移籍即スタメン出場し、第2打席で左中間席へ1号ソロ■ 広島 5ー4 巨人(13日・マツダスタジアム) ソフトバンクから巨人にトレードで移籍したリチャード内野手が13日、敵地マツダスタジアムで行われた広島戦に早速「7番・三塁」でスタメン起用さ…

移籍即スタメン出場し、第2打席で左中間席へ1号ソロ

■ 広島 5ー4 巨人(13日・マツダスタジアム)

 ソフトバンクから巨人にトレードで移籍したリチャード内野手が13日、敵地マツダスタジアムで行われた広島戦に早速「7番・三塁」でスタメン起用され、5回の第2打席で左中間席へ1号ソロを放り込んだ。2019年と2020年にソフトバンクの2軍打撃コーチとしてリチャードを指導した野球評論家・新井宏昌氏が、“未完のロマン砲”の圧倒的な強みと課題を指摘する。

 前日12日に秋広優人内野手、大江竜聖投手との1対2のトレードが発表されたばかりのリチャード。2回2死一塁での第1打席は、広島先発の左腕・森翔平投手に外角低めのチェンジアップを振らされ三振に倒れた。しかし5回先頭で迎えた第2打席では、カウント1-1から真ん中高めに甘く入った森の143キロのストレートをとらえると打球は左中間席に飛び込んだ。

 ソフトバンクの1軍ではブレークし切れなかったリチャードだが、2軍のウエスタン・リーグではプロ3年目の2020年から昨年まで、5年連続本塁打王に輝き、そのうち4度は打点王との“2冠”。長打力は尋常ではない。

 リチャードの2年目と3年目に指導した新井氏は、「彼は最初、アウトコースのストライクに手が出ませんでした。『すごく遠くに見える』と言ってきました」と回想する。「そこで、軸足(右足)をバッターボックスのホームベース側の白線の近くに置き、左足は少し引いてオープンスタンス気味に構え、外角いっぱいの球をバックスクリーンへ打つつもりで立ったらどうか、と提案しました」。このアドバイスが効き、2軍で持ち前の長打力が開花。若手期待株として注目されるようになった。リチャードのスタンスは、基本的にいまも変わっていないという。

「パワーはNPBトップクラス。スイング自体、変える必要はないと思います。1軍で本塁打王を取れるだけのものがある。全方向にホームランを打てる力があるので、引っ張りにかかる必要もない。バックスクリーン目がけて打てば、コースの違いや球速の違いによって、90度(フェアゾーン)のどこかに強い打球が飛んでいくはずです」新井氏はこう太鼓判を押す。

「鷹には見切られてしまったが、巨人には先入観がない」

 にも関わらず、ソフトバンクで足掛け8年、1軍で大成できなかった理由はただ1つだ。「私も2年ほど付き合いましたが、気持ちがやさしい選手で、戦う勇気、粘り、根気といった面で弱いところがあるのです」と指摘する。「力量の劣る2軍の投手からは打てますが、1軍の投手はコントロールが違う。苦手なコースや球種があるとなれば、徹底的にそこを突いてきます。リチャードに、狙った球は絶対に逃さない、その代わり追い込まれるまで他の球には手を出さないくらいの強い気持ちがあればいいのですが、徹底できない」と続ける。

 左腕の森から打った移籍1号については、「最初の対戦相手が左投手だったのは、ラッキーだったと思います。右投手にツーシーム系で内角を突かれると怖さを感じるでしょうから」と分析した。

 いずれにせよ、リチャードにとって今回のトレードは千載一遇の好機である。新井氏も「ソフトバンクには十分チャンスをもらった上で、ついに見切られてしまった形ですが、巨人はリチャードに対し先入観がない。ホームランが出たので、しばらくはチャンスをもらえるのではないでしょうか」とうなずく。

 そして「精神的に強くなってほしいと思います。ここでやらなければ後がない、というくらいの気持ちを出せば“化ける”かもしれません」とエールを送る。NPB屈指の長距離砲が、いよいよ実力を発揮するのか……。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)