まさかもう一度「J1初シーズン」を取材することになるとは思わなかった。2012年のサガン鳥栖以来13年ぶり2度目。大ス…
まさかもう一度「J1初シーズン」を取材することになるとは思わなかった。2012年のサガン鳥栖以来13年ぶり2度目。大スポンサーを持たないリーグ最小級予算で、下馬評を覆した道を、ファジアーノ岡山と「再び」たどった。
鳥栖は5位、岡山は13位で残留を決めた。戦い方も共通していた。前線から積極的にプレスをかけ、豊富な運動量でボールを奪い、少ない手数で攻めきる。「走らない選手は使わない」方針がJ2時代から一貫していたのも一緒だ。
鳥栖は大型で屈強なFW豊田陽平が19得点を挙げたが、岡山は江坂任と佐藤龍之介が6得点でチーム最多を分け合い、エースは生まれなかった。ただ、ゴール裏でカメラを構えていると、鳥栖のピッチで豊田が放っていたのと同じ雰囲気を、ある選手から感じた。MF木村太哉(たかや)だ。
「岡山の27番、よく走るねえ」。J2時代から、アウェーチームを追ってきた記者やカメラマンによく感心された。主にFWとして起用されたが、ピッチ中を駆け回り、ボールを持った相手に迫るプレッシャーが尋常ではない。ファジアーノのサポーターも心得ていて、ボールに触れなくても歓声や拍手でたたえる。
「オフ・ザ・ボールでこれだけ声援をもらえる選手はそういないんじゃない?」と一度木村に尋ねてみた。
「プレスにいったとき盛り上がる感じは自分の原動力。サポーターと一緒にプレスをかけてる感じがすごくします」
佐賀で「サガンがJ1に上がって、何が変わりました?」とサッカー関係者に聞いて回った。「小学生から高校生まで、県内中のFWが相手ボランチを追っかけだした」との答えが印象に残る。鳥栖での豊田は骨身を惜しまない守備にも定評があったのだ。
鳥栖も岡山もJ1初年度の快進撃で県内の空気を確実に変えた。岡山の木村は「新スタジアム建設を求める署名がたくさん集まるなど、自分たちの背中を押してくれる力がどんどん強くなっている」と振り返る。
「当たり前でなかったこの光景を当たり前にしたい」と木村は願う。長くて厳しいシーズン、抜かずたゆまず走り続けることはたやすくないけど、それでも頼む。走れ、タカヤ!(大野宏)