野球シーズンも本格的なオフシーズンに入り、ファンの思いはひと足先に来季へと向かっている。大谷翔平のメジャー挑戦や清宮幸太郎のデビューなど、2018年の野球界は大きな盛り上がりを予感させるが、夏の甲子園大会が節目の第100回記念大会を迎える高校野球界も負けず劣らず大注目を浴びることだろう。

 そのなかで実力、話題性といった点からも、戦いの主役となりそうなのが大阪桐蔭だ。史上初となる2度目の春夏連覇に挑んだ今夏は、3回戦で仙台育英に惜敗。守りのミスが絡んでの逆転サヨナラ負けという悔しい結果に終わった。



投打で注目を集める大阪桐蔭の根尾昂

 その後、新チームとなり迎えた秋。メンバーには来年のドラフト上位候補の根尾昂、藤原恭大、柿木蓮に山田健太、中川卓也、横川凱、宮崎仁斗と実力者がズラリと並び、大阪大会、近畿大会を制し、来春のセンバツ出場が”当確”となった。

 ただ、つぶさに戦いを振り返ると、チームとしてまだ安定した力を出せていない印象が強い。西谷浩一監督も先走り気味の評判の高さに、やんわりストップをかける。

「報道的にも大きく取り上げられていますが、力的には(ドラフト候補の)3人を含め、選手たちもチームもまだまだ。それなのにこれだけ注目してもらい、なかなか大変です」

 11月に行なわれた神宮大会でも、初戦から多くの報道陣が詰めかけ、試合後の取材でも、その強さを際立たせようとする質問が多く飛んだ。ある記者は「松坂(大輔)投手がエースだったときの横浜高校は神宮大会からセンバツ、選手権と負けなしでしたが……」と選手に問いかけ、別の記者は「神宮大会は普通にやれば優勝するでしょう」と、まさに「勝って当然」と言わんばかりの空気が漂っていた。

 しかし、神宮大会は準々決勝で創成館(長崎)に4対7。守りのミスが続き、打線もつながらないなど完敗だった。

「マスコミの方が『大阪桐蔭は強い』と言ってくれているだけで、まだまだ力は足りません。今回はその通りの結果になったと思っていますし、あらためて力のなさを再認識しました」

 敗戦後、サバサバと語る西谷監督の言葉には「だから言ったじゃないですか……」といったニュアンスが多分に含まれていた。ただ、「まだまだ」という言葉の先には、「やるからにはいつも狙っています」と常々口にする”日本一”がはっきりと透けて見えた。

 この敗戦で公式戦の連勝は12でストップ。それどころか新チーム結成以来、練習試合を含め初の黒星となった。たったひとつの負けでも大きく話題に上がるのが、今の大阪桐蔭だ。

 とはいえ、神宮大会の初戦で戦った駒大苫小牧の選手からは「凄いと思っていましたが、実際にやってみるとそこまでは……」という声もあった。これは大阪桐蔭の試合を見たファンや報道陣のなかにも、同じような印象を抱いた人も多かったはずだ。

 西谷監督はこんなことも口にしていた。

「過去20年くらいを思い出しても、(新チーム結成後の)秋の段階で『本当にこれは強い!』と誰もが思ったのは、松坂投手がいた横浜高校ぐらいじゃないですか? いくら目立つ選手がいたとしても、チームとして未熟な部分が多分にあるもの。だから、うちもそうですし、力が分かれていくのはここからです」

 振り返ると、昨年秋の大阪桐蔭は大阪大会の準決勝で履正社に敗れ、近畿大会も準決勝で神戸国際大付に逆転負けからのセンバツ優勝だった。また、浅村栄斗(現・西武)らを擁し、2008年の夏に全国制覇を達成したときのチームは、前年秋の大阪大会でPL学園にコールド負けを喫している。

 2012年に藤浪晋太郎(現・阪神)、森友哉(現・西武)のバッテリーを擁し、春夏連覇を達成したときの主将だった水本弦は、大阪桐蔭の強さについてこんな話をしていた。

「僕たちが入学してから、1年夏、2年春夏と3季続けて甲子園に行けませんでした。しかも2年夏は大阪大会決勝で東大阪大柏原に終盤追いつかれてのサヨナラ負け。メンバーに入っていた選手はもちろん、ほかの選手もこの夏の負けがあったから、新チームのスタートから意識が高かった。練習もめちゃくちゃやりましたし、毎日、寮で1時間ぐらいミーティングもしました。自分たちに何が足りないのか、何をしないといけないのか。そういうことを徹底的に話し合ってやりました。あの取り組みが、春夏連覇の結果につながったのは間違いないです」

 このときも、秋の大阪大会は制したものの、近畿大会は準々決勝で天理(奈良)に敗れた。この悔しさも加わり、チームは「まだまだ」の思いを強く持って、冬を越した。敗戦を成長の糧とする術(すべ)がチームに根付いているのも大阪桐蔭の強みである。

 新チームの主将である中川は次のように語った。

「去年も福井(章吾)さんを中心に『このままでは春は勝てない』と冬に高い意識を持って、厳しいトレーニングに励んだ結果がセンバツ優勝だったと思います。なら、自分たちはもっとやらないといけないので、この冬にもう一度、個人としてもチームとしても土台からしっかりつくって、甲子園で勝ち切れるチームにします」

 敗戦の悔しさをきっかけに勝利を積み上げてきた大阪桐蔭のこれまでの戦いを思い浮かべると、「来年もまた……」の思いが当然湧いてくる。「まだまだ」と感じて厳しい冬を越えたとき、今は遥か先を走る”評判”にチームがどこまで追いついているのか。来年春の再会が待ち遠しい。