大塚達宣インタビュー 後編(前編>>) 今季、初めての海外挑戦でイタリア・セリエAでプレーする、男子バレー日本代表の大塚達宣へのインタビュー。その後編では、同リーグのペルージャでプレーする石川祐希との対戦、3年後のロサンゼルス五輪への思いな…

大塚達宣インタビュー 後編

(前編>>)

 今季、初めての海外挑戦でイタリア・セリエAでプレーする、男子バレー日本代表の大塚達宣へのインタビュー。その後編では、同リーグのペルージャでプレーする石川祐希との対戦、3年後のロサンゼルス五輪への思いなどを聞いた。


イタリア・セリエAのミラノでプレーする大塚達宣

 photo by ZUMA Press/アフロ

【イタリアで対戦した石川祐希は「日本代表とはまた違う」】

――セリエAのデビューは、前半第5節(現地10月27日)のホームゲーム、ヴェローナ戦での途中出場でしたね。

「緊張しましたね。ケガから復帰してボールを触り出したのがその週だったので。スパイクは禁止されていましたし、まさかの出番だったんです。

 ただ、自分がメンバーチェンジでコートに入った瞬間、アリーナで大歓声が上がりました。イタリアでそうなるとは思っていなかったのが正直なところです。チームのイベントなどで応援団やクラブのファンの方々と関わる機会があり、そこでも積極的に話すことで『応援してもらえる選手になれたらいいな』と考えていたので、あれほどの声援を送ってもらえたことは純粋にうれしかったです」

――レギュラーシーズン中には、日本代表の主将・石川祐希選手が所属するペルージャとの対戦もありましたね。特に後半第9節(現地2月16日)では、大塚選手が先発で、石川選手が第2セット途中からの出場での対決となりました。

「取り立ててシーズン中に連絡することはないですが、相手にいると意識はしますよね。あと、直接会ったら話が止まらないです(笑)。

 イタリアでの(石川)祐希さんの姿は『日本代表の時とはまた違うな』と感じました。10年近くイタリアでプレーされていて、いろいろと試行錯誤して今のような立ち振る舞いや表情をされていると思うんです。プレーはもちろんすごいですが、自分はそうした一面に目がいきましたね。堂々とされている姿を見て、『これだけ培ってきたものがあるんだな』とひしひしと感じました」

【ロサンゼルス五輪までに「いろいろと挑戦したい」】

――大塚選手も、積み重ねる、その第一歩を踏みしめている段階だと思います。

「もちろん、1シーズンで祐希さんを超えることはできないですし、自分に合った進み方や環境との向き合い方があります。そのなかでも、やはり表情やジェスチャーが日本にいる時よりも大事だと感じますね。祐希さんの姿を見ていても、その理由を実感しました。

 例えば、普段の練習中の振る舞いや表情に関してもそうです。日本だと言葉が通じる分、すんなり耳に入ってきますし理解もできますが、イタリアでは口や手の動きまで見て聞き取ろうとしなければまったくわからない。そもそも自分は1年目の立場で、こちらが必死に取り組む姿勢を見せることで周りもそれに応えてアドバイスをくれるわけです。 

 逆に、少しでもモチベーションが低いような姿や表情を浮かべていると、『今日の大塚はどうしたんだ?』と周りに気を遣わせてしまいます。まだまだ100パーセントの言葉で伝えられない分、ジェスチャーも交えてコミュニケーションをとることが大事だと考えています」

――すでに海外でプレーすることに慣れた印象ですね。

「実際にこっちに来て思うのは、もし大学時代にイタリアに渡ったとしても3カ月の短期留学になるので、『もったいないな』『一瞬で終わっていただろうな』ということ。大学生の時点では自信もなかったので、このタイミングでよかったですね」

――すでに五輪を2度経験していますが、3年後のロサンゼルス五輪など、次のステップをどのように考えていますか?

「パリ五輪では東京大会と比べて選手としてできることも増えていましたし、満足している自分と、『もっともっとやれるようになりたい』と思っている自分がいました。次のロサンゼルス五輪までは、こうして海外でプレーしているのもそうですが、自分にとっては"いろいろと挑戦したい期間"です。

 そうはいっても、『何が何でもロサンゼルス五輪のメンバーに残ってやるんだ』と気持ちが先走っているわけではなくて、今はセリエAでプレーしていること自体がとても楽しいですし、このミラノというチームで勝ちたい。さらに言えば、『今日教えてもらったことを、明日にトライしてみたい』という具合に、目の前のことひとつひとつに対して、とても充実感があるんです。その繰り返しだと思うので。もちろん最終的には五輪に行きたいですが、そこにたどり着くために日々コツコツやっていることは間違っていないと思っています」

【プロフィール】

大塚達宣(おおつか・たつのり)

2000年11月5日生まれ、大阪府出身。ミラノ(イタリア)所属。身長195cm。アウトサイドヒッター。公益財団法人日本バレーボール協会のJVAエリートアカデミー生として才能を発掘され、中学時代はパンサーズジュニアで全国制覇、洛南高校時代も3年時に春高優勝を果たした。早稲田大学でも下級生時からレギュラーを務め、日本一を経験。日本代表にも名前を連ね、五輪には東京大会とパリ大会の2度出場している。大学在学時から所属していたパナソニックパンサーズ(現・大阪ブルテオン)を昨季限りで退団し、2024-25シーズンはイタリア・セリエAのミラノでプレーする。