昨夏甲子園準優勝の関東第一が13日の第2試合に中越(新潟)との初戦を迎える。今年の関東第一は苦しいスタートだった。春の都…

昨夏甲子園準優勝の関東第一が13日の第2試合に中越(新潟)との初戦を迎える。今年の関東第一は苦しいスタートだった。春の都大会初戦で東亜学園に敗れ、12年以来、13年ぶりの初戦敗退が決まった。

 投打ともに戦力を立て直し、ノーシードから2年連続の甲子園出場を決めた。そんな関東第一のキーマンに迫る。

二刀流・坂本の成長が甲子園につながる

 関東第一と岩倉の対戦になった東東京大会の決勝戦は、7-1で関東第一が勝ち、2年連続10回目の優勝を決めた。決勝戦では、外野手との二刀流の坂本 慎太郎(3年)が先発し、投球数126、被安打7、四死球5、奪三振8、失点1で完投。打っては本塁打と二塁打を放ち、打でも勝利に貢献した。

 決勝戦にも表れているように、今年の関東第一は、投げてよし、打ってよし、守ってよし、走ってよしと、マルチな才能を有する坂本を中心としたチームであり、どのように起用すれば、その能力を生かし、チーム力を高めることができるかの模索でもあった。

 昨夏の甲子園では優勝こそ逃したものの、見事な準優勝だった。しかしその分、他の学校に比べ、新チームの始動が1か月ほど遅れた。そして秋季都大会では3回戦で先発の坂本が本塁打を打たれて敗れた。この時点では、坂本の起用法を含め、チームの戦い方も模索している段階であった。

 秋季都大会は1回戦で東亜学園に敗れた。2回無死一、二塁で、投前のバントを処理した坂本が、三塁に悪送球したことが大きく響いた。

 このため関東第一は秋春の公式戦を4試合戦っただけで、夏に臨まなければならなかった。前の代で常時出場していたのは、坂本と主将の越後 駿祐内野手(3年)だけで、今大会背番号1の石田 暖瀬(3年)も甲子園でベンチ入りしていたが、他の選手は公式戦の経験がほとんどなかった。

 そのうえ石田は、春は故障で試合に出場できなかった。秋から試合に出るようになった選手の中では、小林 響葵(3年)が秋季都大会の1回戦で本塁打を放つなどの活躍で、いち早く存在感を示していたが、春以降は調子を落としてスタメン落ちしていた。小林は、米澤 貴光監督が「はい上がってくれた」というように、この夏は外野手から一塁手に代わり、4割近い打率を残した。

 捕手は中濱 一葵(3年)と林 大耀(3年)の2人体制で、米澤監督は「2人で1人」と語っていたが、それでも十分に機能した。

投手陣は2本柱の1人・石田が鍵になるか

 投手陣はマルチな才能を秘める坂本は投手としての成長が素晴らしい。直球主体だった投球を反省し、チェンジアップ、カーブなど変化球をうまく使う投球スタイルに切り替えた。6月の大阪桐蔭との親善試合で、4回1失点の好投を収め、自信を掴んだ坂本は東東京大会で36回を投げて、わずか自責点2と抜群の安定感を誇る。

 石田は最速142キロの速球、120キロ後半のスライダーで勝負する本格派右腕。明治神宮大会で全国の舞台も経験しており、甲子園での活躍が期待される。

 松澤 琉真(3年)、石井 翔(2年)というタイプの異なる2人の左腕も、短いイニングなら力を発揮しそうだ。

 投手陣は球威のある石田と、変化球を駆使して試合を組み立てる坂本の2本柱が軸になる。ただし、坂本が登板した場合、外野の守りの要を失うことになる。その悩みを解消させたのが、今大会背番号5で、もともと三塁手や遊撃手だった大澤 歩夢(3年)の中堅手起用である。米澤監督は「うまくはまりました」と言い、大澤の中堅手としての力を評価する。

 打線は、坂本と越後という昨夏の甲子園でも活躍した2人が中心になるが、小林や大澤も結果を残し、厚みが出てきた。

 米澤監督の本音としては、「一芸を持った選手もいる」ということで、ベンチに25人くらい入れたいところだ。このように、東東京大会が終わってもなお、試行錯誤が続いているが、戦力を上げてきているのは確かだ。

 越後主将は、「甲子園で絶対に優勝します」と、力強く語った。先輩たちがあと一歩届かなかった全国制覇を目指す、夏の戦いが始まる。