FIFAクラブ・ワールドカップに、浦和レッズが出場している。残念ながら、決勝トーナメント進出はならなかったが、世界の強…
FIFAクラブ・ワールドカップに、浦和レッズが出場している。残念ながら、決勝トーナメント進出はならなかったが、世界の強豪相手に大健闘した。だが、その「大健闘」は、何を意味するのか。サッカージャーナリスト後藤健生が検証する。
■選手の「半分以上」が外国人選手
インテルの選手たちは疲労し、クラブ・ワールドカップに集中できないような環境であり、また新監督がトレーニングを行う時間もほとんどない状態だった。そして、負傷者も多かった。
インテルが浦和レッズの組織的守備に手を焼き、結局は個人能力の違いで突破を図るような試合になったのは、そうしたチーム状態のためでもあった。
従って、インテルが浦和相手に苦戦したのは、ある意味で想定できたことであった。
しかし、それでもインテルの選手たちは個人能力の差で圧倒的に有利な位置にいた。
これも、考えてみれば当たり前のことだ。
ヨーロッパのトップクラブの一つであるインテルと、Jリーグのクラブである浦和では、クラブの財政規模、あるいは人件費(選手の報酬の合計)で数十倍の開きがある。
つまり、インテルは世界中から各国の代表クラスの選手を補強したグローバルなチームなのだ。選手の半数以上が外国人選手というわけだ。
いや、インテルだけではない。ヨーロッパのビッグクラブはどこも同様の状態。ボスマン評決の後、20世紀の終わりまでに各国で外国人選手の制限が撤廃され、また、有料テレビの放映権という形でヨーロッパのクラブの財政規模が急拡大。さらに、ヨーロッパの中でも中東マネーを取り入れたクラブは一層大きな資金を手にして、サッカー界を牛耳っている。それがマネーに毒されたサッカー界の現状なのだ。
その結果、中東からの資金を受け入れたメガクラブは、まさに「世界選抜」的なチームを作っている。
■日本人「100人以上」が欧州でプレー
1993年にJリーグが発足した頃には、世界第2の経済大国(日本)のビッグビジネスがバックについた日本のクラブは、ヨーロッパのクラブに遜色ない資金力を持っていた。だから、ブラジル代表キャプテンのドゥンガをはじめ、多くのブラジルやアルゼンチンの代表級の選手が何人もJリーグでプレーしていたのだ。
だが、その後のヨーロッパにおける財政ビッグバンを経て、ヨーロッパと日本のサッカークラブの財政力の差=戦力の差は急拡大してしまった。
日本のチームは今でも日本人選手が多数を占めている状態だ。
また、日本でプレーしている外国人選手はヨーロッパのビッグクラブの外国人選手よりも市場価値が低い選手ばかりとなっている(アンドレス・イニエスタなどの例外はあったものの……)。
さらに今では、日本は選手の輸出国(供給元)となっており、ヨーロッパのクラブでプレーしている日本人選手は100人を超える。そのため、日本代表クラスの選手のほとんどが海外でプレーしているのだ(そんな状況にありながら、それでもJリーグのチームがこれだけの戦力を維持できていることのほうが驚くべきことだ)。
■ワールドカップ「優勝以上」の難問
インテルと浦和のチーム力に大きな差があることは当然のことであり、その戦力差を克服してインテルを追い詰めたことは、やはり高く評価されていい。「守備一辺倒」に追い込まれはしたものの、やはり浦和の戦いは「大健闘」だった。
将来的には、Jリーグクラブの経営を拡大して(あるいは外資を導入して)、税制規模でもヨーロッパのクラブに対抗できるようにするしかない。
そうすれば、各国代表クラスの外国人選手が多数Jリーグでプレーするようになり、Jリーグの競技レベルは大幅に上り、ヨーロッパのいわゆる5大リーグに迫るものとなるだろう。そうなれば、日本人選手も自らの成長のために無理してヨーロッパのクラブでプレーする必要はなくなり、日本代表クラスの選手の多くがJリーグでプレーするようになるはず。
そうなれば、クラブ・ワールドカップのような大会で、日本のクラブはヨーロッパのクラブと互角の戦いを演じることができるだろう。
ただ、これは非常に険しい道であり、日本代表がワールドカップで優勝するよりはるかに難しいことなのかもしれない。