サッカーは「世界の共通言語」と言われるが、そのサッカーを追って世界中を旅する蹴球放浪家・後藤健生は、経験から東アジアの…

 サッカーは「世界の共通言語」と言われるが、そのサッカーを追って世界中を旅する蹴球放浪家・後藤健生は、経験から東アジアの国々に“ある提案”があるという。元日本代表チーム通訳フローラン・ダバディ氏の言葉をヒントにした、言語習得が容易になる「驚きのプラン」とは?

■元トルシエ通訳が代表監督に「ダメ出し」

 フィリップ・トルシエの通訳兼アドバイザーをしていたフローラン・ダバディ氏はこんなことを言っていました。

「フランス人なら、少し勉強すればイタリア語はすぐにしゃべれるようになる」

 そして、こう続けたのです。

「何年もユベントスでプレーしていたディディエ・デシャン(現フランス代表監督)がイタリア語をしゃべれないのはおかしい」

 まあ、ダバディ氏は語学の天才だからそう思うのであって、語学が得意でない人にとって外国語学習はそう簡単ではないとは思います。ちなみに、サッカーをやらせれば、たぶんダバディ氏よりもデシャン氏のほうがうまいはずです。

 しかし、いずれにしてもヨーロッパ人の中には何か国語もしゃべる人が多いのは事実です。

 とくにオランダとかスイス、エストニアといった小国の人たちは、自分の国の言葉が国際的に通用しないと思っていますから、大国の言葉をしゃべる人が多いようです(逆にイギリス人やアメリカ人は、世界中どこに行っても自国語が通じるので外国語をしゃべれない人がいっぱいいます)。

 かつては東ヨーロッパではドイツ語が地域内の共通語でしたし、外交官の間ではフランス語が共通語でした。また、第2次世界大戦後にソ連占領下の東ヨーロッパ諸国で社会主義政権が樹立されるようになると、ロシア語が地域の共通語のように扱われました。

 しかし、最近は世界中どこに行っても英語が共通語となっています。

「英語は文法が難しくないので外国語として覚えるのに向いている」という理由はあるでしょうが、要するに19世紀にはイギリス、20世紀にはアメリカが世界最大の経済大国であり、また世界最強の軍事力を持っていたから共通語になったのは間違いありません。

 もし今でもスペイン帝国が世界を支配していて「無敵艦隊」が本当に無敵だったら、スペイン語が共通語になっていたことでしょう。チンギスハン(ジンギスカン)のモンゴル帝国が長く存在し続けていたら、モンゴル語が共通語化していたかもしれません。

■元レアル・マドリード監督の「プラス面」

 とにかく、ヨーロッパの人たちの中には何か国語もしゃべれる人が多いのは確かです。

 ダバディ氏の言うようにフランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語は2000年前にローマ帝国の公用語だったラテン語が各地域で土着化したものですから、互いによく似ています(ロマンス語)。

 先日も、ブラジル代表カルロ・アンチェロッティ監督は記者会見の席でスペイン語訛りのポルトガル語をしゃべっていました。イタリア人のアンチェロッティはレアル・マドリード監督だったのでスペイン語がしゃべれます。そして、ブラジルで仕事を始めてからはポルトガル語でしゃべろうとしているのですが、まだ流暢ではありません。

「ラテン語偉大なり」です。もっとも、ラテン語と言う言葉自体も、もともとはラティウム=現在のラツィオ州の方言でしかなかったのですが……。

■欧州にあって「東アジアにない」ものは?

 ドイツ語とオランダ語、英語なども、同じ系統の言葉(ゲルマン語)ですから、互いに学習するのは簡単です。

 さらに、ゲルマン語もロマンス語も(スラブ語も)、同じインド・ヨーロッパ語族なので、やはり日本人が英語を習うよりもずっと簡単です。

 そして、もう一つ、彼らに有利なのはヨーロッパ語はどこもアルファベットという同じ文字を使っている点です。もちろん、各国のアルファベットは少しずつ違いますし、スラブ系の言葉の多くはローマのアルファベットではなく、キリル文字で書かれていますが、キリル文字もローマ字もギリシャ文字を改良して作ったアルファベットです。

 ところが、残念ながら東アジアには共通の文字がないのです。

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