【リヤド(サウジアラビア)25日=藤中栄二】ボクシング4団体統一スーパーバンタム級王者井上尚弥(32=大橋)がアリに並ぶ…

【リヤド(サウジアラビア)25日=藤中栄二】ボクシング4団体統一スーパーバンタム級王者井上尚弥(32=大橋)がアリに並ぶ「偉業」に挑む。27日、同地で無敗挑戦者でWBC世界同級2位のアラン・ピカソ(25=メキシコ)との防衛戦を控え、大会公式会見に出席。挑戦者と初対面を果たした。井上にとって4団体統一王者として年間4度防衛成功を狙うリング。世界王座が2団体だった統一王者時代の76年のWBA、WBC世界ヘビー級王者ムハマド・アリ(米国)と並ぶ統一王者の年間4度防衛を目指す。

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対面を果たした無敗挑戦者と余裕の表情で向かい合った。井上は身長差9センチ、リーチ差7センチあるピカソと余裕の表情でフェースオフ(にらみ合い)を展開。握手は交わさず、軽く緊張感も漂った。井上が「この試合は自分にとって今後のキャリアを加速させる一戦だと思う」と意気込んだ。

4団体統一王者として世界記録を独走する6度目の防衛戦となる。井上と契約を結ぶ米プロモート大手トップランク社からSNSを通じ、世界王座をすべて統一した王者の年間4度防衛成功は76年のWBA、WBC世界ヘビー級統一王者ムハマド・アリ(米国)以来、49年ぶりの快挙と発表された。76年といえばアリがアントニオ猪木と戦った年でもある。その時のアリに並ぶ-。井上本人は記録へのこだわりはないものの、新たな歴史を刻むリングになることは間違いない。

公式会見には「初競演」する中谷も同席。26年5月、東京ドームでの対決を約束している。今回の挑戦者ピカソ、次戦で対戦予定の中谷と一緒に並んで座る異例の会見でもあった。この日、創刊103年の歴史がある米老舗専門誌パウンド・フォー・パウンド(PFP=階級を超越した最強ボクサー)ランキングの最新ランクが発表。1位だった3階級で4団体統一に成功したテレンス・クロフォード(米国)の現役引退に伴い、3位から2位に浮上した。3回目の1位奪取へ、射程圏内に入った。井上は「この試合でPFP1位に返り咲く気持ちでいきたい」と目標設定した。

ピカソから「世界ベルトはメキシコに帰る」と軽い挑発を受けた。すると井上は、こう言い返した。

「このベルトがメキシコに帰ることは100%ありません。ピカソ選手と戦うのはスーパーバンタム級で戦う上で1つ必要な防衛戦と認識でいるので土曜日に戦います」

リヤドで蓄積してきたエネルギーを27日にすべて爆発させる。

▽井上の挑戦者ピカソ 日本人ファイターを尊敬しているが、試合はサムライ・ナイトではなく、アステカ・ナイトになる。ベルトはメキシコに持って帰る。

◆ムハマド・アリ 本名・カシアス・マーセラス・クレイJr..。1942年1月17日、米ケンタッキー州ルイビル生まれ。60年ローマ五輪のライトヘビー級で金メダル獲得。プロに転向し、64年に22歳で世界ヘビー級王者に。9度防衛成功後の67年にベトナム戦争の徴兵拒否を理由にはく奪。71年の復帰戦で敗れるものの、74年にジョージ・フォアマンに勝利し、王座返り咲き成功し10度防衛。76年にアントニオ猪木との「格闘技世界一決定戦」で引き分け。84年にパーキンソン病と診断され、長期の闘病生活の後、16年6月に死去。通算成績56勝(37KO)5敗。身長191センチの右ボクサーファイター。

◆世界王座の変遷 1921年にWBA(世界ボクシング協会)が設立。63年にWBC(世界ボクシング評議会)が分裂し、66年から独自ルール、世界ランキングを決め、正式に2団体時代となった。83年、WBA傘下のUSBA(全米ボクシング協会)が母体となって独立してIBF(国際ボクシング連盟)が発足し3団体に。88年にWBO(世界ボクシング機構)がWBAから独立する形で設立。4団体時代となった。なお日本は70年にWBCに加盟し、40年以上もの間、2団体時代が続いたが、2013年にIBF、WBOに同時に加盟。日本でも4団体で世界挑戦可能に。