ワールドカップ観戦の際に、ホテルや飛行機の予約など面倒ごとは多々あるが、開催国に到着したからといって安心はできない。な…
ワールドカップ観戦の際に、ホテルや飛行機の予約など面倒ごとは多々あるが、開催国に到着したからといって安心はできない。なかでも「移動」はトラブルがつきもの。蹴球放浪家・後藤健生は、これまでの苦い経験から早くも来年のワールドカップ取材への対策を練っているが…。
■道に迷う運転手
カタール・ワールドカップの決勝戦が行われたのはルサイル・アイコニック・スタジアムでした。8万9000人ほどが入る最大のスタジアムです。
ここも、シャトルバスが便利でした。
ところが、大問題があって、どういうわけかこのスタジアムでは運転手が道に迷ってしまうという事件が頻発したのです。
カタールには高速道路が縦横無尽に走っていて、車の量に比べて道路が(無駄に)広いのでワールドカップ期間中にも渋滞することはほとんどありません。ですから、スタジアム近くまでは何の問題もなく到達するのです。
ところが、そこからシャトルの停車場に行くルートでいつも運転手が道を間違えるのです。そのうち、バス前方に座っている乗客が騒ぎ出し、「右だ、左だ」と運転手にどなるので運転手はますますパニックにはまるという悪循環が起こり、バスはスタジアムを横手に見ながら何周も走って、ようやく到着するのです。
いや、とうとうスタジアムに到着することができず、近くの路上で乗客を降ろしたことさえありました。
■決勝戦当日のピンチ
そういえば、1994年のアメリカ・ワールドカップのときにもシャトルバス迷走事件がありました。
しかも、事もあろうに決勝戦当日のことです。
1994年大会の決勝戦はロサンゼルス郊外パサデナ市のローズボウルで行われました。市内からはかなりの距離があります。
ちなみに、来年のワールドカップで試合が行われるSoFiスタジアム(ロサンゼルス・スタジアム)は世界で最も近代的なスタジアムとの触れ込みですが、ロサンゼルス国際空港そばのイングルウッド地区にあるのでとても便利です。
ヨーロッパでもそうですが、最近は世界的に都心部の便利な場所にコンパクトなスタジアムを建設するのが流行のようです。とにかく、1994年の決勝戦はロサンゼルス市内から遠いローズボウルが舞台だったのです。スタジアム自体も、ただただ大きいだけで、屋根もまったくついていない前近代的なスタジアムでした。
■試合前から大騒ぎ
で、決勝戦の朝、いつものようにメディア用シャトルに乗ったのです。
メディア用シャトルは交通規制された(渋滞がない)ルートを走ることができるので、迅速にスタジアムに着けるはずでした。
ところが、運転手が道に迷って一般用のルートに入ってしまいました。しかも、運転手はスタジアムまでのルートを正確に把握していないようで、渋滞と迷走が重なってバスは立ち往生。車内は緊張に包まれました。
しかし、ラテンアメリカ系の放送局というのは大したもので、車内からいきなり各局の実況が始まりました。各国のアナウンサーやレポーターたちがスペイン語で「バスが渋滞にはまっている。これでは、とうてい試合開始に間に合いそうもない。隣にどこどこの国の記者がいるがとても困っているようだ……」などと、面白おかしく、大げさなレポートを始めたのです。
さて、来年のワールドカップでは輸送はうまくいくのでしょうか……。