サッカー日本代表が、歴史的な勝利を挙げた。唯一ワールドカップ全大会に出場し、最多5度の優勝を誇る「王国」ブラジル代表か…
サッカー日本代表が、歴史的な勝利を挙げた。唯一ワールドカップ全大会に出場し、最多5度の優勝を誇る「王国」ブラジル代表から、史上初めて勝利したのだ。なぜ快挙は成し遂げられたのか。また、来年の北中米ワールドカップに向けて、どのような意味を持つのか。ベテランのサッカージャーナリスト、大住良之と後藤健生が語り尽くした!
■W杯「優勝チーム」を次々と撃破
大住「森保一監督は、ワールドカップ優勝の経験があるチームに勝つのは難しいという話しをしていたけど、実は過去8つの優勝チームのうち、これで6つを潰したことになるんだよね。まだ勝てていないのは、イタリアとイングランド」
後藤「イングランドが来年3月に試合をしてくれるという報道が出ていたじゃない」
大住「しかもウェンブリーでやってくれるという話らしいんだけど」
後藤「そこで勝てば、残るはイタリアだけか。ただ、イタリアはこの頃、ワールドカップに出てきてくれないから対戦できないんだよなあ」
大住「今回はプレーオフを勝ち抜いて出てきそうだよ。イタリアには2013年のコンフェデレーションズカップで負けているんだけど、あのときには日本が先制したんだよね。そうしたら相手が本気になった。やはり、こういう相手とやるときは、前半は死んだふりをする必要があるということだね。イングランド戦が実現するなら、今回の前半のようにちょっとひどい試合をして、相手を安心させないとね」
後藤「そうだね。しかも、イングランドの選手は簡単に引っかかりそうだし」
大住「絶対に引っかかると思うよ。イタリア人は難しそうだけど」
■ブラジルの「あり得ない」選手交代
――死んだふりが効いたのか分かりませんが、ブラジルは本気を出していたでしょうか。
後藤「いいえ、まったく」
大住「出ていた選手たちは本気だったよ」
後藤「そりゃあ選手は本気だけど」
大住「カルロ・アンチェロッティ監督は今、テストをしている段階だから」
後藤「明らかにテストだよ」
大住「今回は、すごく国内組が多いチームだしね」
後藤「57分の交代(エースのヴィニシウス・ジュニオール、2点目を決めたガブリエル・マルティネッリ他、全3人が交代)なんて、勝つためにはまったく必要ないものだったもんね。偽のCFを置いて、左に移動したロドリゴが中央に入っていくという形のテストをしようとしていたようだね」
大住「よく分からないポジションを取っていたね」
後藤「あれは、明らかにテストなんだよ。チームの調子が良くて勝っているときならいいけどさ、後半に日本が1点取ってイケイケになったときにあんなテストをするなんてねえ」
大住「アンチェロッティにしてみれば、事故で失点したけど、あと1、2点取ればいいか、という感じだったんじゃないの」
後藤「そうかなあ。とにかく、本気の勝負では、あんな交代はあり得ない。テストするにしても、もう少し立て直してから選手交代すべきだったのに」
■名将も「死んだふり」にだまされた?
大住「あの交代が悪かったんじゃないかって後藤さんが質問したら、アンチェロッティはひと言、“NO”とだけ言って、席を立って帰っちゃったよね」
後藤「パラグアイの監督に質問したら、長く答えてくれたんだけどな。ブラジルで会見を放送してたらしくて、現地の記者からメッセージが来たよ。刺激して面白いコメントを引き出そうとしたんだけど、怒っちゃったね。それも確信犯だったという証拠だよ」
大住「アンチェロッティ自身も、日本の死んだふりにだまされたということだよね。そのくらいに高度な演技だったということかな」
後藤「ワールドカップ優勝経験国ともなると、簡単にだまされてくれるんだね。パラグアイ辺りだと日本を警戒してくれるから、引っかかってくれない」
大住「リスペクトと言えば聞こえはいいけど、メキシコも日本を恐れて守りを固めていたもんね」
後藤「オーストラリアなんて、ゴール前にバスを1台どころか2台も置いたもんね。恥も外聞もなく、負けない試合をしてきた」