フリースタイルスキーの世界選手権は19日、スイスのサンモリッツで第2日があり、男子モーグル決勝で2022年北京冬季五輪銅メダルの堀島行真(いくま)(トヨタ自動車)が89・03点で、17年以来、4大会ぶり2度目の優勝を果たした。女子モーグル…
フリースタイルスキーの世界選手権は19日、スイスのサンモリッツで第2日があり、男子モーグル決勝で2022年北京冬季五輪銅メダルの堀島行真(いくま)(トヨタ自動車)が89・03点で、17年以来、4大会ぶり2度目の優勝を果たした。女子モーグル決勝は出場4回目の冨高日向子(多摩大ク)が、この種目では13年の伊藤みき以来となる銀メダルを獲得した。中尾春香(佐竹食品)は6位だった。
■攻めた堀島、勝負を懸けた大技
堀島は悩んでいた。
攻めるか、確実性か。
男子モーグル、上位8人に絞られた決勝2回目。最終滑走でスタートに立った27歳は腹をくくった。「よし、今季の集大成を見せてやる」
スピードに乗った第2エアで、繰り出した空中技は「コーク1440」。軸を斜めに4回転する大技だった。成功者は世界でもごくわずか。堀島自身、予選や決勝1回目では披露していなかった。
今季のワールドカップ(W杯)はこの技を習得しようと、失敗を覚悟で果敢に飛んだ。「周りから反対されても、ほぼ全試合で貫いた」。難度を下げれば優勝できそうな試合でも、目先の勝利より将来を見据えた。
昨年5月からノルウェーに拠点を構えたのも、この技の練度を高める狙いがあった。夏場でも実戦に近い、屋内ゲレンデで練習を積んだ。W杯での成功率も徐々に高まり、手応えもつかみつつあった。
ただ、世界選手権となれば、「わけが違う。勝ちにこだわる」。前日まではより安定感のある技の構成を描いていた。だが、ライバルたちも高得点をマーク。予選4位から決勝に進み、最後の最後に封印するはずだった大技を完璧に決めた。2位以下を6点以上、引き離しての圧勝だった。
初優勝した2017年は19歳だった。無名の大学生が世界の頂点に立ち、「いきなり人生が変わって戸惑った」。あれから8年、風格を漂わせる王者は「もっと成長したい」。視線は来年のミラノ・コルティナ五輪へ。大技に磨きをかける。(サンモリッツ=山口裕起)
■4度目の大舞台、殻を破った冨高
驚きを隠せなかった。4大会連続の舞台で初めて表彰台に立った女子モーグル2位の冨高は「うれしすぎて実感が湧きません」。
決勝1回目は6位につけ、2回目に「すべてを出しきった」。得意のターンや空中技で高得点をマークし、優勝した最終滑走のラフォン(仏)が滑るまでトップだった。
順位が確定するまでの数分間は「めっちゃドキドキ。夢のような時間だった」。惜しくも悲願はならなかったが、満面の笑みでライバルに拍手を送った。
今季のワールドカップ(W杯)は表彰台こそなかったが、安定した成績を残していた。大舞台で一皮むけた姿を見せた24歳。「完成度は高くなってきた。今回のような滑りを続けて、もっと上をめざしたい」と決意を新たにした。(山口裕起)