サッカー日本代表が、歴史的な勝利を挙げた。唯一ワールドカップ全大会に出場し、最多5度の優勝を誇る「王国」ブラジル代表か…
サッカー日本代表が、歴史的な勝利を挙げた。唯一ワールドカップ全大会に出場し、最多5度の優勝を誇る「王国」ブラジル代表から、史上初めて勝利したのだ。なぜ快挙は成し遂げられたのか。また、来年の北中米ワールドカップに向けて、どのような意味を持つのか。ベテランのサッカージャーナリスト、大住良之と後藤健生が語り尽くした!
■柳の下に「3匹目のドジョウ」
――いろいろな見方ができると思いますが、今回の勝利をひと言で表すと、どんなものになるでしょうか。
大住「柳の下に3匹目のドジョウがいた」
――その心は?
大住「ドイツ、スペインに続いて、ブラジルも日本の“死んだふり”にまんまとやられたってこと」
後藤「そうそう。今度の死んだふりはさらに手が込んでいて、10日のパラグアイ戦からブラジルとの前半が終わるまで、計135分間も死んだふりをしていた。ただし、ブラジルと直近3試合の相手では違いがあったんだけど…。
いいや、まずは景気の良い話をしよう。森保一監督も言っていたけど、過去13度のブラジルとの対戦では、点差が開かなくとも、まったく手も足も出なくて本当にどうしようもない負け方ばかりだったんだよね。そんな相手をあたふたさせて勝ったんだから、気持ち良かったな」
大住「そうだよね。前半はこれまでのブラジル戦同様、非常にガッカリする前半だったけど、後半の頭に南野拓実だったと思うけど、ガーッとプレスをかけにいく姿を見て、ちょっと目が覚めただけかと思ったら、そのまま突っ走ってしまった。むしろ、眠っていたのはブラジルだったね」
後藤「前半も最初にいきなりプレスをかけにいって積極性を感じさせたんだけど、すぐに足が止まってしまった。後半の立ち上がりにもそういうことはやるだろうと予想しつつ、またカウンターで1点取られて試合は終わってしまうかなと思っていたら、そうはならなかった。これまでの対戦では、ブラジルは簡単にポンポンと点を取って、その後は攻めてこないような試合ばかりだったから、そういう意味で気持ち良かったのは間違いないね」
■ダメだった「ブラジルの守備」
大住「0-2から逆転なんて、Jリーグでも年に何回もあることじゃないし」
後藤「あってはいけないことでしょう」
大住「勝った側からすれば、こんなにうれしいことはないよ」
後藤「ブラジル側からしたら、あの日本の1点目につながったミスなんて、とんでもないものだよ」
大住「パスしようとしたら、その味方のすぐそばに南野がいて、うろたえていたよね」
後藤「芝に引っかかって倒れたの?」
大住「いや、僕が見たところ、バックパスを受けたファブリシオ・ブルーノが横にいるルーカス・ベラウドに渡そうとしたら、そのパスコースに上田がいて驚いてバランスを崩したようだった。僕も最初は足が滑ったのかと思ったけど、そうじゃなかったみたい」
後藤「明らかにバランスを崩していた。とにかく、あんなミスはあり得ない。2点目はオウンゴールだし。公式記録では中村敬斗のゴールだけど」
大住「中村のシュートは、枠には飛んでいるんだよね」
後藤「セリエAだったら、絶対にオウンゴールと判定されるよね。とにかく、ブラジルの守備がダメだった」
■すごかった「上田のヘディング」
大住「特に今回のメンバーは、最終ラインに非常に経験の浅い選手が並んでいた」
後藤「国内組だったもんね」
大住「GKも含めてね。そういう事情はあったけど、後半になって日本が良くなったのは確かだね」
後藤「それは確かだし、日本が強いからああいうミスが起こるわけだから」
大住「それに3点目の上田綺世のヘディングはすごかった」
後藤「上田はとんでもないことになってきたよ。本当に1試合に1点取るようになってきた。パラグアイ戦の後、ブラジル戦で先発するなら、ちゃんとパスを収めないといけないという話をしたけど、前半はそういうポストプレーができなかった。だから、ああ困ったなと思っていたけど、また点を取ったんだから見直しちゃうよね」
大住「本当にそうだよね。逆転ゴールを決める直前にも、伊東純也のクロスをヘディングしたけど、あれも良かったもんね」
後藤「決まっていても、おかしくなかった。後半は一生懸命に前からプレスをかける仕事もしていた。やはり、一皮二皮むけたのは間違いないね」