サッカーは「世界の共通言語」と言われるが、そのサッカーを追って世界中を旅する蹴球放浪家・後藤健生は、経験から東アジアの…
■漢字が「共通文字」だった時代
昔は東アジアの中国、韓国、日本、ベトナムでは漢字が共通文字でした。たとえば江戸時代に朝鮮から通信使がやって来ると、日本の文化人との間では漢文を通じて意思疎通ができたのです(「漢文」は近代中国語とはまったく違う特別な書き言葉)。
しかし、今では韓国で漢字はほとんど使われなくなってしまいましたし、ベトナムでは漢字はまったく使われていません(ベトナムは漢字で書けば「越南」、ハノイは「河内」、ホーチミンは「胡志明」なのですが……)。
また、東南アジアのタイやミャンマーではインド系の文字が使われています。
1998年にバンコクでアジア大会があったとき、僕は3週間もバンコクに滞在することになったので、タイ文字くらい覚えて帰ろうと思ってタイ語の教科書を持っていったのですが、タイ文字は難しくて途中で断念してしまいました。
■あれっ、「タイ語」が聞き取れる!
ところが、あるとき気がついたのです。
「あれっ、数字はなんとなく聞き取れるぞ」、と。
調べてみるとタイ語では1から10はこうなります。ヌーン(1)、ソン(2)、サーム(3)、シー(4)、ハー(5)、ホック(6)、ジェット(7)、ペート(8)、ガオ(9)、シップ(10)……
お判りでしょう? 3(日本語では「さん」)が「サーム」、4(「し」)が「シー」。そのままではないですか? 「R」が「ハ行」音になることは、サッカーファンなら誰でも知っていますよね。ロマーリオ、ロナルドはブラジルでは「ホマーリオ」、「ホナウド」なのですから。だから、6(日本語では「ろく」)が「ホック」になっても不思議ではありません。
韓国語も似ています。1から10まで、イル、イ、サム、サ、オー、ユク、チル、パル、ク、シプです。
あれ、「10」は韓国語でシプ、タイ語では「シップ」。「33」は「サムシプサム」と言えば、タイでも韓国でも通じます。
■東アジア「共通文字」をつくろう!
これは当たり前のことです。
東アジア各国はかつて圧倒的な文明を誇っていた中国の漢字を借りて自国語を表記するようになりました。そして、「音読み」というのは当時の中国の発音を真似したものです。ただし、各国の人たちに発音しやすいように変化していきました。同じ「三」という漢字を「さん」とか「サム」と発音するのは当然。「十」も「シプ」という発音だったのでしょう。「プ」は母音を付けない「p」で、タイ人や韓国人(当時の国名で言えば「百済人」や「新羅人」)は「シプ」と発音するようにしました。ところが、日本人は最後の母音のない子音が苦手だったので(英語の「Strike」の「k」をそのまま発音できず、「ストライキ」または「ストライク」と読むのと同じで)「じゅう」と読むようなったわけです。
もしも、日本語、韓国語、タイ語に共通文字があったとすれば、互いの言葉をもう少し簡単に覚えられるのではないでしょうか。日本語と韓国語の漢字語の中には共通語がたくさんあります。地面の下を走る電車は日本語でも韓国語でも、発音は「ちかてつ」、「チハチョル」とちょっと違いますが「地下鉄」です。ベトナム語の「ありがとう」は「カムオン」ですが、漢字なら「感恩」です。
やっぱり、ぜひとも東アジア共通文字をつくるべきだと思います。どこの国でも反対論が噴出するでしょうが、ね。