まるで漫画のような結末だった。 3点を追う九回裏、2死満塁。カウントはフルカウント。打席には4番・横谷乙樹(3年)。渾身…

まるで漫画のような結末だった。
 3点を追う九回裏、2死満塁。カウントはフルカウント。打席には4番・横谷乙樹(3年)。
渾身のスイングで振り抜いた打球は、そのまま右翼スタンドへ吸い込まれていった。

「サヨナラ逆転満塁ホームラン」

 3―7からの一挙5点。鳥羽が準決勝で京都外大西を下し、京都大会の決勝へと駒を進めた。そしてその決勝の相手は……昨夏の日本一・京都国際だ。
 まるで運命に導かれるように、鳥羽は“約束された戦い”の舞台に立つ。

「京都やったら、京都外大西、京都国際になってくる」

 そう語っていたのは、4番の横谷自身だ。夏の大会直前の取材で、ライバルとしてあげた2校。まさにその言葉どおりに、まず京都外大西を破り、そして決勝で京都国際と対峙することとなった。

 偶然ではない。
 その舞台を、彼らは心の中で何度も描いてきた。

「まず京都大会優勝して、京都国際を倒している瞬間をイメージしています。京都国際の応援歌を聞きながら、自分たちのプレーをイメージトレーニングします」

 主将・坂尻慶裕(3年)は、そう語っていた。メンタル講習を通して、選手たちは明確な“目標”と“場面”を思い描き、それを現実に引き寄せてきた。

 もう一人、村上冬万(3年)は、こう語る。
「高校野球人生っていうのは、甲子園に行ける回数は5回しかない。そのうちのラスト1回なんで。その集大成としてベンチメンバーもベンチ外のメンバーも全員で戦っていきます」

 決勝も部員全員の意志でつかみに行く。

“京都国際を倒す”──その言葉に宿る覚悟と準備。今、鳥羽が見据えるのは、ただの勝利ではない。その先にある“全国制覇”という、より高い頂だ。

 決勝はまもなく幕を開ける。