智弁和歌山など強豪が登場し、甲子園球場に多くの観客が詰めかけた8日、球場近くの会議室では危機感の漂う集いが開かれた。 …

 智弁和歌山など強豪が登場し、甲子園球場に多くの観客が詰めかけた8日、球場近くの会議室では危機感の漂う集いが開かれた。

 今年度の高校球児の数は12万5381人。ピークだった2014年度に比べ、4分の1ほど減った。高校野球の将来を考える会合では日本高野連などの呼びかけで少子化に向き合い、普及を図る取り組みが紹介された。

 和歌山県高野連の高津亮専務理事は県内の選手数は「来年、1千人を割るのは確実です」。各校の監督が協力し、小・中・高の連携による普及活動をしているという。

 世代をタテに貫く連携に共感しながら思ったのは、他競技とも協力する横串のコラボに広げたらどうか、という発想だ。

 米国では季節ごとに違う競技を選ぶ「シーズンスポーツ制」が定着する。男子テニスの世界1位、ヤニク・シナー(伊)はアルペンスキーで国内のジュニア王者だった。

 複数の競技を楽しむ「マルチスポーツ」は近年、日本でも広まりつつある。競技ごとに使う筋肉は違うため、バランスの良い発達が見込める。相性が悪い指導者がいた場合、我慢せず他の競技に移ることへのハードルも下がりそうだ。

 高津専務理事は賛同しつつ、課題を挙げた。

 「熱心すぎるあまり、過密スケジュールに陥りがちな少年野球チームの活動期間を改革することが必要でしょう」

 約87万の和歌山県の人口が20年後には20万近く減るとの推計がある。少子化は日本という国家が抱える「不都合な現実」で、急に改善はしない。

 競技ごとに少ないパイを奪い合うのではなく、スポーツ好きの子どもの割合を増やしていく。

 人気のある高校野球界が音頭を取れば、インパクトは大きい。(稲垣康介)