し合った。

 後半に入って先に力を出したのは拓大だった。
 9分、WTB林謙太の好走から敵陣深くに攻め込んだ後、スクラムからFWでインゴールにボールを運ぶと、14分にはPK→ラインアウト後の攻めからトライを追加する。33-19と差を広げた。
 29分に立正大にトライを許したが、33分、またもPK→ラインアウト→モールで攻略するとスコアは40-26。残り時間を考えても拓大が勝利に接近したように思われたが…攻める意思で統一されたオレンジのジャージーは諦めることなく反撃に出た。
 36分、立正大はラインアウト後のモールからトライを奪い、差を縮めると、7点差の39分には全員が走りまくり、フェーズを重ねてWTB濵副慧悟が右中間に飛び込む。SO今泉仁のコンバージョンも成功。ついに同点に追いついた。
 さらに続いた激戦。ラストプレーは、立正大がPKを右タッチに蹴り出した後のラインアウトだった。
 拓大陣でのスローイン。しかし、そのボールは防御側の手に入る。拓大LO糊谷隼が外に蹴り出し、フルタイムのホイッスルが鳴った。

 負けなかったのに1部復帰を逃した立正大のCTB木村主将は、試合終了直後こそうっすらと涙を浮かべたが、仲間の前に行くと、笑顔になって呼びかけた。
「この1年、どこより(練習を)やって来たつもりだった。でも、足りんかった」
 ひと息ついて、続けた。
「悔しいけど、きょうの試合を見てくれた人たちが、みんな、よくやったって言ってくれている。だから下を向くな。胸を張ろう」
 やり切った表情でピッチをあとにした。

 第2試合で1部復帰を決めた専大は、フィジカル強化に取り組んだ成果を出して勝利を手にした。FWのフロントファイブは全員100キロを超え、両LOは198センチと188センチ。接点で優位に立った勝者は、前半を圧倒した。
 輝いたのはSO郡司健吾だ。自身も184センチ、90キロと堂々の体躯を誇る司令塔は、強力FWを楯に自由に動き、自ら3トライ。チームに全5トライを呼び、前半を33-7で終えた。最高の40分だった。

 しかし後半は一転、1部で戦ってきた関東学大の意地に押されることになる。1分、7分、15分と3連続トライを奪われ、リードは瞬く間に7点となったのだ(33-26)。
 受け身になったその時間帯。伝統の緑×白ジャージーを着たFL松土治樹主将は、インゴールの円陣で「やってきたことをやり抜こう」とチームメートに話し続けた。弱気になるな、と。
 自分たちを取り戻した。
 専大は18分にPGで差を広げた後、25分にはWTB池田大芽が右中間に駆け込む。FB松浦祐太のコンバージョンも決まり、43-26とふたたび突き放した。
 それでも諦めぬ関東学大に、31分、38分とトライを奪われてまたも5点差に迫られるも、最後は渾身のアタックを仕掛ける相手に接点で勝ち、PKを得て終了。自分たちの強みを出して、好ゲームを締め括った。

 試合後の歓喜の時間。胴上げされた村田亙監督の目には涙が浮かんでいた。
 自信を持って送り出したとはいえ、これまで、何度も悔しい思いを味わってきた。そして、この日もラクには勝たせてもらえなかった。
「負ける要素はない。そう言い切れるまでやって、きょうを迎えました。選手たちも自信を持ってピッチに出たと思います。最後まで、よくやってくれました」
 スタンドには大勢のOBやオールドファンが詰めかけていた。お祝いの言葉がたくさん飛んだ。
 チームは、ホームの伊勢原に戻って勝利を祝うと誰もが笑顔だった。喉に流し込む美酒は、最高の味だ。