5年ぶりに東北新人で優勝 粘り強いオールコートマンツーマンとルーズボールに食らいつく姿からは、今年に懸ける強い思いが見えた。 …
5年ぶりに東北新人で優勝
粘り強いオールコートマンツーマンとルーズボールに食らいつく姿からは、今年に懸ける強い思いが見えた。
2月1日と2日にわたり、CNAアリーナ★あきたで行われた「令和6年度 第35回東北高等学校新人バスケットボール選手権大会」。男子は走力で圧倒した仙台大学附属明成高校(宮城県)が優勝を遂げた。令和2年度と3年度は新型コロナの影響で大会が中止になり、ここ2年は帝京安積高校、福島東稜高校ら福島勢が優勝。仙台大明成が東北新人を制したのは、実に5年ぶりのことだった。
2023年6月に前指揮官である佐藤久夫コーチが急逝してからの2年間、仙台大明成はOBの畠山俊樹コーチと高橋陽介アスレティックトレーナー指導の下、試行錯誤の時間を過ごしてきた。2023年のインターハイではベスト8に進出し、U18日清食品トップリーグや東北ブロックリーグで奮闘してきたものの、ウインターカップでは、2023年は福岡第一高校(福岡県)、2024年は日本航空高校(山梨県)といった留学生を擁する有力校と1回戦で激突し、その高い壁を乗り越えることはできなかった。だが、ディフェンスで粘れる力はついており、徐々に“畠山色”は出始めていた。
今年のチームは、下級生のころから試合に出ていた選手が多く、これまでの悔しい思いが、東北新人でのディフェンスやボールへの執着心に現れていた。明成の試合を見た東北の指導者たちからは、こんな声が聞こえてきた。
「東北に泥臭いバスケが戻って来た!」
大型化からスピードバスケへ
畠山コーチが就任してからの2年間、特に取り組んできたのがスピードある攻防とディフェンスだ。
振り返ると、近年の仙台大明成は大型化にチャレンジしていた。当時、佐藤コーチが目指したのは、「大きな選手が小さな選手と同じプレーができてこそ、大型化に意味がある」というもの。ゆえにチーム作りは時間を要したが、サイズがあっても機動力あるチームを作り、山内ジャヘル琉人(大東文化大学→川崎ブレイブサンダース)、山﨑一渉(ラドフォード大学)、菅野ブルース(千葉ジェッツ)、内藤晴樹やウィリアムス ショーン莉音(ともに白鷗大学)らを育て、2020年には大型チームでウインターカップを制する成果を残した。
しかし、年々サイズダウンしてきたことにより、チーム作りの方向性を見直さなければならなかった。今年はさらに小さくなるため、今まで以上に高さのハンデを覆すために「ディフェンス、リバウンド、ルーズボールを支配し、走り切って、守り切る」(畠山コーチ)ことを徹底しなければならない。そう、畠山コーチ自身が2009年にウインターカップ初優勝したときのような、原点回帰のスタイルを目指しているのだ。
カギを握るのは3人のガード陣
チームの中心は司令塔の小田嶌秋斗、ドライブが得意な長身ガード三浦悠太郎、リバウンドやディフェンスで体を張る檜森琉壱、シューターの荻田航羽、シックスマンで司令塔の新井慶太(以上2年)。そして、昨夏に日・韓・中ジュニア交流競技会の代表に選出されたインサイドの今野瑛心(1年)だ。時には得点力がある165センチの小田嶌が攻め、186センチの三浦がポイントガードになることもあり、3人のガードが臨機応変に仕掛けている。
東北新人では、予選リーグで秋田工業高校(秋田県)に81−48、八戸学院光星高校(青森県)に78−45、準決勝で福島東稜高校(福島県)に80−66、決勝では一関工業高校(岩手県)に70−55で走り勝ちし、東北では頭一つ抜ける存在感を示した。5年ぶりの優勝に畠山コーチは「今年は去年のメンバーが残っているので、勝つためのチーム作りを追求したい。そんな中で今大会は、3人の主力がケガで欠場した中で優勝できたので、その経験を自信につなげていきたい」と総括した。
一方で、多くの課題も見つかった。
特に一関工業高校(岩手県)との決勝では、突き放したいところでガードの判断ミスが出てしまい、詰めの甘さを露呈。大会を通しては、1年生のベンチメンバーを投入すると、ミスを多発して点差を縮められるシーンもあった。そうした課題については「このチームが成長できるかは、1年生の戦力台頭と2年生のガード次第」と畠山コーチは厳しい視点を持っている。コーチから指摘を受けた小田嶌、三浦、新井らガード陣たちも、優勝という結果にも気を引き締める。
「東北新人ではミスが多かったので、自分がもっと成長しなければなりません。2年生は全員が同じ方向を向いているので、下級生を引っ張って強気で戦いたい」(小田嶌)
「自分は去年から試合に出ているので、今年はさらに背中で見せられるようなリーダーシップを取っていきたい。去年から積み上げてきたディフェンスは今年も変わらずに継続して、もっとシュート力をつけて、全員で日本一を目指します」(三浦)
「今年は身長が低いので、自分たちのやるべきディフェンス、リバウンド、ルーズボールを徹底して、全員が共通意識を持って、結果にこだわります」(新井キャプテン)
原点回帰の走力バスケで挑む今年の明成。課題は多いが、意欲的な選手が多いため伸びしろは十分。選手たちが言うように「やるべきことの徹底」こそが、成長へのカギとなる。
文・写真=小永吉陽子