第101回箱根駅伝(1月2、3日)で4位の早大は、次回大会優勝を目標に掲げる。3冠を達成した11年以来、15年ぶりの制覇へ、キーマンは「山の名探偵」の異名が浸透した工藤慎作(2年)だ。山上りの5区で1年6位、2年2位と好走。来季は箱根5区…

 第101回箱根駅伝(1月2、3日)で4位の早大は、次回大会優勝を目標に掲げる。3冠を達成した11年以来、15年ぶりの制覇へ、キーマンは「山の名探偵」の異名が浸透した工藤慎作(2年)だ。山上りの5区で1年6位、2年2位と好走。来季は箱根5区区間記録(1時間9分11秒、青学大・若林宏樹)、マラソン日本学生記録(2時間6分5秒、青学大・黒田朝日)のダブル更新を狙う。チームは「駅伝強化プロジェクト」としてクラウドファンディング(CF)を31日まで実施中。花田勝彦駅伝監督(53)は「一緒に戦っていただきたい」と呼びかけている。

 「山の名探偵」の勢いは、とどまることを知らない。工藤は1月の箱根駅伝5区で1時間9分31秒の区間2位の力走で3人抜き。その1か月後の日本学生ハーフマラソン(2月2日、香川・丸亀市)で日本学生歴代4位となる1時間0分6秒をマークして初優勝。「マークされる存在になっても、そこで勝つことが学生界のトップ。今後もロードで強さを発揮したい」と力強い。「箱根駅伝優勝が一番大きな目標」。新チームで目指す15年ぶりの頂点へ、最高のスタートを切った。

 国民的人気漫画「名探偵コナン」の主人公・工藤新一と名前が似ており、メガネをかけた風ぼうから、2年前から定着した愛称は「山の名探偵」。今年の箱根の往路、日本学生ハーフは「真実はいつも一つ」の左手を前に突き出す決めポーズでゴールするなど「原動力になっている」と注目をエネルギーに変えている。

 新シーズンはフルマラソンに初挑戦する。「一定のリズムで押し続けることが得意」と自信を持ち、青学大・黒田の日本学生記録も「達成不可能な目標ではない。5分台は出したい」と意欲的だ。その先に見据えるのは28年ロサンゼルス五輪。代表入りへは選考レースのマラソングランドチャンピオンシップ(MGC、27年秋開催)の出場が第一関門で「3年生で出場権を獲得したい」。MGC参加標準記録(2時間6分30秒)が一つの目安だ。

 さらに、ロス五輪へ向けて新導入された「ファストパス」取得も視野。27年3月までに日本記録(2時間4分56秒)よりも57秒速い設定タイム(2時間3分59秒)をクリアした最速選手1人がMGCを待たずに代表に内定するが、花田監督も「そのくらいの可能性を感じる」と期待。ロス五輪から逆算し、本気で目指す。

 箱根の山上りで話題を集めたが、平地でも強さを増してきた。上級生となる来季は「全てで区間賞を取ることが理想」と学生3大駅伝への思いも強い。特に箱根5区は「区間新記録を目指します」と貪欲だ。「山の名探偵」の新たな挑戦が早大15年ぶり箱根路制覇という難題を、解決へと導く。(手島 莉子)

 ◆工藤 慎作(くどう・しんさく)2004年11月10日、千葉・船橋市生まれ。20歳。八千代松陰高時代の21、22年に5000メートルでインターハイ出場。23年、早大スポーツ科学部入学。学生3大駅伝は1年時に出雲4区10位、全日本4区13位。箱根5区6位。2年時は出雲6区2位、全日本8区3位、箱根5区2位。今年2月の日本学生ハーフマラソンで日本学生歴代4位の1時間0分6秒でV。自己ベストは1万メートル28分31秒87。5000メートル13分56秒60。168センチ、53キロ。

 ◆早大 正式名称は陸上競技部ではなく競走部。1914年創部。20年の第1回箱根駅伝に出場した4校中の1校(他は東京高等師範学校=現・筑波大、明大、慶大)で「箱根オリジナル4」と呼ばれる伝統校。箱根優勝13回。出雲優勝2回、全日本は92年の初出場初優勝から4連覇を含めて5勝。10年度は学生駅伝3冠。3大駅伝計20勝(歴代3位)。練習拠点は埼玉・所沢市。タスキの色はえんじ。主なOBはマラソン元日本記録保持者の瀬古利彦氏、大迫傑ら多数。