「にこ、打て!」。観客席の大応援が、自信と不安が交錯するエースの背中を押した。高々と上がったトスを相手コートにたたき込ん…

「にこ、打て!」。観客席の大応援が、自信と不安が交錯するエースの背中を押した。高々と上がったトスを相手コートにたたき込んでいく。厳しいマークもなんのその。ブロックもパワーで弾き飛ばし、得点を量産。獅子奮迅の活躍を見せた。

1年生から主力として出場するも、苦杯をなめてきたこの舞台。プレッシャーを力に変え、三度目の正直でチームを頂点に導いた。優勝の瞬間、万感の思いがこみ上げて思わず涙がこぼれた。「命がけで最後につかみ取りたいという気持ちで戦った。つらいことも乗り越えてきてよかった」。

茨城県筑西市出身で、親元を離れて敬愛学園に入学。「人一倍責任感が強い子」と上原監督。厳しい練習で何度も怒られ、チームを勝たせられないことに責任を感じ、寮生活で一人、抱え込むことも。家族と会って相談できるチームメートがうらやましかった。

くじけそうなとき、心の支えとなったのは母のLINEメッセージ。泣きながらやり取りして必死に前を向き、努力を重ねた。大会前にもエールが届いた。「あなたが頑張っているから、私も頑張れてるよ」。力がみなぎった。

春高での目標は日本一。「最高の形で終われるように、プレーを磨き続ける」。頼れるエースがさらなる飛躍を遂げる。(松崎翼)