今季から牛骨などによるバットの「表面加工」が解禁される。何が変わるのか。木製バットの製造販売を行う株式会社ヤナセインターナショナルを直撃。同社の契約選手である阪神・近本光司外野手(30)の担当を務める北村裕さん(49)に従来のバットとの変…
今季から牛骨などによるバットの「表面加工」が解禁される。何が変わるのか。木製バットの製造販売を行う株式会社ヤナセインターナショナルを直撃。同社の契約選手である阪神・近本光司外野手(30)の担当を務める北村裕さん(49)に従来のバットとの変化や、圧縮バットとの違いなどを聞いた。
日本野球機構(NPB)が今季から公認バットに関する規則の一部を見直した。「プロ野球公認バットに関する規則」の第5条(品質基準)に禁止事項として明記されていた「圧縮加工(牛骨など硬質でのしごきを含む)」から、「(牛骨など硬質でのしごきを含む)」の記述が除外された。
NPBは禁止していた牛骨などによる表面加工について、第三者機関に調査を依頼。バットの表面を牛骨などでしごいて圧力を加えても、反発係数の数値はほとんど変わらないとの結論が得られたため、昨年10月の野球規則委員会で解禁を決定。その後、12球団に正式に通達された。
今回許可された牛骨などでのしごきを加えたバットと、1981年シーズンからプロ野球で使用禁止となった「圧縮バット」は別物だ。
圧縮バットはヤチダモという木の道管に特殊な液体を注入し、木を硬化させて打球面が剝がれにくい加工を施していた。加工されたバットは反発力が強く、打球の飛距離が伸びるとされた。そのため打者が有利になり過ぎていると指摘され、禁止になった。
牛骨などでのしごき加工は米国のメーカーでは一般的な加工法で、表面を硬くすることや、木目を埋めることが目的とされる。ヤナセ社の北村さんは「圧縮バットが禁止される前は、圧縮する作業の中に牛骨で締めるという作業が入っていた。昔の人はバットが届いたら自分で牛骨や瓶を使ってしごいたりしていましたからね」と説明する。長嶋茂雄ら往年の好打者は当時、バットを牛骨でしごいて脂を染みこませていたという。
NPBでも可能となった牛骨などでのしごきについては、試行錯誤中だという。バットを削る前後か、上塗りの前後にしごくのがいいのか。それとも、全行程の前にしごくのがいいのか。「(日米で主流の)メイプル材は元々、硬い材なのでしごいても表面がボコボコにならない。牛骨などのしごき加工はアッシュ材であったり、タモとかにされていた製法。いまのメイプル材だとほとんど影響がない」と北村さん。使用するバット材に適している加工法を模索している。
“牛骨バット”はすでに日本プロ野球選手会を通じて各選手に周知され、使用に興味を示している選手も多い。ヤナセ社とバットの契約を結ぶ近本にも提供される予定。バット基準の一部改定で、25年シーズンの打撃に変化が表れるのか注目される。