はじめに糖尿病は一度発症すると、完全に「治す」ことは難しい病気です。しかし、多くの人は**発症の10年以上前から予兆(血…
はじめに
糖尿病は一度発症すると、完全に「治す」ことは難しい病気です。
しかし、多くの人は**発症の10年以上前から予兆(血糖の上昇傾向)**があり、生活習慣を整えることで予防することができます。
実際、世界保健機関(WHO)や日本糖尿病学会も「生活習慣の改善が最も有効な予防法」としています。
この記事では、糖尿病の発症メカニズムを踏まえ、“なりにくい体”をつくるための具体策を紹介します。
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1. 糖尿病を予防する最大のポイント ― 「血糖値の波」を抑えること
糖尿病は「血糖値の乱高下」によって、インスリン分泌の負担が増え、膵臓が疲弊して発症します。
つまり、血糖値を急上昇させないことが最大の予防策です。
血糖値を安定させるには、次の3つのバランスが重要です。
1.食事:糖質の摂り方を工夫
2.運動:筋肉を動かして糖を使う
3.睡眠とストレス管理:ホルモンバランスを整える
2. 食事での予防 ― 「量」より「順番」と「質」を意識
(1) 食べる順番の工夫
食物繊維 → タンパク質 → 炭水化物の順に食べることで、糖の吸収がゆるやかになります。
これを「ベジファースト」と呼び、食後高血糖を約30%抑えるという報告もあります。
(2) 糖質の種類を選ぶ
・白米より雑穀米や玄米
・パンより全粒粉パン
・甘味料はエリスリトールなど血糖を上げにくいもの
いわゆる「ロカボ食」=糖質を極端に減らさず、1食あたり20〜40g程度に抑えるのが理想です。
(3) 「プチ間食」は逆効果
「小腹がすいたらちょっと食べる」は、血糖を上げ続ける原因に。
3食を規則的に摂る方がインスリン負担が減ることが分かっています。
3. 運動での予防 ― 血糖を使う「筋肉のスイッチ」を入れる
糖尿病を予防する上で、運動は“最強の薬”です。
(1) 食後の軽い運動
食後30分以内の10〜15分ウォーキングで、血糖上昇を抑制できます。
(2) 日常に取り入れやすい活動
・通勤・買い物は1駅分歩く
・エスカレーターではなく階段
・立ち仕事・ストレッチで1時間に1回動く
「運動時間」よりも「運動の回数・こまめさ」が重要。
(3) 筋トレで基礎代謝を上げる
スクワット、背伸び、腕立てなどを週2〜3回。
筋肉は糖を取り込む“貯蔵庫”なので、筋肉量が多い人ほど糖尿病になりにくいと言われています。
4. 睡眠とストレス ― ホルモンバランスの盲点
睡眠不足は血糖値を上げるコルチゾールの分泌を促し、インスリン抵抗性を悪化させます。
また、ストレスによる交感神経の緊張も血糖を上げる要因です。
・睡眠は 1日6〜7時間 が理想
・寝る前のスマホ・カフェインを控える
・深呼吸・瞑想・軽い運動でストレスを緩和
「ストレス対策も糖尿病予防の一環」として意識しましょう。
5. 定期検診で“隠れ糖尿病”を見逃さない
糖尿病は症状が出ないまま進行する病気です。
健診で下記のような結果が出たら、早めに再検査を受けましょう。
・空腹時血糖:110〜125mg/dL
・HbA1c:5.7〜6.4%
これは「糖尿病予備群」と呼ばれ、放置すると数年で糖尿病に進行する可能性があります。
6. 家族歴・体質のある人は早めのチェックを
日本人は欧米人に比べ、インスリン分泌が弱く、肥満でなくても糖尿病を発症しやすい体質です。
家族に糖尿病の方がいる場合は、30〜40代からの定期検査が勧められます。
また、次のような人も要注意です。
・内臓脂肪が多い(腹囲が男性85cm、女性90cm以上)
・肝機能異常(脂肪肝・MASLD)を指摘された
・妊娠糖尿病の既往がある
まとめ
・糖尿病は「生活習慣の積み重ね」で起こるが、早い段階で予防できる。
・食事・運動・睡眠の3要素を整えることが発症リスクを下げる。
・血糖値を「上げすぎず・下げすぎず・安定させる」ことがカギ。
参考文献
1.日本糖尿病学会. 『糖尿病診療ガイド2024-2025』
2.Knowler WC et al. Reduction in the incidence of type 2 diabetes with lifestyle intervention. NEJM, 2002.
3.American Diabetes Association. Standards of Care in Diabetes 2024.
4.WHO. Global report on diabetes, 2023.
[文:池尻大橋せらクリニック院長 世良 泰]
※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。
池尻大橋せらクリニック院長・世良 泰(せら やすし)
慶應義塾大学医学部卒。初期研修後、市中病院にて内科、整形外科の診療や地域の運動療法指導などを行う。スポーツ医学の臨床、教育、研究を行いながら、プロスポーツや高校大学、社会人スポーツチームのチームドクターおよび競技団体の医事委員として活動。運動やスポーツ医学を通じて、老若男女多くの人々が健康で豊かな生活が送れるように、診療だけでなくスポーツ医学に関するコンサルティングや施設の医療体制整備など幅広く活動している。