(21日、第107回全国高校野球選手権奈良大会3回戦 智弁学園16―0奈良) 「緩急をつけながら相手を翻弄(ほんろう)で…

(21日、第107回全国高校野球選手権奈良大会3回戦 智弁学園16―0奈良)

 「緩急をつけながら相手を翻弄(ほんろう)できれば」。奈良大会2連覇中の強豪・智弁学園を相手に、奈良の捕手、松本悠斗(3年)はそう考えて試合に臨んだ。智弁学園の初戦を見て策を練った。だが、相手はその読みをはるかに上回ってきた。

 3失点の初回は想定内。「徐々に緊張がとければ」。そう考えた矢先、二回表の先頭打者で右翼の頭を越える本塁打を浴びた。運ばれたのは「普段はあまり打たれるイメージがない」という90キロ弱の遅いカーブ。そこからは5連打を浴び、この回5点を失った。「打ち損じがない。秋や春とは違う打力だった」

 この日、盗塁も次々と決められた。それでも、四回には相手代走の二盗を阻止。肩には自信がなく、春から、集中的に取り組んできた。「あれは自分の集大成だった」

 進学校で練習時間も短い。「厳しくはないだろう」と入部前は軽く見ていた。いざ練習に取り組むと、高い集中力を当たり前に求められる雰囲気に圧倒された。

 「秋、春と近畿大会に出られたのはその集中力のおかげ」。そう語り、後輩に向けて「私学にも負けないほどのいい経験をしている。僕らの代わりに甲子園に出てほしい」と夢を託した。(周毅愷)