「選抜高校野球・2回戦、健大高崎4-3敦賀気比」(23日、甲子園球場) 5球で十分だった。小走りでマウンドに向かう背番号1が拍手と大歓声に包まれる。健大高崎(群馬)の石垣が今大会屈指の投手であると認められている証拠。それでも「プレッシャー…
「選抜高校野球・2回戦、健大高崎4-3敦賀気比」(23日、甲子園球場)
5球で十分だった。小走りでマウンドに向かう背番号1が拍手と大歓声に包まれる。健大高崎(群馬)の石垣が今大会屈指の投手であると認められている証拠。それでも「プレッシャーは感じなくて、ただ抑えようと」。エースとして帰ってきた17歳を、聖地が優しく迎え入れた。
1点リードを死守した九回2死一塁。好打者・岡部を迎え、下重から「頼んだぞ」とバトンを受け取った。「あとは抑えます」と、なぜだか敬語で返答。捕手・小堀とグータッチを交わし、復活の舞台に立った。
1球目、いきなり150キロでストライク。甲子園にどよめきと歓声が交錯した。「真っすぐが走っていた。指のかかりもめちゃくちゃ良かった」。2球目は外角高めに外れたが152キロ。続く151キロで追い込んだ。1球ごとにどよめきが起こる。4球目に再び152キロを記録すると、ちらりとスピードガンを見た。
「まだいけるな」
全球直球を心に決め、最後は152キロで遊飛に。小さく右拳を掲げた。
13日の練習試合で左脇腹を負傷し初戦は登板がなかった。状態が懸念された中、不安を払拭する投球。痛み止めも服用しておらず「アドレナリンが出て10割に近い力で投げられた。回復は早い」と明かす。青柳博文監督(52)も「先発もあり得ます」と次戦に期待を寄せた。
“ケガの功名”もあった。「軸足の使い方とか腕の振りとかを、投げられない期間で調整できた」とは生方啓介部長(43)。大舞台でも力を発揮できるメンタル面の成長も示した。
昨秋の関東大会で158キロを計測し、注目度が急上昇。ただ右腕は「記憶からは消しています」と笑う。「まだまだ良いボールが投げられる。ここがゴールじゃない」。2度目の頂点へ、本領発揮だ。
◆石垣 元気(いしがき・げんき)2007年8月16日生まれ、17歳。北海道登別市出身。180センチ、78キロ。右投げ両打ち、投手。市立西小1年時に柏木ジュニアーズで野球を始め、西陵中では洞爺湖シニアに所属。健大高崎では1年春からベンチ入り。50メートル走6秒2、遠投110メートル。