新たな境地へ。カブス鈴木誠也外野手(31)は今季、米大リーグ・カブスと結んだ5年契約の契約最終年を迎える。昨季はメジャー…

新たな境地へ。カブス鈴木誠也外野手(31)は今季、米大リーグ・カブスと結んだ5年契約の契約最終年を迎える。昨季はメジャー日本人右打者初の30本塁打、100打点を達成。メジャーの猛者たちとの対戦を重ねながら確かな進化を続ける。注目度が増したシーズンオフはメディアへの露出をせず、すべての時間をメジャー5年目に向けた準備に費やした。WBCの出場の行方も気になる日本人スラッガーの大事な1年が幕を開ける。【前原淳】

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米国4年目のシーズンを終えた鈴木は、所属事務所にひとつのお願いをした。

「年内は冬眠します。取材は入れないでください」

世間の注目度が増したオフ、メディアでの露出を自ら断った。帰国後、姿を見せたのは「ミズノブランドアンバサダーミーティング」と、会員サイト「シンクロナス」主催のトークイベントのみ。それほど、心身ともに消耗しきっていた。

2025年の前半戦は、驚異的なペースで本塁打を量産した。3&4月と5月は月間7本塁打。6月終了時点ですでにキャリアハイを更新した。打点は一時、リーグトップを走っていた。長年の研さんが花開いたような打撃に、疑いを持ったのは鈴木自身だった。

「イメージ通りのホームランが多かったことで、逆にヒットを打つイメージが薄くなっていた。それで良かったのかもしれないけど、ヒットのイメージを求めてしまったんです。いわば、自分への戒めですよね。“ホームランバッターじゃないんだから”“有頂天になるなよ”と。確実に、少なからず成長はしていたんですけど、それを自分で違うと思ってしまった」

広島時代から中距離打者と自認し、本塁打は二塁打や三塁打の延長線上にあるものと捉えていた。それが逆転したような現実に、自身の思考が追い付いていなかった。心と体のわずかなズレによって、オールスター戦明けの後半戦に大きく打撃を崩した。8月は月間1本塁打。状況に応じて打ち方を変えるなど、対応能力にたけた鈴木が「やり尽くした」と吐露するほどの状態だった。

それでも9月27日カージナルス戦でメジャー日本人右打者で初となるシーズン30本塁打、100打点をクリアした。シーズン自己最多151試合をへて、自身初のポストシーズンに出場。8試合で3本塁打を放つも、チームは地区シリーズでブルワーズに敗れ、長いシーズンは幕を下ろした。

周囲の注目度が増す一方で、本人の達成感はほとんどなかった。鈴木が自分自身を測るものさしは、周囲のそれとは大きく異なる。昨年12月22日に都内の映画館で行われたトークイベントでは、こう表現していた。

「なんとも思わない。8月がひど過ぎたので。30本、100打点を聞かれるのが嫌でメディアに出なかったというのもある。言われて、あまりうれしくはない。もう忘れたい」

状態が思うように上がらない中でも打席に立ち続け、手応えはあっても結果に結びつかない日々にも前を向き続けた。4年目に得たものは、周囲が称賛する数字ではなく、過程にあった。そして、中距離打者から長距離打者へと進化した自覚が芽生えた。

今春開催されるWBCには、参加も不参加も明言していない。悩める胸中は理解できる。本人の思いだけであれば、左脇腹痛で辞退を余儀なくされた前回のリベンジをしたいはず。ただ、今季はカブスと結んだ5年契約の最終年。結果で応えなければいけない使命感がある。FAとなる来季により良い条件で契約するためにも、大事な1年となることも理解している。

例年と異なり、昨年末は技術練習はほとんど行わなかった。体のメンテナンスに重きを置いたこともあるが、それだけ技術面には確かな手応えがある証しでもある。「なめられたくない。お前らよりも飛ばせるよ、というところを見せたい」。ただシンプルに、誰にも負けたくない-。今季も、まだ見ぬ境地に足を踏み入れるに違いない。