希少がんと闘う大阪桐蔭OBの福森大翔さん、森友哉に“ハグしていい?” 奇跡が感動を呼び、チームとスタンドが一体となったオ…
希少がんと闘う大阪桐蔭OBの福森大翔さん、森友哉に“ハグしていい?”
奇跡が感動を呼び、チームとスタンドが一体となったオリックスが勝利をつかんだ。本拠地・京セラドームで行われた15日の巨人戦。大阪桐蔭野球部OBでオリックスをスポンサードする不動産業「SENSE TRUST」(センス・トラスト)の協賛試合となったことから、今中康仁社長の発案で後輩の福森大翔(ひろと)さんが特別始球式に登板することになった。
福森さんは、2013年春夏の甲子園で、オリックス・森友哉捕手と主軸として活躍。大学卒業後、大手ハウスメーカーに勤務していた約4年前に希少がんを発症し、現在は抗がん剤治療で完全治癒を目指している。
「生きる希望を持ってほしい」と始球式を提案した今中さんに、福森さんも快諾。森は、キャッチボールの相手を務め当日を迎えた。同校OBの岩田稔さんと西岡剛さんが見守る中、オリックスの選手が寄せ書きした森の背番号「4」のユニホームを着た福森さんの投球は、森が飛び上がって捕球するほど力強く、高めに伸びた。
「(マウンドからホームプレートまでの)18メートルを投げようと励ましてきましたが、2週間前には5メートルを投げるのも腕が痛そうだったのに」と、森は驚く。大歓声の中、マウンドに駆け付け「投げられたやん」という森に、福森さんは「ハグしていい?」と返した。2人が抱き合った瞬間、スタンドは静寂に包まれた。音もない2人だけの世界。永遠に変わらぬ友情を確かめ合う至福の時間だった。
感動は、まだまだ続いた。森を「アニキ」と慕う主将の頓宮裕真内野手が、福森さんを励まそうと、選手に「登場曲」の変更を提案。森は「栄光の架け橋」、西川龍馬外野手は「拝啓、少年よ」、紅林弘太郎内野手は「やんちゃ坊主」、頓宮も「大丈夫」で打席に向かった。
「皆さんからの『頑張れ』のメッセージをいただき、このままでは死ねない!」
試合は、1点を追うオリックスが5回に宗佑磨内野手の適時打で追いつき、森の右前打で逆転するなど、この回、5得点で4連勝を飾った。試合後、頓宮、宗とともにお立ち台に上がった森。グランド隅で見守る福森さんを前に「今日は絶対にお立ち台に立つという強い気持ちで臨みました。僕たちもシーズン最後まで負けない気持ちで頑張ります。ひろとも負けないように頑張ってください」と声を詰まらせた。
「とにかく感謝の気持ちでいっぱいです。“有言実行”で本当にヒーローになる友哉を見て、私も頑張らないといけないな、と思いました。試合前に素敵なユニホームをいただきました。皆さんからの『頑張れ』のメッセージをいただき、このままでは死ねない! まだまだ生きたいと思いました」と福森さんは声を振り絞った。
福森さんは、健康の大切さや希少がんへの理解を深めてもらい、保険外治療に役立てようと、クラウドファンディングを7月中旬まで行っている。感動の舞台を整えた今中さんは「本当に提案してよかったです。クラウドファンディングにも皆さんの気持ちが集まってくれたらいいなと思います。来年以降も福森さんが登板できるようにしたいと考えています」と語る。
「今日は、ひろとのことを考えるだけでずっと泣きそうやったんです。自分の打てないとか、どっか痛いという苦しさは、ひろとと比べたら屁でもないのでやるだけかなと思っています」と森。オリックス選手に、困難に立ち向かい前を向いて進むことの大切さを教えてくれた1日だった。(北野正樹 / Masaki Kitano)