(22日、第107回全国高校野球選手権静岡大会4回戦 東海大静岡翔洋4―3常葉大菊川=延長十回タイブレーク) 2点リー…

 (22日、第107回全国高校野球選手権静岡大会4回戦 東海大静岡翔洋4―3常葉大菊川=延長十回タイブレーク)

 2点リードで迎えた延長タイブレーク十回裏。九回までに117球を投じた常葉大菊川の大村昂輝投手(3年)は、気持ちを切り替えてマウンドに向かった。「町田(稔樹捕手)のミットに投げきればいい」

 春に出場した選抜大会の1回戦、聖光学院(福島)との試合が頭をよぎった。延長タイブレーク十回裏、今回と同じ2点をリードしながら、2死二、三塁から四球を与え、ボークと適時打で同点に追いつかれた。次のイニングで後輩にマウンドを譲り、チームは十二回にサヨナラ負けした。

 「仲間が取ってくれた2点を守り切れず、自分のせいで負けた」

 夏は甲子園で勝つ、と決意して臨んだ。しかしこの日、直球に本来のキレはなかった。だからこそ、「打たせて取るのは絶対に負けない」と、丁寧に投げ込むことを心がけ、三振はゼロでもアウトを積み上げた。

 十回裏1死二、三塁、この日2安打の東海大静岡翔洋・本多渉真選手(3年)に三塁打を浴び、同点に追いつかれた。さらに満塁とされたが、三飛で2死をとった。「選抜では、ここで一瞬の気の緩みがあった。気は抜かないぞ」。もう一度、気持ちをリセットした。

 初打席の石川太一選手(3年)への7球目。自信のある内角直球を投げたが、はじき返され、中前に落ちた。再び、サヨナラ負けを喫した。

 大村投手は打球の行方を目で追ったまま、仲間がベンチ前に戻っていっても、動けなかった。

 試合後、「ありがとう、ごめん、という気持ち」とチームメートらへの思いを語り、「自分のボールに弱さがあった。ピンチを乗り越えられない自分たちの弱さがあった」と振り返った。野球にさらに打ち込み、「直球で押すことも、かわすことも両方できる投手になりたい」(斉藤智子)