■仲間…

■仲間の前で涙


 体はボロボロ、まさに満身創痍。けれど、ニヤニヤが止まらなかった。

「もう楽しくて仕方がないです。こいつらとやるバスケが1番楽しい。あと1試合しかできないので、思いっきり楽しみたいです」

 佐藤凪(3年)は「SoftBank ウインターカップ2025 令和7年度 第78回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の決勝戦を明日に控え、目を輝かせていた。12月29日、東山高校(京都府)は福岡大学附属大濠高校(福岡県)と対戦。勝てば初のウインターカップ優勝の快挙だったが、終始主導権を握られ71-97で決着がついた。

 高校最後の全国舞台は準優勝で幕を閉じた。東山のキャプテンは1回戦から6試合にわたりチームをけん引。122得点(平均20.3得点)56アシスト(同9.3アシスト)の記録は、いずれも今大会トップの数字だ。

「昨日も夜遅くまで治療してもらいましたし、痛みで眠れないくらいでした」と、決勝前夜は「体が限界」だった。20点差がついた第4クォーター、佐藤凪は一時ベンチに下がり、試合時間残り2分41秒にコートイン。その後は2本のシュートを放ったが得点にはならず、無念のタイムアップを迎えた。

「今日は本当に立っているのもままならないくらいフラフラでしたので、非常に申し訳ないという思いでした。ベンチに戻ってきた時に『残り3分できるか?』と聞いたら『大丈夫です』と言ってくれたので、最後はコートに立たせました」

 そう話したのは大澤徹也コーチ。すべてを出し尽くした佐藤凪は、試合後に味方の応援席の前に立つと、涙が止まらなくなった。

「優勝を目指してこの大会に臨んだので、負けてしまったことは当然悔しいです。けど、それ以上にここまで来れたことがすごくうれしく思いますし、チーム全員のおかげでここまで来れたので本当に感謝したいなと思います」

■芽生えた自覚


 振り返れば、3年間で6回、全国のコートで観衆を魅了してきた。入学早々から先発を担うと、最初のインターハイで準優勝に貢献。惜しくも優勝に届かず「自分の実力不足」と悔やんだ注目ルーキーは、「もっと練習しなければいけないです。先輩たちにシュートを任せてもらっているのに決めきれなくて本当に申し訳ない気持ちもありますし、試合に出てる以上、もっと責任感を持ってシュートを決めなければいけないと思いました」と涙を流した。

 1年目のウインターカップはベスト8で敗れ、迎えた2年目。「今年は琉久さんがキャプテンとしてチームを引っ張ってくれているので、僕は東山のエースという自覚を持って、得点でも、スタッツ以外でもチームを鼓舞することを意識しています」。佐藤凪はキャプテンの瀬川琉久(千葉ジェッツ) 、当時1年生の中村颯斗(2年)らとともにインターハイ初優勝を飾り、初の日本一を経験した。

 夏の王者として挑んだ昨年のウインターカップはベスト4。東山を2度目の頂点に導けなかったエースは、最終学年へ向け強い決意を示した。

「3年生にはこの悔しさも日本一のうれしさも経験させてもらいました。ウインターカップでの悔しさを2年連続で知っているのは僕しかいないので、この経験を後輩たちに伝えていかなければいけない。ここで立ち止まってるわけにはいかないので、来年は自分がリーダーになってチームを引っ張っていきたいです」

■「私の理想のガード」


 2025年、満を持して東山の主将に就いた背番号5だが、インターハイはベスト8で敗退。それでも、高校最後の冬へ向け「強い覚悟を持って」周りを鼓舞し続け、得点、アシスト、ゲームコントロール、さらには不屈の精神を持つポイントガードへ変貌を遂げた。

 即戦力ルーキー、エース、そしてキャプテン――。学年を重ねるごとに頼もしくなった佐藤凪について、大澤コーチも「私の理想のガード」と誇らしげに目を細めた。

「一度はアメリカでプレーしたい」。今後は幼い頃から夢見ていた場所でバスケットに情熱を注ぐ。

「すごいワクワクしていますし、この3年間、東山で学んだことや味わった悔しさをバネに、もっと成長した姿を皆さんにお見せできるようにこれからも頑張ります」

 高校バスケ界を沸かせた逸材は、晴れやかな笑顔でまだ見ぬ高みを見据えていた。

文=小沼克年

【動画】ウインターカップ2025決勝戦ハイライト映像